I. 今週のニュース
新型コロナ
新型コロナ情報 (基本毎日更新):
- 緊急事態・蔓延防止等に関する情報: 内閣官房、「緊急事態宣言」、 https://corona.go.jp/emergency/
- ワクチン接種等に関する情報: 首相官邸、「新型コロナワクチンについて」、 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
- 世界の接種状況の比較: 「チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は」、日本経済新聞、 https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
- 都道府県ごとの新規感染者数: 「特設サイト: 新型コロナウイルス」、NHK、https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/
- 東京の新規感染者数・病床使用率: 東京都、「都内の最新感染動向」、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
1. 感染者増加と「デルタ株」の主流化
- 全国での新規感染者は木曜、5,381人となり、2ヶ月ぶりに5,000人を超えた。また重症者は392人確認された。
- 東京都では1,979人の新規感染者が確認され、先週木曜から671人増となった。神奈川県 (631人) と埼玉県 (510人) では、それぞれ今年1月以来、半年以上ぶりに600人と500人を超えた。
- 年代別では20代が658人と最も多く、20代と30代で半数以上を占めている。またデータによれば、東京都ではすでに感染力が強いとされる「デルタ株」が感染全体のおよそ60%を占めるに至ったと推定されている。
- NHKは水曜、首都圏で重症患者の治療にあたる大学病院では、感染力が強い、インドで確認された変異ウイルス「デルタ株」に感染している患者の入院が相次ぎ、患者の8割は50代以下になっていると報じた。
- 水曜に開かれた厚生労働省の専門家会合で示されたデータによると、新規感染者数は20日までの1週間では前の週と比べて、全国では1.53倍と大きく増加した。
- 感染者数は前週比で見ると全国的に再拡大している:兵庫県で1.94倍、大阪府で1.89倍、埼玉県で1.87倍、京都府で1.74倍、沖縄県で1.67倍、北海道で1.54倍、福岡県で1.53倍、東京都で1.49倍、千葉県で1.39倍、そして神奈川県で1.38倍。
- また、人口10万人当たりの直近1週間の新規感染者数は、東京都が59.33人、沖縄県が38.47人、神奈川県が33.20人、埼玉県が26.93人、そして千葉県が26.67人と感染状況が最も深刻な「ステージ4」の目安の25人を超えた。
2. 政府、緊急事態宣言解除後を見据える
- 「第5波」に突入する中、菅義偉首相は火曜、飲食店中心の感染対策でリバウンドを抑えつつ、ワクチン接種を推進するという従来方針を繰り返した。
- しかし、現行の方針のもと、東京都では感染拡大が続いている。都のモニタリング会議では、8月中に1日当たりの新規感染者が2,400人超となる試算が出された。
- 京都大学の西浦博教授が示した試算によると、前の週の同じ曜日と比べた1日の新規感染者数の増え方が現状の1.5倍より少ない1.3倍が続いたと仮定すると、東京都内では8月7日には1日3,000人を超え、8月21日には5,235人に上るという結果になった。
- 東京都の近隣に位置する神奈川県、埼玉県、千葉県では、感染者数が増加傾向にあり、緊急事態宣言発令の目安となる数値に達してはいるが、経済活動の停滞が招く経済打撃を気にする政府は、宣言地域の拡大に否定的だ。
- 実際、産経新聞は土曜、政府が緊急事態宣言解除の8月22日後に、現行の感染対策を緩和する方向で検討に入っていると報じた。それまでにはワクチン接種が十分に進み、大型イベントなどが段階的に開催できると踏んでいる。
- そして新たな治療薬の存在が重症化のリスクを下げる可能性がある。厚生労働省は月曜、中外製薬の「抗体カクテル療法」という治療法を採用した新型コロナ治療薬を承認した。
- 「カシリビマブ」と「イムデビマブ」と呼ばれる2種類の医薬品を同時に投与することで、ウイルスの働きを抑える中和抗体を作り出されるのが「抗体カクテル療法」だ。中外製薬によると、海外の治験では入院や死亡のリスクをおよそ70%減らす効果が確認された。
- 対象となるのは、軽症から中等症の患者のうち高齢者や、基礎疾患などの重症化リスクがある人で、供給量が限られていることから、当面は入院患者に限って使用される。
3. 政府、ワクチン不足解消へ奔走
- 菅首相は金曜、ファイザー社CEOのアルバート・ブーラ氏と朝食を兼ねて会談し、ワクチンの今後の安定的な供給などについて意見を交わした。
- 防衛省は水曜、自衛隊が運営する大規模接種センターの運用期間をおよそ1ヶ月延長し、9月25日までにする決定を発表した。
- 同省は延期の理由について、来月から多数の初回接種が再開するのに合わせて、2回目の接種までセンターで完了できる態勢にするためだと説明している。
- 河野規制改革担当大臣(ワクチン接種担当)は水曜、すでに申請を終えて開始を待っているすべての企業や大学などに対し、8月中にワクチンの供給を始められるという見通しを示した。
- 一方で、一時休止している新規の受け付けは、依然として再開のめどは立っておらず、今後の状況をみながら検討すると説明した。
- また、河野大臣は、10月上旬までに、12歳以上の人の8割が2回、接種するのに必要な量のワクチンを都道府県に供給すると述べた。
- 田村憲久厚生労働大臣は火曜、政府が米・モデルナ社、武田薬品工業とモデルナ製の新型コロナワクチン計5,000万回分を、早ければ来年初頭にも追加で提供を受ける契約を締結したと発表した。
- モデルナのワクチンは、自治体の大規模接種や職域接種などで使われ、ことし9月末までに5,000万回分の供給を受けることになっている。田村大臣は、追加の分は2回の接種を終えた人向けに、3回目の接種に使うことも念頭に置いているという認識を示した。
- 政府は9月末までに、ファイザー製と米モデルナ製だけで12歳以上の接種対象者をカバーできる量(計2億2,000万回分)を契約している。これを踏まえ、河野大臣は日曜、「希望するすべての国民が打つだけの量が入ってくる」と強調した。
- 菅首相は土曜、10月から11月に希望者全員への接種完了の目標を、10月から11月の早い時期に前倒しする考えを示した。
- また、首相は、1回目の接種を終えた全人口の割合を、7月いっぱいで5割まで届けたいと述べた。7月15日時点では全人口の32%が1回目の接種を終えている。
外交・防衛(安全保障)
4. 日米関係
- 茂木敏充外務大臣は金曜、アントニー・ブリンケン米国国務長官と電話会談を行った。両外相は、茂木外務大臣による中米カリブ訪問の成果やキューバ情勢、中国などの地域情勢や新型コロナを始めとするグローバルイシューについて、幅広く意見交換を行った上で、日米同盟の強化及び「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、日米が引き続き主導し、関係国と連携していくことを確認した。
- 日米韓の3カ国は水曜、2017年10月以来の次官級協議を開催した。参加者は森健良外務事務次官、ウェンディー・シャーマン米・国務副長官、チェ・ジョンゴン第1外務次官。
- 3氏は、北朝鮮の完全な非核化に向けて緊密に連携することを確認し、同国の核・ミサイル開発の脅威への対応をすることでも一致した。
- 日本は米韓に対して、拉致問題について、引き続きの理解と協力を求め、支持を得た。また3氏は、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組や、東シナ海及び南シナ海における中国の行動、台湾海峡、ミャンマー情勢といった地域情勢について意見交換を行なった。
- 森事務次官は、シャーマン国務副長官と個別会談をし、日米同盟の強化に加え、自由で開かれたインド太平洋の実現や新型コロナ対策などの国際的な課題への対応で、引き続き日米間で緊密に連携していくことで一致した。
- また、両氏は、中国が東シナ海や南シナ海で継続・強化している、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対するとともに、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。
- シャーマン国務副長官は同日、岸信夫防衛大臣を表敬訪問した。
- 秋葉国家安全保障局長は火曜、就任後初めて、アメリカのジェイク・サリバン大統領補佐官と電話で会談した。両氏は、地域や国際社会が直面するさまざまな課題に対応するため、日米両国や、オーストラリアやインドを加えた4か国の枠組みをはじめとした同志国の間で、緊密に連携していくことで一致した。
5. 外相が中米・カリブ訪問から帰国
- また、大臣は、中米統合機構(8カ国で形成)やカリブ共同体(14カ国で形成)との外相会合も行なった。
- 茂木外相は火曜の記者会見で、今回の主要目的の一つは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性について、中米カリブ諸国と認識を共有し、連携を確認することにあったと述べた。
- 「自由で開かれたインド太平洋」についても日本の考え方や取組について説明したと強調した。また、力による一方的な現状変更の試みに対する深刻な懸念も共有した。報道によれば、これらの会合での日本の働きかけは、中米でも影響力を強める中国を念頭に行われた。
6. 外交関連ニュース
- 外務省は木曜、日本がイランに向けて計約290万回分のワクチンをCOVAXファシリティを通じて供与すると発表した。第一便として、約110万回分が7月22日に日本からイランに空輸される予定だ。
- また、政府は、インドネシア在住の日本人の帰国に向けてチャーター便を運航する国内航空会社を支援すべく、国際線到着の制限から免除する方針を取っている。水曜時点で、インドネシア在住の370人の日本人が新型コロナに感染している。
- 森事務次官は水曜、韓国のチェ・ジョンゴン第1外務次官と会談した。森事務次官は、慰安婦問題や太平洋戦争中の「徴用」をめぐる歴史問題で適切な対応を求めましたが、チェ次官は従来の立場を説明するにとどまり、話し合いは平行線を辿った。
- 西村康稔経済再生担当大臣は水曜の記者会見で、ペルーが環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の締結に必要な国内手続きを終え、9月後半に8か国目の締約国になると明らかにした。
- また、西村大臣は、マレーシア、ブルネイ、チリの3か国で早期に国内手続きが完了することに期待を示した。現在、日本は議長国として、加入に興味を示しているイギリスと交渉を進めており、同国が加われば協定は世界GDPの約16%を占めることになる。
- 自民党外交部会などが火曜に開いた会合では、出席議員から来年の北京冬季オリンピックについて、中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害を踏まえ、外交的ボイコットを検討すべきだという意見が出た。
- イギリス議会では先週木曜、新疆ウイグル自治区での人権侵害が終わらない限り、北京オリンピックを外交的にボイコットすることを要求する法的拘束力のない動議が可決された。欧州議会も同様の動議を2週間前に可決している。
- 韓国の大統領府は月曜、文在寅大統領が東京オリンピックの開会式にあわせて検討していた日本訪問を「首脳会談で成果を出すには依然として不十分だ」などとして、見送ると発表した。
- 両国は慰安婦や徴用工問題など一連の歴史問題によって関係が冷え込んでいる。
- このような動きの中、韓国の報道機関は、ソウルにある日本大使館の相馬総括公使が記者に対し、文政権の対日外交姿勢を性的なたとえを使って表現したと報じた。
- アジア太平洋経済協力会議(APEC)は先週金曜、非公式の首脳会合後、首脳声明を発表した。その中で、ワクチンへの公平なアクセスを加速しなければ、危機を克服できないとして、世界規模でワクチンを共有する努力を支持するとした。
- 声明では、気候変動や深刻な環境問題への対処に貢献する経済政策などの重要性を改めて表明し、質の高いインフラの開発や投資の推進を継続するとしている。
- また、デジタル化を推進し、貿易や投資に関しては、自由で、開かれた、公正で、予見可能な環境の重要性を認識するとした。
- 菅首相は会合にて、「新型コロナの克服に向け重要な局面を迎えている今こそ、多国間主義の重要性を再認識し、希望ある未来に向けて連帯を強化していくべきだ」と述べた。
- また、首相は、「ルールに基づく自由で開かれた秩序の実現が重要で、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取り組みを戦略的に推進していく」とも述べた。
7. 防衛関連ニュース
- 報道によれば、中国は先週、米国などの動きを牽制すべく、台湾有事を想定した軍事演習を相次いで実施した。
- 中国メディアによると、先週火曜、中国海軍は海上封鎖訓練を実施し、この訓練は21日まで、台湾の北方約250キロ・メートルの浙江省沖の一部海域において、実施される。
- また、中国軍は7月16日に、台湾に面する福建省の沖合で、陸海合同の上陸訓練を実施したと伝えられた。
- これらの訓練は、日本が防衛白書に初めて台湾情勢の安定は重要と明記したこと、米軍機が7月15日、台湾の基地に物資を届けるために着陸したことや、米豪軍をはじめとした、日本なども参加した共同訓練がオーストラリア周辺で開始されたことを受けて実施されたとされている。
- 安倍晋三元首相は水曜、米・スタンフォード大フーバー研究所が公開したイベントで、米国のマクマスター元大統領補佐官(国家安全保障担当)と対談した。安倍氏は、日本の防衛力強化により、中国に「確固たるメッセージを送り、中国の行動が非生産的だと理解させることにより、中国との対立を避けることができる」と強調した。
- 火曜に開催された日英防衛相会談にて、ベン・ウォレス英国防大臣は、インド太平洋地域に2隻の船を恒久的に展開すると発表した。
- 両大臣は、イギリスの最新鋭の空母「クイーン・エリザベス」が、今年9月に在日アメリカ海軍の横須賀基地に寄港することを確認した。またその他随伴艦については、海上自衛隊の横須賀、舞鶴、呉の各基地、そして、在日米軍佐世保海軍施設及びホワイト・ビーチ地区にそれぞれ寄港することを確認した。
- 防衛省は火曜、月曜時点で緊急発進回数が昭和33年(1958)の任務開始後から3万回に達したと発表した。また、1958年以降、25年後(1983年)に1万回、その23年後(2006年)に2万回、そのさらに15年後の現在に3万回と、その増加のペースは速まっていると指摘した。
国内政治
8. 政治動向
- 政府は水曜、ワクチンの接種歴を公的に証明する「ワクチンパスポート」について、当面はイタリアや韓国(ただし、防疫措置の緩和を受けるには他の書類も必要)など7カ国で使用できると発表した。
- 外務省は今後、対象国の拡大を目指す。欧州を中心に合意国が増えるとみられるが、州ごとにパスポートの運用状況が異なる米国や、中国とは合意のめどが立っていない。
- 自民党と立憲民主党は水曜、新型コロナの感染対策などについて議論する必要があるとして、来週の水曜・木曜、衆参両院の内閣委員会で閉会中審査を行うことで合意した。野党側はオリンピックの感染対策の不備を正す必要もあるとしている。
- 自民・公明両党は火曜、幹事長と国会対策委員長の会談を行い、政府側との新たな連絡会を設置することで調整を進めることになった。
- 公明党は、新型コロナ対応で、飲食店への酒の提供停止をめぐる政府の方針撤回が続いたことを取り上げ、「政府から事前の説明がなかった」として十分に意思疎通を図るよう要望した。
- また、自民党は、ワクチン接種に関する状況など地方の声を政府に伝える必要があるという認識を示した。
- 立憲民主党の枝野幸男代表は日曜、憲法の規定に基づく野党側の国会召集要求について「拒むのは明確な憲法違反だ」として、要求に応じない政府・与党を批判した。
- 野党は、憲法53条の規定に基づき臨時国会の早期召集を求めたが、政府・与党側は、閉会中審査で対応しているなどとして応じない考えを示した。
9. 経済状況
- 日経は水曜、半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、日本での初の工場を早ければ2023年に稼働する最終検討に入ったと報じた。
- 熊本に新設される工場は、28ナノメートルの技術を使用して、月に約40,000枚のウェーハを生産できるとしている。この技術は、自動車アプリや家電製品用の画像プロセッサやマイクロコントローラユニットなど、さまざまな種類のチップに広く使用されている。
- 工場は、主に日本最大の顧客であるソニーのイメージセンサー用に使用されるとみられている。
- 内閣府は水曜、財政の健全性を示す「基礎的財政収支」の最新の試算を公表した。これによると、高めの経済成長が続くという想定でも、黒字化の達成は政府の目標より2年遅れて2027年度になるとしている。
- 内閣府は、ことし1月に示した試算では、黒字化の時期は目標より4年遅れの2029年度になるとしていたが、昨年度の税収が見積もりより大幅に増えたため、2年前倒しした。
- 経済産業省は水曜、今夏に改定する「エネルギー基本計画」の素案を公表した。
- 政府の素案では、2030年度の電源構成について、再生可能エネルギーの割合を現在の計画の「22%~24%」から「36%~38%」に引き上げる。また、原子力の比率は「20~22%」と現状を維持するほか、火力発電は15%引き下げることにしている。
- この結果、新素案では、再生可能エネルギーや原子力でつくる脱炭素電源は全体の59%を占める。これは現在の計画案より15%高い。
10. オリンピック開幕
- オリンピックの開会式は金曜夜、東京の新国立競技場で開かれた。天皇陛下が開会の宣言をなされた。
- 陛下の開会宣言は、英語の文言は定められた文章であったが、日本語での表現は「祝い」から「記念」へと変更された。背景には、組織委員会がコロナ禍で多くの人が苦しんでいる状況に配慮し、英文の “celebrating” を「記念する」と訳したことがある。
- 金曜の報道によれば、組織委員会は近く、大会開催への貢献度などを考慮し、女性蔑視発言で同委員会会長を辞任した森喜朗元首相を名誉最高顧問とすることを検討している。
- 時事通信によると、政府内には森氏の役職付与で、今週の関係者の辞任や解任によってすでに批判が集中している人事に新たな問題を作りかねないとして、反対論が出ているという。
- 組織委員会は金曜の朝、東京・晴海の選手村滞在者3人を含む19人の新型コロナ陽性を新たに確認したと発表した。1日以降の組織委発表で、19人の陽性は1日当たりで最多で、合計は106人となった。
- イメージへの影響を考え、開会式の欠席が見込まれる人物や企業は多い。
- 木曜時点で、安倍元首相をはじめ、3大経済団体(経団連・経済同友会・日本商工会議所)の会長らの欠席が決まっていて、NHKの調査によると、すでに欠席を発表しているトヨタ・パナソニック・アサヒを含む3分の2のスポンサーが欠席する可能性が高い。
- 天皇陛下は木曜、バッハ会長ら国際オリンピック委員会(IOC)の幹部からの表敬訪問を受けられた。陛下はバッハ会長に対し、「新型コロナ感染症に対する万全の対策を講じながらの大会運営は決して容易なことではないと思います」とお述べになられた。また、陛下は、「それぞれの競技会場の現場などで大会運営に携わる方々をはじめ関係者の皆さんのご尽力に深く敬意を表します」ともお述べになられた。
- 菅総理大臣は火曜、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、新型コロナの感染者数なども、西欧諸国と比べると、1桁以上といってもいいぐらい少なく、ワクチン接種も進んで、感染対策を厳しくやっているので、環境はそろっている、準備はできていると、そういう判断をしたとしている。
- また、「やめることは、いちばん簡単なこと、楽なことだ」としたうえで、「挑戦するのが政府の役割だ」と強調した。
- 海外の報道関係者らがホテルを抜け出し、東京都内の観光地を訪れた姿が報じられたことなどを受けて、政府と組織委員会は、行動管理のルールの明確化が必要と判断した。
- 政府と組織委が取りまとめた方針では、ルール違反があれば、まずは選手個人や競技団体などに注意する。注意後も違反が確認されれば、最大14日間、滞在先に待機させ、組織委の監督下に置く。故意や悪質なケースでは、罰金や参加資格取り上げなどの厳しい処分を行うことにしている。
- 東京新聞は木曜、新型コロナの感染拡大防止策として、大会関係者らに義務付けられている定期的なPCR検査に関し、組織委員会が未受検者への警告は全員ではなく、対象者を抽出して行うと記載した内部マニュアルを作成していたことがわかったと報じた。これが事実なら、検査をすり抜け、感染が広がる可能性がある。
- オリンピック開幕数日前でも問題は絶えず起きた。木曜、開会式と閉会式のショーディレクターを務める小林賢太郎氏が、1990年代にナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺をやゆするセリフを使用していたとして、解任された。
- また、月曜には、東京オリンピックの開会式で使用する曲の作曲陣の1人であったコーネリアスこと小山田圭吾氏が、20年以上前に雑誌のインタビューで明かした学生時代の障害を持つ生徒へのいじめの告白が批判を受けたことで、責任を取る形で辞任を申し出た。
11. 菅首相の「五輪外交」が始まる
- 菅首相は木曜、オリンピックに合わせて来日したジル・バイデン米大統領夫人ら海外の要人をもてなす「五輪外交」を始めた。
- 米・大統領夫人以外では、ロヴサンナムスライ・オヨーンエルデネ・モンゴル首相、テドロス・アダノム世界保健機関(WHO)事務局長、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官、レベッカ・ニャンデン・デ・マビオール・南スーダン副大統領らと会談した。
- 加藤勝信官房長官は水曜、オリンピックの開会式への出席にあわせて、現時点で、およそ15の国や国際機関から首脳級の、およそ70の国からスポーツ大臣級の要人が日本を訪れる予定となっていると明らかにした。
- 菅首相の「五輪外交」は土曜まで続き、次の五輪開催国フランスのマクロン大統領らと会談する。
- 台湾当局は日曜、IT担当の閣僚の唐鳳氏、英語名オードリー・タン氏を7月23日に開幕する東京オリンピックにあわせて日本へ派遣する予定だったが、開会式の出席者が制限されることになり、唐氏が出席できない可能性があるとして、日本訪問を取りやめると発表した。
- 大会組織委員会は日曜、IOCのバッハ会長らの歓迎会を開いた。 橋本聖子会長のほか、菅首相や東京都の小池百合子知事、組織委員会の森喜朗前会長ら40人が参加した。
選挙
12. 菅首相、秋の「ダブル選挙」への準備を進める
- 来たる衆議院選挙の289の小選挙区のうち、自民党は、出馬する予定の280人の候補者のうち260人をすでに決定している。 連立を組む公明党に9つの選挙区を譲る。
- 野党も候補者決定を進めている:立憲民主党は211人、共産党は124人、日本維新の会は64人、国民民主党は21人、れいわ新撰組は20人、社会民主党は10人。
- 立憲と共産は現時点で70議席において競合となっているが、これから候補者を絞り、選挙区の調整を行う方向に向かっている。
- 読売新聞によると、定数176の比例選では、小選挙区との重複立候補を除いて74人が出馬を予定している。
- 最大野党の立憲は小選挙区選と合わせ、衆院定数(465)の過半数にあたる233人以上の擁立を目指す。読売新聞によると、立憲は共産と選挙協力し、各小選挙区で1万5,000~2万と言われる共産票を得たい考え。
- 実際、都議選では共産が底力を見せつけ、立民を上回る議席を獲得した。連合東京が支援した国民民主党の候補者4人は全員落選した。
- 国民民主と連合(立憲及び民主党の支持基盤)は共産との連立政権には反対している。
- 菅首相は先週金曜のテレビ番組で、自民党の総裁選について、「出馬するのは、時期が来れば当然のことだろうと思っている」と述べた。
- 野田聖子幹事長代行は同日、次期総裁選への立候補に改めて意欲を示し、女性党員票の獲得に自信を示した。
13. 秋の衆院選、自民党にとって難しい選挙になる可能性
- 自民党は衆院選に向け、引退を表明している議員の選挙区の候補者選定を始めている。今回の選挙が厳しいものになると予想してか、多くは地盤を引き継いだ、当選がより確実的な世襲議員となっている。
- 自民党幹部は火曜、会議を開き、三重2区と愛媛1区の公認候補となる選挙区支部長が異論なく決定した。三重は川崎二郎元厚生労働相の長男、愛媛は塩崎恭久元官房長官の長男が就いた。
- また、引退を表明している山口泰明選対委員長の埼玉10区は、同氏の次男が公認候補に選ばれた。
- 自民党神奈川県連は水曜、次期衆院選神奈川1区での公認候補擁立を見送る方針を決めた。同区選出の松本純議員は、緊急事態宣言下に東京・銀座のクラブを訪れていたことが発覚して離党している。
- 同氏が所属していた麻生派では、衆院選前の復党を求める声が強いが、党執行部は国民からの批判を恐れ、慎重姿勢を崩していない。
- また、自民党は、山口3区で保守分裂選挙を戦う可能性がある。元文科相の林芳正参議院議員が鞍替え出馬し、現職の河村建夫・元内閣官房長官と議席を争う。
- 河村氏が所属する二階派の二階俊博幹事長(会長)は火曜、地元の意向などを踏まえて、公認を決めたいという考えを示した。
- 数人の議員は、国政から地方へ打って出る。先月には、小此木八郎国家公安委員長が、8月に行われる横浜市長選挙に立候補するため、同委員長職を辞職した。
- 今週月曜には、再び閣僚経験者の馳浩元文部科学相が次期衆院選に出馬せず、来年3月の任期満了に伴う石川県知事選に立候補すると表明した。
その他の注目すべきニュース
- 自民・維新推薦の新人が兵庫県知事選で勝利: 兵庫県知事をめぐる日曜の選挙では、20年ぶりに新人のみが争った。現職の井戸敏三知事は5期務め、昨年12月に再選を目指さないことを発表した。井戸氏は発表前から、自民党に前副知事の金沢和夫氏への支援を要請していたが、自民は分裂し、金沢氏への党推薦は見送られた。党本部は、兵庫県に隣接する大阪に地盤を置く日本維新の会が推薦した新人の斎藤元彦氏を推薦した。自民幹部や維新副代表の吉村洋文大阪府知事らが応援に駆け付け、支持を広げた。一方、多くの県議会議員は金沢氏を支援することにした。井戸氏は、金沢氏応援する街頭演説で、自民の推薦決定を主導した国会議員を念頭に、「東京(中央)に支配されていいのか」と痛烈に批判。維新にも、「兵庫を大阪に売り渡すのは許さない」と対決姿勢をあらわにした。しかし、最終的には、県政の刷新を掲げた斎藤氏が県民の支持を得た。斉藤氏は2位に25万票以上の差をつけ、新たな兵庫県知事となった。これにより、同氏は千葉県の熊谷俊人知事と並び、国内で2番目に若い知事となる。他方で、自民党としては、地方選とはいえ、党本部と県議の支持が分裂したことは、衆院選にしこりを残す可能性がある。
II. 世論調査
- 月曜に公表された朝日新聞の世論調査では、菅内閣の支持率は31%(6月から3%減)、不支持は49%(7%増)だった。
- 回答者の26% (6月から6%減) は、政府のこれまでの新型コロナ対策を評価するとした一方、65% (10%増) は評価しないと答えた。
- 回答者の33%は、東京都での4度目の緊急事態宣言が感染拡大の防止に「大いに」、あるいは「ある程度」効果があるとした一方、66%は「あまり」、あるいは「まったくない」と答えた。
- 回答者の51%は、今回の緊急事態宣言で、政府は飲食店がお酒を出さないようにするため、金融機関による働きかけや、お酒の販売業者による取引停止を求める方針を出し、その後撤回した一連の対応で、菅内閣への不信感が高まったとした一方、45%はそれほどでもないと答えた。
- 回答者の54%は、政府のワクチン接種の取り組みを「大いに」(7→6)、あるいは「ある程度」(54→47) 評価するとした一方、44%は「あまり」(30→33)、あるいは「まったく」(8→11) 評価しないと答えた。
- 回答者の63%は、自治体や職場に希望する量が届かず、ワクチン接種予約を停止するところが出ている問題に対する政府の責任は大きいとした一方、32%はそれほどでもないと答えた。
- 回答者の33%は、この夏に東京五輪・パラリンピックを開くことに賛成だとした一方、55%は反対だと答えた。
- 回答者の76%は、ほとんどの会場で観客を入れずに実施することになったことはよかったと思うとした一方、17%はよくなかったと思うと答えた。
- 回答者の21%は、今回のオリンピック・パラリンピックは、菅首相が繰り返し述べたように「安全、安心の大会」にできると思うとした一方、68%はできないと思うと答えた。
- 回答者の56%は、オリンピックをテレビなどで見たいとした一方、41%はそれほどでもないと答えた。
- 回答者の12%は、夏休みに帰省や旅行を計画しているとした一方、87%は計画していないと答えた。
- 回答者の54%は、菅首相に自民党総裁としての任期満了となる9月まで首相を続けてほしいとし、27%は続けてほしくない、14%は任期を超えて続けてほしいと答えた。
- 次の衆議院選挙の比例代表選挙では、どの政党に投票するかという質問に対しては:
- 回答者の34%は自民党 (6月から1%減);
- 24%はわからない・決まっていない (1%増);
- 14%は立憲民主党 (同率);
- 8%は日本維新の会 (1%増);
- 6%はそれぞれ公明党 (1%減) と共産党 (1%増);
- 4%はその他政党 (1%増);
- 2%はれいわ新撰組 (同率);
- そして1%はそれぞれ国民民主党 (2%減)と社民党 (同率).
- 世論調査は各政党の支持率に関するデータも集計している。
政党名 | 支持率 (%) |
自民党 | 30 (-1) |
公明党 | 3 (-1) |
立憲民主党 | 6 (±0) |
日本維新の会 | 1 (-1) |
国民民主党 | 0 (-1) |
日本共産党 | 3 (±0) |
社会民主党 | 0 (±0) |
れいわ新撰組 | 0 (±0) |
支持政党なし | 48 (+3) |
- 日曜に公表された毎日新聞の世論調査では、菅内閣の支持率は30%(6月から4%減)、不支持は62%(7%増)となり、支持率が2020年9月の政権発足以降で最低となった。
- 回答者の19%は、日本政府のこれまでの新型コロナ対応を評価するとした一方、63%は評価しないと答えた。
Image: Captain76 (CC BY-SA 3.0)
完。