今年の東京都知事選挙まで残り1ヶ月をきった。
小池都知事が明日にも正式に出馬表明をすると報じられるなか、この記事では(要望により!)都知事の権限について解説する。
これを読み、いかに選挙で投票するのかが大切か理解してもらえれば嬉しい。
都知事とは?
知事という言葉は「物事を治めつかさどる」という意味があるらしい。
奈良時代には国の役人の地位の名に使われていた。「知」と「事」の間に官職・役職名を入れて呼んでいたという。
戦前の知事は内務省・内務大臣に任命されていた。戦後は新憲法の下で東京は自治体となり、知事は直接選挙で選ばれるよう(公選知事制)になった。
4年任期の間は大統領のような権力をもつ。
一般的に都知事は東京の政治家・外交官・経営者としての顔がある。
- 都民を代表する「政治家」
- 首都・東京を代表する「外交官」
- 巨大な予算・職員を率いる「経営者」
人口、財源から見ても東京の知事は絶大な権力を持つ。
加えて東京の国内・世界においての影響力や情報発信力(キー局や新聞社の多くは東京)は隠れた強み(直接的ではない)になっている。
都知事はクビにできる?
驚きかもしれないが、都民には都知事をはじめ、議会の解散(クビ)や都議会議員の解職(クビ)を求める「直接請求権」という権利がある。
そのためには1)署名集めと2)その後の投票で半数以上の有権者の同意が必要になる。
- 有権者(投票できる都民)が40万人以下
1/3の有権者が署名すれば要求できる
- 有権者(投票できる都民)が40万人~80万人
[(有権者数ー40万人) x ⅙ + (40万人 x ⅓)] の人数で要求できる
- 有権者(投票できる都民)が80万人以上
[(有権者数ー80万人) x ⅛ + (40万人 x ⅙) + (40万人 x ⅓)] の人数で要求できる
都知事の役割は?
- 予算案の作成・執行(使う)
- 議会に条例案を提出
- 条例の拒否権・再議要求権(地方自治法176条)
議決から10日以内に理由を示して再議を要求できる。ただし、同じ結果ならそれで確定。再議にかけた場合、議員の2/3の同意が必要(176条3項) - 専決処分(議会を通さず法案を成立させる)(地方自治法179条)
議会がひらけないなどの理由により議会による事後承認をすれば有効になる - 税金を徴収する権限(新しい税金を設けることもできる)
- 人事権(副知事・委員会など)・職員と組織の数を選ぶ
- 職員の任命・免職(クビ)にする
- 都議会の解散権(不信任決議が提出されれば10日以内に解散・辞職を選ぶ)
首相より権限を持っているって本当?

総理大臣 | 都知事 |
総裁選で党のリーダーになり、国会に指名される | 選挙で選ばれる正当性(東京は1000万人以上に投票される) |
内閣を作り、大臣全員の同意を得て政策を作る | 一人で政策やお金の使い道を決める |
議会の決定を覆す事はできない | 納得いかなければ再議を要求・専決処分 |
裁量権は大臣たちと分ける形になる(一任ではない) | 基本的に国で各大臣が担う役割を全て一人で受け持つ |
しかし面白いことに、これだけ権力を持つ都知事を経て首相になった人はいない。
アメリカの大統領に近い?
知事はどちらかというと、アメリカの大統領に近い。直接選挙で選ばれる点や、法案を拒否できる力などは一緒(議会がそれを却下するには2/3の議員同意が必要)。

主な違いは:
大統領 | 都知事 |
法案や予算案の提出ができない(教書・勧めることしかできない) | 予算編成・予算案を議会に提出できる |
議会を解散できない | 不信任決議(議会が知事をクビにしようとする)を出された場合10日以内に解散か辞職を選ぶ事ができる |
人事において、補佐官・閣僚・幹部などを選べる | 副知事4名・教育長1名・特別秘書2名・参与(アドバイザー)ぐらいしか任命できない(議会の承認が多くの場合必要となる) |
日本はアメリカ・イギリス議会の制度を混ぜている。
知事と議会が完全対立しても権力を行使できるようになっている。これにより、都知事は絶大な力を持つ事ができる。
一方、アメリカはあえて大統領にその権限を与えていない(議会側しか行動を起こせない)。
どういう人が都知事になるの?
中央大学の佐々木信夫教授によると、戦後からの都知事の選ばれ方にはあるパターンが存在するという。
- 戦後: 任命されていた知事がそのまま選挙でも選ばれる
- 高度成長期: 自民党系の知事が多く選ばれる
- 1970年代: 高度成長が停滞する中、福祉や環境に重きをおく学者系の知事が選ばれる
- 1980年代: 不況により地方財政が厳しくなり、財政は保守的に、革新を目指す実務家の官僚出身知事が選ばれる
- 1990年代~: 地方分権が注目される中、個性とリーダーシップを持つ政治家出身知事が選ばれる
また、「振り子現象」と言い、ハード(経済)重視とソフト(生活)重視の知事が交互に誕生している。
- 東都政 (1959~1963; 1963~1967)
オリンピック開催を機に、ハード(経済)重視のインフラ整備などをおこなった
- 美濃部都政(1967~1971; 1971~1975; 1975~1979)
その東都政を批判し、福祉・教育に重きをおくソフト(生活)重視
- 鈴木都政(1979~1983; 1983~1987; 1987~1991; 1991~1995)
多心型都市構造・臨海副都心開発などを目指し、ハード(経済)重視
- 青島都政 (1995~1999)
鈴木知事を批判しソフト(生活)重視、リサイクル都市を目指した
- 石原都政 (1999~2003; 2003~2007; 2007~2011; 2011~2012)
改革を目指した小泉総理と同じ路線で都市再生などを掲げハード(経済)重視
選挙にはどういう特徴があるの?
- 現職は基本的に再選を目指せば負けない
- 現職は2度目の選挙に強い(アメリカの大統領選挙においても同じ)
- 都知事交代の場合は新たなタイプの知事が選ばれる
- 他県のように無競争選挙はなく、常に10人以上の候補が争う(国政選挙以外で最も大きな選挙)
- ほぼ全員が無所属で当選。必ずしも政党公認の必要がない。
今後の課題は?
来月の選挙で当選した候補者はポスト・コロナの経済政策を重きにおくだろう。コロナにより直面した医療に関する課題もある。
それと同時に、「老いる東京」とどう向き合うかが問われる。
高齢者が増える中、医療・介護、福祉、年金など社会保障に必要なお金をどう捻出するか。さらには老朽化が進み道路などのインフラ整備に必要なお金も必要になる。
「東京一極集中」(東京都心に全てが集中し、地方が衰退する様)をどう止めるかも課題となる。首都直下地震が起きれば、日本のGDPの約2割をしめる東京の都市機能が麻痺し、甚大な被害がもたらされる。そのためにも地方に分散する必要性がある。
これらの課題に対処できる政策を打ち出せる候補に投票するのが極めて重要になる。知名度ではなく、政策を見て、演説なども聞き判断する事が必要になる。
出典
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/tokyoto/profile/gaiyo/shikumi/shikumi05.html
https://mainichi.jp/articles/20160728/kei/00s/00s/003000c
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/outline/rights_and_duties.html
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=322AC0000000067_20170619#AB
https://politas.jp/features/10/article/562
写真:内閣官房内閣広報室 (CC BY 4.0)