そもそも国会の役割って何?どんな政党があるの?基本を説明

東京都知事選を来月に控える中、政党や政策についての理解を深めようとしている人が多いと思いたい。それでも、そもそも政治に対する理解・関心があまりなく敬遠している人も多いだろう。そういう人のためにも、基礎中の基礎である政党や国会の機能について簡単に説明したい。

ついでに、この投稿はメディアの右・左の思想傾向についても説明する。都議会と所属会派(政党)は次回以降の投稿で説明する予定。

基本を理解すれば、都知事選のみならず、国政選挙なども関心が高まると思っている。まずは基本をおさえておこう。

政党とは?

「政党」として認められるには、公職選挙法という法律上の条件が存在する。条件を満たしていない場合、政党ではなく政治団体となる。

  • 国会議員が5人以上所属
  • 直近(一番最近)の国政選挙で全体の2%以上の得票(票の数)

政党になれば選挙を有利に運ぶことができる。メディアに取り上げられる利点以外に、政党交付金というものも受け取れる。

1994年ごろ、多くの汚職事件(リクルート事件など)が起き、ルールが変わった。国から政党へ活動資金が与えられれば汚職事件が減ると考えたのだ。

その結果、政党助成金として、国民1人あたり250円の交付金が国会議員の人数や選挙での得票率に応じて配られるようになった。

このお金は公費、つまり政治活動に必要な経費に使える。主な使い道は事務所設立費、秘書を雇うため、そして事務費用などのため。

その他の資金調達は企業や団体からの献金(資金)や議員の後援会(地元の応援団体のようなもの)による政治資金パーティーによって行う。もちろん、これらには上限が設けられている。

日本にはどのような政党があるの?

現時点で政党として活動しているのは9党自民党公明党連立与党であり、政権を担っている。その他の政党は野党と呼ばれる。

これら政党を思想別にグラフで並べると、以下のようになる。

自由民民党(自民党)

  • 1955年結党の保守派戦後60年以上政権運営を担っている(安定感がある)
  • 憲法改正に力を入れ、日米同盟に重きを置いている
  • 国民政党を目指している
    • 経済成長
    • 社会福祉の充実
    • 教育改革
  • 安倍晋三総理は自民党の総裁と総理大臣の在任期間が最も長い

公明党

  • 1999年から自民党と連立政権を担う、創価学会が母体の政党
  • 政策
    • 教育負担の軽減など社会福祉の充実
    • 人間・人類に幸福追求を目指す(防災や平和な外交)

立憲民主党(最大野党)

  • 2017年の衆議院選挙の際に民進党が分裂してできた旧民主党系政党
  • 民進党が小池百合子都知事率いる希望の党と合流したことに反対した枝野幸男代表らが結党
  • 立憲主義(憲法に基づいて政治を行う)を大切にし、安倍政権のもとでの憲法改正に反対
  • 憲法に自衛隊を明記することを認めない

国民民主党

  • 2017年に民進党から分裂したもう1つの政党
  • 玉木雄一郎代表のもと、立憲との合流も報じられるも実現せず
  • 中道改革政党を自負
    • 生活者・増税者・消費者・働く者のために、子育て・仕事・人生を楽しめる共生社会を目指す
    • 政策:労働時間の削減、児童手当、家賃補助など

日本維新の会

  • 2010年に当時大阪府知事だった橋下徹氏が大阪都構想実現のために結成した
  • 大阪維新の会として始まるも、国政に出ると日本維新の会に改名(現代表は松井大阪市長
  • 政策
    • 憲法改正賛成
    • 大学までの教育無償化
    • 大阪都構想

日本共産党

  • 1922年に設立(戦前は非合法活動と見なされていた)
  • 政策
    • 憲法改正・日米安保体制反対
    • 安倍政権下で進められている安全保障法制や沖縄移設問題に反対
    • 原発を廃止し自然エネルギーを利用する

社会民主党

  • 1996年発足、過去には「55年体制」時に自民党と共に2大政党とされていた
  • 政策
    • 自衛隊の縮小
    • 消費税引き上げ反対
    • 憲法改正(9条)反対

NHKから国民を守る党(N国)

  • 2013年にNHK放送のスクランブル化(受信料払った人だけ視聴)のためだけに発足

れいわ新撰組

  • 2019年に元タレント・山本太郎氏が発足した
  • 2019年の参議院選挙で条件を満たし政党として認められる
  • 政策
    • 消費税廃止
    • 原発即時廃止
    • 安倍内閣で採決された平和安全法制などの廃止
    • 全国一律の1500円の時給

メディアの偏り(かたより)

諸外国同様、日本のメディアにもリベラル派や保守派は存在する。ただ、上記でわかったように、日本の右・左は諸外国とは多少意味が異なる。

日本では基本的に右・左は伝統を重んじるかどうかや、憲法改正に積極的かどうか(それだけではないが)で分かる。保守は伝統を重んじ(夫婦別姓反対などーただし最近は賛成の傾向もある)、憲法改正に積極的だが、野党の多くはその反対を掲げる。

テレビ放送は放送法により、「政治的に公平である」ことを義務付けられている。そのため、テレビ局はあまり露骨な政治色を出さない。

新聞は違う。おおざっぱに言えば、各新聞社は以下のように分類できる。

  • 保守派:読売・産経
  • 中立:日本経済新聞(日経)
  • リベラル:朝日・毎日・東京

国会の役割

日本国憲法は国家権力を3つに分けている(三権分立)。行政権は内閣、司法権は裁判所、立法権は国会にある。権力の暴走を防ぎ、お互いがバランスを保つ役割を担っている。

憲法上、国会は「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」とされている。つまり、国民の意思を最も直接に代表している国会が一番重要な役割を担っている。そのため、国会の議決でのみ法律が確定する。

国会は2院制である。衆議院(下院)と参議院(上院)がお互いの行き過ぎを抑止し、不十分なところをカバーする。その上、国民の多様な意見と利益をできるだけ広く反映し、慎重に審議できるという利点があるとされている。

国会の両院(衆・参)が共同で行う作業は以下の通りである。

  • 法律の制定(つくる)

  法律案は内閣か議員によって提出され、審議された後に採決(投票)される

  • 予算や国の財政に関する議決

  内閣が予算案を提出し、衆・参両院で審議され、議決される

  翌年度には内閣が予算を正しく使ったかを国会で審議する

  • 条約の締結についての承認権

  内閣が外国と結んだ約束を文書にし、国会がそれを承認する

  • 内閣総理大臣の指名

  ① 党内の選挙で勝ち、党首となる(党首が衆議院議員であることが多い)

  ② 党首になったのち、国会で過半数の議員が賛成すれば指名を受けたことになる

  ③ 天皇陛下から任命を受け、正式に総理大臣となる

  • 憲法改正の発議(プロセスを始める権利)

  改正は両院の2/3以上の議員が賛成で発議される

両院の議決が一致しない場合どうなるの?

衆議院で可決(賛成多数)された案件が参議院で否決された場合、次の図のようなプロセスがある。

憲法59条には衆議院で2/3以上の議員が再び賛成すれば法律が成立するとされている。つまり、衆議院は一度参議院で否決された案件を再度可決することで法案を成立させられる。これは衆議院のみに許された権限である。

ただし、参議院で衆議院が可決した案件を60日以内に結論を出さなければ、自動的に否決となる。要するに、参議院は採決すらする必要がなく、60日引っ張った上で否決とできる。

これは国会運営において参議院(そして時には野党)が力を持つことができる方法の一つと言える。国会は150日しかないため、60日間時間稼ぎをして衆議院の再採決を避けることができるのだ。この場合、普段なら衆議院によって再採決され法律になる案を潰す権力があると言える。

また、議決が一致しない場合、両院協議会というものを通すこともある。法律以外の案件(予算、条約、総理の指名)はこの協議会を通してからしか衆議院は再度採決をおこなうことができない。法案は任意で衆議院が協議会を招集できる。

協議会は衆・参両院から10人ずつ代表が選ばれ、20人で意見の調整をおこなう。ここでも出席メンバーの2/3以上の賛成があれば調整はできたとされ、案は再び議会で採決される。

但し、調整が失敗すれば法案以外の案件(予算、条約締結、総理大臣の指名)については衆議院の議決が優先される。法律案に関しては、衆議院で再び2/3の議員の賛成を得る必要がある。

このように、国会においては衆議院がより多くの権限を与えられている。

衆議院・参議院の違い

ではなぜ衆議院がより多くの権限を与えられているのか。その答えは衆・参両院の違いにある。

衆議院参議院
465245
選挙は4年に1度(総理が衆院を解散し選挙となる場合もある)選挙は6年に1度(3年ごとに半数の議席が選挙にかけられる)
選挙権は18歳以上 | 被選挙権(立候補する人)は満25歳以上選挙権は18歳以上 | 被選挙権(立候補する人)は満30歳以上
選挙区
小選挙区(直接候補が選ばれる)が289人(289区)
比例代表(各政党が獲得した投票数に応じて 分配される議席)が176人(全国を11区)
選挙区
選挙区147人(基本的には都道府県1つに区が1つ)
– 但し、鳥取・島根、徳島・高知は2県で1選挙区とされている
比例代表(各政党が獲得した投票数に応じて分配される議席)が98人(全国を1区)
解散できる解散できない

このように、衆議院は人数が多く、任期が短く、解散できるため、国民の意思をよりよく反映できるとされている。そのことから参議院より権限を与えられている。

憲法60条によって予算案は衆議院から発議しなければならない。また、国会会期の延長、臨時や特別国会の会期延長、そして両院協議会の開催要求(法律案のみ)は全て衆議院のみに与えられた権限である。

これに加え、衆議院は内閣不信任決議案というものを提出できる。これは内閣が国民のために仕事をしていないと判断されると提出される。出席議員が全体の2/3以上でそのうちの3/4以上が賛成すれば可決される。事実上のクビ宣告だ。これにより、総理は10日以内に衆議院を解散しもう一度政権運営を試みるか内閣総辞職(大臣全員がやめる)を選ばなければならない。

一方、参議院は「良識の府」と呼ばれ、衆議院のチェック役を担っている。衆議院より任期が長く、人数も少なく、30歳以上でないと立候補できないことから、参議院は多様で経験豊富な人材が揃い、深く議論ができると期待されている。

実際はどうであれ、参議院は衆議院を抑制する役割を担っている。近年はタレントやスポーツ選手など、知名度で選ばれている感じがするが、均等を保つには必要とされる。

また、衆議院が解散した場合、参議院は通常閉会となるが、緊急性があるとなれば緊急集会で国会運営を続けることができる。これは国会を麻痺させないための工夫であり、参議院が不要とならない所以の一つである。

現在の国会

今国会は第201回通常国会だ。会期は150日で、臨時国会がない場合は、6月17日に終了する(投稿日)。

国会は他に臨時特別国会が存在する。臨時国会はまだ議論する必要があるとなった場合、要求することができる。衆・参どちらかの1/4以上の議員から要求がある場合、内閣は、臨時会を招集しないといけない(今日まで野党は延長か臨時国会を要求してきたが、総理は応じなかった)。

延長に関しては、会期中に通常国会なら1回、臨時・特別国会なら2回まですることが可能だ。

特別国会は衆議院の解散による総選挙後に召集され、総理大臣が指名される。

現在、衆・参議院はこのような構図となっている。

衆議院会派別
参議院

衆議院は連立与党が過半数を大きく超えている。一方、参議院はかろうじて過半数を維持しているが、安倍総理の目標である憲法改正に必要な2/3以上の議席獲得には遠い。

どの党がどれぐらい議席を保持しているか知っていると政治の理解も深くなる。議席次第では挑戦できる議題とできないものがある。

このように、日本の政治は理解すれば面白いし、ニュースで聞く話もわかるようになる。今までは身近に感じなかったことも、これを機に関心が湧くかもしれない。

現在の日本に存在する政党と国会の仕組みが分かれば、選挙でも少なからず政策の理解が深まるだろう。

まとめると、日本には9つの政党があり、政権与党を担うのが自民党公明党である。野党はそれぞれの主張が違いながらも反安倍政権を掲げ今は少しずつ集結しつつある。

国会は多くの権限を持つ衆議院とバランスを保つ参議院がある。それぞれの役割を担い、立法府として機能している。

特定の政党を支持しようと思わなくても、基本をおさえてから選挙で投票してはどうだろう。それこそ意義のある一票となるはずだ。

出典:
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/kokkai/kokkai_kengen2.htm
https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/syousyu_kaiki.html
https://www.sangiin.go.jp/japanese/kids/html/shikumi/shigoto.html
https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/chii_kennou.html
https://www.sangiin.go.jp/japanese/kids/html/shikumi/kankei.html
https://mainichi.jp/articles/20180424/kei/00s/00s/010000c
https://say-g.com/house-of-representatives-of-superiority-358
https://say-g.com/japan-political-party-525
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO57282800S3A710C1TY1P01?channel=DF130120166043&style=1
https://toyokeizai.net/articles/-/312181?page=3

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