前回の記事では小池知事の2020年公約を紹介した。今回はその続編として、知事が4年間で成し遂げたことを紹介する。
全ては知事のサイトから引用しているため、若干データに偏りがある可能性はある(実績を示すデータしか載せていない)。それでも選挙を前に小池都政が何を成し遂げたのかを理解するのは大事だろう。
分野別に見ていくとこのようになる:
- 子育て
- 女性支援
- 福祉・社会
- 経済
- 行財政改革
- 環境
- 防災
- その他
子育て
① 待機児童

- この問題は女性の社会進出の障害の一つであり、少子化問題の一因でもある
- 知事就任後3年間で6,200人減少を達成
- 2018年は過去最高の1,578億円の予算を計上
- 引き続き人材確保の支援事業などを通し人材の確保・定着を目指す
② 保育サービスの拡充

- 保育所などの整備のために区市町村への支援を充実
- 3年連続で15,000人以上増加し、過去最高を更新
- 2019年4月の認可保育所の施設数は3,000所を超え、定員は280,000人以上
③ 保育の無償化

- 2019年10月から国の幼児教育・保育の無償制度が始まったが、0歳児〜2歳児は住民税非課税世帯(住民税を払わなくてもいい世帯)のみが対象
- 東京は第2子を半額にし、第3子以降は無償とした
④ 私立高校授業料を都独自に無償化

- 2017年度:年収760万円未満の世帯に対し、私立高校の授業料を無償化
- 2018年度:通信制高校も対象になり、全体で約60,000人の負担を軽減
- 2020年度:無償化の範囲を年収910万円未満の世帯に拡大する予定
⑤ 液体ミルクの国内製造・販売が解禁
- 2011年の東日本大震災をきっかけに国内製造・販売に向けた基準の設定を国にお願いし、2018年8月に解禁された
- 母乳や水・お湯を確保できない非常時をはじめ、お出かけの際のお母さんの負担軽減に役立つ
女性支援
① 不妊治療の女性対象の大幅拡充

- 仕事と不妊治療の両立に悩んでいる女性が多くなっている
- 治療費助成事業の年齢・所得制限を大きく緩和(東京都特定不妊治療費助成事業)
- 不育症(妊娠しても流産を繰り返すこと)も2020年度から検査費用の助成予定
- 子供をのぞむ夫婦の不妊治療を広く支援
② 女性活躍社会の実現

- 都庁職員の管理職における女性比率は国家公務員と比較すると3.8倍
福祉・社会
① 動物の殺処分ゼロを達成(7つのゼロの一つ)

- 譲渡機会を増やし飼育に必要な物品を提供
- 犬に関しては2年連続で殺処分ゼロを達成
② 「健康ファースト」の実現
- 日本は受動喫煙に対する取り組みは世界最低レベルと評されてきた
- 国に先立ち2018年6月に「東京都受動喫煙防止条例」を制定
- 2020年4月に罰則付きで全面施行
③ LGBT差別・ヘイトスピーチ対策
- EUやアメリカなどでは差別を禁ずる法律が存在する
- オリンピックをふまえて性的少数者への差別やヘイトスピーチ(憎悪表現)の規制を盛り込んだ条例を施行
- 明確に差別禁止を規定したのは都道府県初
④ バリアフリー基準設定

- 観光客、高齢者、障害者や子供連れなどが利用しやすい宿泊環境を実現する取り組み”Open Stay Tokyo”を実践
- 2019年9月から「建築物バリアフリー条例」を施行し、全国で初めて一般客室に対してバリアフリー基準を設けた
- 宿泊事業者に整備費用の補助制度も設けた
⑤ シニア層向けの教育プログラム提供
- 首都大学東京で起業に挑戦するシニア層や中小企業の後継者用の授業を提供
- 50代以上の学びと交流の場としてプレミアム・カレッジを開講
- 2020年4月からは2年目も学び続けられる「専攻科」を設置する
⑥ アクセル踏み間違い防止装置の補助

- アクセル・ブレーキの踏み間違いなどを防止する装置の購入・設置を9割負担
- 2019年7月末〜9月末までに約3000件の利用
- 対象:2019年度中に70歳以上となる都内在住の高齢運転者(申し込み期限は2020年8月末)
⑦ 高齢者が安心して暮らせる地域社会

- 特別養護老人ホームを2年間で約2500床整備
- 認知症高齢者グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅の整備も推進
- 認知症疾患医療センター(医療と介護の連携の推進役)を都内52カ所に設置
経済
① テレワーク推進

- 都は時差biz(通勤時間ずらし)などのスムーズビズを展開しテレワークを支援
- 2019年度には約25%に上昇
- 新型コロナの感染拡大につき、テレワークを推進する助成金を拡大した結果、2020年5月時点では約63%に上昇
- 経営者のために東京テレワーク推進センターを導入し相談・コンサルに使える
② 賢い支出

- 事業の定期的な見直しの結果、4年間で3500億円の財源確保 (就任前の3倍以上)
③「都政の見える化」を実現
- 予算編成: 現時点で何がされているのか(審査・質疑応答など)ネット上で公開
- 2017年度より政党復活予算(政党からの要望で約200億円の予算が復活する制度)を廃止
④ 国際金融都市・東京
- 外資系金融機関の誘致をするために2017年に東京版金融ビッグバンを取りまとめた(法人税引き下げや特区による優遇税制の活用など)
- 都やメガバンクが会員の東京国際金融機構を発足し国際金融機関が参加しやすいよう支援をしている
- 2020年3月の国際金融センターのランキングではアジアナンバーワンになった
⑤ 中小企業支援
- 都内の事業者の99%が中小企業と言われている
- 中小企業を資金・人材確保などで支援
- オリンピックを見据えて受注機会拡大や販路開拓(売り先)などを支援
⑥ Tokyo Data Highway 構想

- 都内の中小企業やスタートアップが5Gをテストできる環境を作るため、無線局設置を申請
⑦ グリーンボンドを発行

- ESG投資(中長期に注目し、将来性やリスク管理能力から見て期待できる企業に投資)
- 環境施策の推進に向けた資金調達のためのグリーンボンドを発行
- 2020年度の発行額が200億から300億円に増額する
- 調達した資金で環境対策やスマートエネルギー都市づくりを推進
行財政改革
情報公開

- 公文書の適正な管理を厳正化した(東京都の公文書の管理に対する条例)
- 閲覧手数料の無料化や公文書情報提供サービスを開始し、情報開示数が過去最高になった
*ただし他候補は豊洲移転・カジノなどに関しては開示していないと主張
環境
① 2050年に「ゼロエミッション東京」実現を目指す

- 2019年9月より都庁第一庁舎内の全ての電力を再生可能エネルギーに切り替えた
- 他には水素エネルギーの普及拡大やゼロエミッション住宅の普及などを目指す
- 暑さ対策として都市緑化、調整池整備などの災害リスク軽減策に取り組む
② LED電球の普及

- 省エネの取り組みとして、2018年までの1年半の間に約74万個のLED電球を配布
- 効果: 年間3万トンのCO2削減 (年間約17億円の削減・2万世帯の年間電力使用量)
防災
① 無電柱化推進条例

- 区市町村の無電柱化を推進するために支援を拡大
- オリンピックや首都機能が集中するエリアの無電柱化を進め97%が完了
*ただし、山本太郎氏によれば都道だけに絞れば2%増加している
② 多摩・島しょ地域の振興
- 特別区(東京23区)でないこれらの地域の道路・教育施設などのインフラ整備が遅れている
- 市町村総合交付金を3年連続で増額している
- 多摩都市モノレールの整備などにも着手
その他
- 都知事の給与50%カットを継続
- 更新費用2,000億円超の工業用水道事業の廃止
- 文化芸術・アーティスト活動支援
- 障害者差別解消条例の制定
- 条例による犯罪被害者・家族への支援強化
- 都内全公立小学校の通学路に防犯カメラを設置
- 都内公立小中学校の体育館の冷暖房整備
- 1人1台のPCなどによるオンライン学習環境の整備
- 首都高地下化・多摩都市モノレールを伸ばす事業を進める
このように、7つのゼロに注目しすぎると、その他の達成されたできごとを見逃す可能性がある。確かに、公約として掲げた以上成し遂げなかったのは問題だ。しかし、だからといって小池都政が何もしてこなかった訳ではない。小池知事のもと成し遂げたことも多くあり、再選されれば引き続き進めるものもあるだろう。
これからのポイントは他候補との比較になる。誰が最も信頼でき、なおかつ実現可能な公約を示すか。それらを抑えた候補こそが選挙で勝利する。7月5日までに各候補を公正公平に見比べた上で投票しよう。
写真:Morio (CC BY-SA 3.0)