I. 今週のニュース
新型コロナ
新型コロナ情報 (基本毎日更新):
- 緊急事態・蔓延防止等に関する情報: 内閣官房、「緊急事態宣言」、https://corona.go.jp/emergency/
- ワクチン接種等に関する情報: 首相官邸、「新型コロナワクチンについて」、https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
- 世界の接種状況の比較: 「チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は」、日本経済新聞、https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
- 都道府県ごとの新規感染者数: 「特設サイト: 新型コロナウイルス」、NHK、https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/
- 東京の新規感染者数・病床使用率: 東京都、「都内の最新感染動向」、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
1. 沖縄に緊急事態宣言を発令
- 菅義偉首相は金曜、沖縄に5月23日~6月20日の期間、緊急事態宣言を発令すると発表した。今週、1日の全国新規感染者が先週の7,000人越えから5,818人に減った一方、重傷者は過去最多の1,294人となった。
- 政府は蔓延防止等重点措置が適用中の愛媛県について、新規感染者数の減少を理由に解除する方針を決定した。
- 沖縄は蔓延防止等重点措置から緊急事態へと切り替わる。県は飲食店や大型商業施設などへ20時までの時短営業を要請し、県民には20時以降の外出を控えるよう求めている。
- 県は時短要請に協力しない15の飲食店名を土曜までに公表するとしている。県によると、15店舗は特に苦情が多く、時短要請に応じていない店となる。県はその後、措置命令を出し、店舗に時短要請を「命令」する予定だ。
- 菅首相は現在緊急事態宣言下に置かれている9県について、月末に延長の判断をするとしている。緊急事態宣言は今月31日に終了する。
- 自民党新型コロナウイルス感染症対策本部の金曜に開催された会議に参加した議員からは、医療逼迫の状況を改善するため、患者の受け入れに応じない医療機関名の公表などを検討すべきだとの意見が出た。感染症法は病床確保のため、協力を要請できると定めていて、正当な理由なく応じない場合、名前を公表することができる。
- 大阪の吉村洋文知事は木曜、政府に緊急事態宣言の再度延長を要請するかは来週判断する考えを示した。
2. 変異株感染が広まる
- 新型コロナウイルス対策を助言する厚生労働省のアドバイザリーボードは水曜、変異株の影響で感染者数の減少に以前よりも長い期間を要しているとの見解を示した。大阪では新規感染者数が急増した3月28日の週に繁華街の人出が減少し始めたが、感染のピークが過ぎたのは5月1日の週だった。
- 政府は海外からの帰国者をより厳格に監視する対策を検討している。現在、帰国者は入国から14日間、スマートフォンアプリを通して位置情報を提供し、連絡が取れる体制を整えるよう求められている。
- 政府は水曜、入国者の所在把握と隔離の徹底のため、ビデオ通話を実施するとした。現時点で3割ほどの入国者がアプリでの報告を行っておらず、所在が把握できないケースが相次いでいる。
- 東京都は水曜、5月13日から17日の期間に確認された新規感染者の約8割が感染力が強いとされる「N501Y」(イギリス)変異型であったと発表した。
- 東京都は月曜、酒類を提供する飲食店などへの休業要請に応じていない33施設に対し、休業命令を出した。そのうち23店舗を経営するグローバルダイニングは火曜、命令に従わず営業を継続すると発表した。これまでは法的義務のある命令に従う方針を示していたが、今回は予防的であり、私権制限は許されないとして命令に従わないとした。
- 政府は火曜、変異ウイルスの感染がインドの周辺国に拡大しているとして、新たにバングラデシュ、スリランカ、モルディブからの入国者に対しても14日間の隔離期間の最初の6日間、政府指定の宿泊施設にとどめる措置を取る方針を固めた。
3. ワクチン接種の進捗
- 厚生労働省は金曜、モデルナ製とアストラゼネカ製のワクチンを承認した。モデルナ製は東京と大阪に設置された大規模接種センターで使用される。政府はさらに大学のキャンパスを65歳以上の高齢者、そしていずれ大学生・大学関係者用の接種会場にすることを検討している。
- 6000万人分の契約を交わしているアストラゼネカ製のワクチンに関しては、極めてまれに血栓が生じるリスクがあると指摘されていることから、直ちに公的接種に使わない方針である。
- 河野太郎ワクチン担当相は金曜、各自治体に余ったワクチンを65歳以下の人の接種に有効活用するよう求めた。河野大臣はいくつかの自治体で、接種券を持っていない者には打てないという誤った認識が広まっていると強調した。
- 田村憲久厚生労働大臣は金曜、ワクチンの打ち手を確保するため、現在勤務していない「潜在看護師」が復職して接種業務に当たる場合、3万円の就職準備金を支給すると発表した。
- 菅首相は火曜、日本歯科医師会の会長と会い、ワクチンの打ち手不足を補うために歯科医師の協力を要請した。
- 与党・自民党は火曜、政府に1) 緊急時の薬事承認プロセスに関する国際的な規制調和の推進、2) 国内企業によるワクチン臨床開発力の強化・バイオ医薬品産業発展の基盤の再構築、3) 省庁横断的な調整・体制整備、産官学の密接な協働の推進を求めた提言書を提出した。
- オックスフォード大学の研究グループが公表しているデータによると、月曜の時点で日本は国民の3.74%の1回目の接種を完了している。これは世界平均の9%より低く、スピードにおいては世界110位ほどの速さである。
- 日本人研究者二人が5月7日に公表した研究によると、日本のワクチン接種スピードが変わらなければ、来年4月までにあと4回の緊急事態宣言が必要となる。
- 論文によると、変異株の広がりを抑えるには、ワクチン接種のスピードを4倍以上早くする必要がある。菅首相の1日100万回接種の目標は4倍以上のスピードに達する。
- 今週政府が公表した全国の1741自治体を対象とした調査によると、93%の自治体が7月末までに高齢者の接種を完了させる見込みがあると回答した。先週の調査では86%の自治体が完了の見込みがあると回答していた。
4. 大規模接種センターの予約開始
- 東京都23区の高齢者は5月17日に予約が始まり、5月24日から30日まで接種でき、東京都全体は5月24日に予約、5月31日に接種が始まり、東京圏(神奈川、千葉、埼玉)は5月31日に予約、6月7日に接種が始まる。
- 水曜の報道によれば、政府は大規模接種センターで、当日キャンセルなどにより余ったワクチンを運営に当たる自衛官に接種する方向で検討している。
- AERAに至ってはあえて間違った郵便番号と接種券番号を入力し予約を試み、驚くことに5月29日の予約を確保することに成功した。
- 防衛省はこれらの朝日や毎日新聞による報道に対し、抗議文を持って反論した。岸信夫防衛大臣は火曜、不正な手段によって予約することは、貴重なワクチンを無駄にしかねない悪質な行為であるため、控えるよう訴えた。さらに政府は、悪質なケースには法的措置も検討するという。
- インターネット予約のシステムは政府主導の大規模接種センターと自治体では異なる。これにより、大規模接種センターと自治体ごとに設置されている接種会場でのいわゆる「重複予約」に関する懸念が示されている。政府は国民にワクチンの無駄をなくすため、重複予約を避けるよう呼びかけている。
- 東京都の複数の自治体では金曜、正確な接種券番号を入力しても予約が取れないという新たな問題が発生した。専門家によると、各自治体がそれぞれ10桁の番号を発行しており、これにより重複番号が多数存在する可能性がある。
- 河野ワクチン接種担当相は火曜、全国30の自治体が大規模接種センター設置に前向きな姿勢を示していると述べた。河野大臣はこの動きによりワクチン接種のペースが早まると期待している。大臣はまた、政府が打ち手不足の解消のため、薬剤師にワクチン接種業務に当たるよう要請することを検討していると明かした。
- 小池百合子東京都知事は金曜、都が独自の大規模接種センターを設置する方向で調整していると明かした。小池都知事はまた、旧築地市場の跡地を活用し、警視庁と東京消防庁の職員への接種を進める方針を菅首相に伝えたことを明かした。
外交・防衛(安全保障)
5. 2つの多国間共同演習が終了
- これらの地上・海上訓練は中国の地域における進出が強まる中、4カ国を集め開催された。演習はさらに、日本にとって自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の確立を推進する意味合いも持つ。
- ARC-21共同訓練の計画立案は長崎県佐世保市の相浦駐屯地で行われ、実動訓練部分は九州の霧島演習場、最後には多国籍艦船による水陸両用航空強襲訓練が実施された。
- 仏軍の日米共同訓練への参加は欧州のインド太平洋への深まる関与を象徴している。3カ国による訓練は敵に占拠された離島の奪還などを想定したものであった。
- 3カ国による訓練は仏海軍艦隊ジャンヌダルクの佐世保港への寄港を機に行われた。防衛省は艦隊の次回の寄港時以降も共同訓練を行い、定例化する方針を明らかにした。
- 中国は今月上旬、訓練を平和的な繁栄と協力という世界的な動きと矛盾するアプローチとし、批判した。
- また防衛省統合幕僚監部は月曜、中国海軍のミサイル駆逐艦など計3隻が日曜に沖縄県久米島の北西約120キロの海域で確認されたと発表した。
6. 日米関係
- 米税関・国境警備局(CBP)による差し止めは、ウイグル自治区においての人権問題に重きを置く米政府の厳しい姿勢を浮き彫りにした。日本政府は現時点で米政府のようにウイグル族に対する人権侵害をジェノサイド(集団虐殺)と見なしていない。
- 防衛省は日曜、鹿児島県の馬毛島に在日アメリカ軍などが使う自衛隊基地を建設する計画をめぐり、騒音のレベルを把握するため、戦闘機による試験飛行を行った。
- 自衛隊のF15戦闘機が5機、馬毛島の上空などをおよそ1時間試験飛行した。基地建設が計画されている西之表市の市長は反対の立場をとり続けている。
7. 今週の首相の動向
- 菅首相は水曜、ロドリゴ・ドゥテルテフィリピン共和国大統領と約20分間電話会談を行い、災害復旧スタンド・バイ借款を通じた200億円の資金支援及びワクチンをフィリピンの人々に届けるための約10億円のコールド・チェーン整備支援を表明した。
- 両首脳はまた、FOIP及び「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」の双方の実現に向けて緊密に連携していくこと、そしてスールー・セレベス海等周辺地域における協力を強化することで一致した。
- 菅首相は中国の東シナ海・南シナ海における力による一方的な現状変更の試みに懸念を示した。両首脳は国連海洋法条約(UNCLOS)を始めとする法の支配に基づいて地域の平和及び安定のために緊密に協力していくことで一致した。
- 菅首相は月曜、ファム・ミン・チンベトナム社会主義共和国首相と約30分間電話会談を行い、現在最良の関係である日越関係を2023年の両国外交関係樹立50周年に向けて、さらに発展させていくことで一致した。
- 両首脳はさらに中国の海洋進出、ミャンマー情勢の打開、そして北朝鮮への対応について協議した。
8. その他外交ニュース
- 加藤勝信官房長官は金曜、菅首相が5月27日にEUのシャルル・ミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)やウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長とテレビ会議方式で会談すると発表した。FOIPの実現に向けた連携や、中国が進出を強める東・南シナ海情勢などについて協議する見通しだ。
- 茂木敏充外務大臣は金曜、日経のインタビューで、政府はミャンマー情勢の改善がなければ政府開発援助(ODA)の全面停止も選択肢にする方針を示した。日本は2019年度に1,893億円の支援を行い、最大級のODA提供国となっている。
- 加藤官房長官は木曜、在京ミャンマー大使館に勤務する外交官2人の外交旅券を無効とするとの通知を受けたことを明らかにした。国軍によるクーデターに抗議したことが原因とみられている。
- 同大使館はクーデター後の3月、2人の外交旅券を無効とした上で解任する書面を外務省に送ったという。国軍は自らが指名した交換要員のため、新たな外交旅券を申請している。
- 自民党の人権外交PTは木曜、政府への提言案をまとめた。提言案は各国の人権状況に関し、改善への関与は「内政干渉ととらえるべきではない」との姿勢をとるべきとしている。PTは6月初旬までに提言を政府に提出する予定。
- 提言案には、ジェノサイド条約の批准に必要となる法整備の洗い出し、海外当局者の資産凍結などを規定する外国為替および外国貿易法(外為法)の積極的活用などを盛り込んだ。
- 加藤勝信官房長官は水曜、6月29日にオンライン形式で開催される拉致問題に関する国際シンポジウムの基調発言を行うと発表した。このシンポジウムは例年ニューヨークの国連本部で開催されている。
9. その他防衛ニュース
- 朝日新聞が金曜に掲載した記事によると、陸上配備型迎撃ミサイルシステムイージス・アショアの代替案イージス・システム搭載艦2隻の総コストが、当初の試算の2倍の水準となる、少なくとも9千億円近くになっている。
- 国際戦略研究所は木曜、新型コロナの蔓延を受け、6月4日から5日にかけてシンガポールで行われる予定であったシャングリ・ラ会合を中止すると発表した。菅首相は基調講演者になる予定であった。
- 岸防衛大臣は水曜、日経のインタビューにおいて、防衛費の予算要求についてGDP比で1%の枠にこだわらず増やす方針を明らかにした。岸防衛相は中国の海洋進出や、宇宙やサイバー攻撃など新領域での対処には従来と抜本的に異なる速度で防衛力を強化しなければならないと述べた。
- 専門家によると、この発言はそれほど画期的なことではない。予算(計算の仕方で大きく変わる)に目を向けすぎると使い方に焦点が当たらなくなるという。他の専門家は枠自体が非公式なものであり、同時に防衛費が大きく上がることは様々な理由から考えられないとしている。
- 岸防衛相は水曜、ダットン豪国防大臣と電話会談を行い、中国の東シナ海・南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みに対する懸念を共有し、共通の同盟国である米国や同地域のパートナーとFOIPの達成に向けて協力することで一致した。
- 読売新聞は日曜、政府が防衛装備品の輸出促進に向け、国際協力銀行(JBIC)を通し相手国に低金利の融資を行うと報じた。
- 政府は2014年に、防衛装備品の輸出を原則禁止していた「武器輸出3原則」を変えたが、輸出量は増えていない。政府は装備品に関して数億円を超える高額なものが多く、外国政府が購入を踏みとどまる要因となっているとし、低金利の融資を通して購入を促進したいとしている。
- 政府はさらに、日本の輸出企業には国が全額出資する日本貿易保険(NEXI)の利用を促す。国が出資する保険会社であれば相手国の返済が滞っても保証があるという安心材料もある。
10. 経済安全保障
- 先端半導体については、国内開発・製造拠点の立地計画を支援し、米国や台湾などの海外メーカーを誘致した日本企業との共同研究を想定している。骨子案は6月にも発表される菅政権で初の成長戦略に反映させる。
- 政府は現在2,000億円の基金をもとに国内産業を支援している。戦略ではこれらの支援を拡充し資金が先端半導体やバッテリーに必要な生産技術に回るようにする。
- 日経は火曜、政府がサイバーセキュリティ強化を目的に、通信や電気など14の重要インフラ分野で新たな規制をかけると報じた。政府は中国の機材からのデータ漏洩の懸念が広まる中、機器や接続の侵害によって引き起こされるリスクを軽減しようと考えている。
- 月曜の報道によれば、自民党内で日本の半導体産業の強化に向けた中長期戦略を議論する新たな議員連盟が設立される。連盟は半導体を経済安全保障の重要な基盤と位置づけており、早ければ秋には提言を取りまとめることにしている。
- 議員連盟の会長は甘利前経済産業大臣が務め、安倍晋三前総理大臣と麻生太郎財務大臣が最高顧問に就任する。初会合は金曜に開催された。
- 世界的な半導体不足は日本の主要自動車メーカーに影響を与えている。トヨタ自動車は火曜、岩手県と宮城県の2つの工場の稼働を停止すると発表した。この停止によって合わせておよそ2万台に影響が出るとされている。
国内政治
11. 国会
- 政府与党は今週、会期末まで時間がないとし、2021年度補正予算案を提出しない方針を固めた。新型コロナ対策は当面、2021年度予算に計上された5兆円の予備費を使う。
- 国会では金曜、事件を起こした18、19歳について、一定の厳罰化を図る改正少年法が成立した。家庭裁判所が検察官に送致(逆送)する対象犯罪を拡大し、起訴後は実名報道を解禁する。民法の成人年齢が18歳に引き下げられる来年4月に施行される。
- 中山泰秀防衛副大臣は木曜、参院外交防衛委員会に遅刻し、流会となった。中山氏は今週遅刻してきた二人目の副大臣となった。
- 自民党は木曜、新型コロナに感染した自宅・宿泊療養者にも選挙で郵便投票を認める法整備の方針を固めた。6月16日までの会期内に成立すれば、7月の都議会選挙から適用される可能性もある。
- 自民党のLGBTなど性的少数者に対する理解増進法案の審査を担当する特命委員会は、野党が要求したLGBTへの「差別は許されない」との文言が加わったことに慎重論が出されたことから、了承を見送った。簗和生衆議院議員は性的マイノリティーの人たちをめぐって「生物学上の種の保存に反する」という趣旨の発言をしたことでニュースとなった。
- 一方で、自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」は木曜、森山裕国会対策委員長と会談し、法案を原案通りの内容で成立するよう申し入れた。
- 国会では水曜、自衛隊とインド軍の物品役務相互提供協定 (ACSA)が承認された。協定により自衛隊とインド軍は食料や燃料などの物品や、通信や輸送などの役務を提供し合えるようになる。日本とACSAを締結している国はインドで6カ国目となる。
- 国会では今週、GPS機器を悪用して、相手の承諾なく位置情報を把握する行為などを規制対象に追加した改正ストーカー規制法や、地域金融機関の経営環境が厳しさを増す中、合併や経営統合に踏み切る地域金融機関に交付金を出す新たな制度を設けるための金融機能強化法の改正法が成立した。
12. 与党、入管法の今国会成立を断念
- 自民党の二階俊博幹事長は火曜、野党に審議中の入管難民法改正案について、今国会成立を断念する方針を伝えた。
- 自民党としては、菅政権の新型コロナ対応への世論の不満が高まり内閣支持率が低迷する中、強行採決に踏み切るのは得策ではないと考えた。これを受け、野党は義家弘介衆院法務委員長の解任決議案を取り下げた。
- 両者の間では入管施設で拘束されている間に死亡したスリランカ人女性のビデオ映像の開示に関して不一致が生じている。野党は死亡の原因究明が最優先であるとしている。
- 上川陽子法務大臣は火曜、ウィシュマ・サンダマリさんの遺族と面会し、お悔やみを申し上げたが、謝罪はしなかったという。
- この件は、日本の移民政策の背景にあるいくつかの「闇」、例えば資格の決定が秘密裏に行われ、移民に法廷への頼りをほとんど与えないという事実を明らかにした。入管法が成立していれば、長期拘留の代わりに国外追放が可能となっていた。
13. 当選無効となった国会議員が受け取った歳費の返還を検討
- 河井案里と夫で元衆議院議員の克行氏は票のために地元広島の議員を買収したことで起訴された。河井案里の2019年参議院選挙においての勝利はその後無効となり、当選自体がなかったことになった。
- 河井氏は当選無効となった後も歳費を受け取り続けていることで批判された。河井氏の議員歳費返還を要求している弁護士有志によると、当選無効後に受け取った額は約4900万円にのぼる。
- 広島高裁は金曜、河井案里に参院広島選挙区からの5年間立候補禁止を言い渡した。また、当選無効により5年間公民権が停止されていることもあり、最大で10年は広島選挙区から立候補できない計算となる。
- 歳費法改正については、与野党の議員が今国会での改正を支持している。両者ともに選挙を前に有権者に対し、「政治とカネ」の問題と向き合っていることをアピールしたい意図があるようだ。
14. 経済状況
- 政府の財政制度等審議会は基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化する政府の目標は継続する必要があるとする提言をまとめた。その一方で、自民党の財政再建推進本部は火曜、新型コロナの感染拡大による経済への影響を踏まえ、積極的な財政出動を求める意見を受け、提言取りまとめを先送りした。
- 財務省は木曜、4月分の貿易統計を発表した。貿易黒字は前年同月比38%増の2,553億円となった。主に米国への自動車・自動車部品、そして中国への半導体機器の輸出が大幅に増加した。
- 日経は、国が出資する日本政策投資銀行(DPJ)が、環境、社会、企業統治の要素に基づく資金を今後5年間で5.5兆円(504億ドル)に増やす計画であると報じた。DPJは水素エネルギー、電気自動車、その他のCO2排出削減技術の普及を支援する。
- 読売新聞は土曜、政府が2030年度の電源構成に再生可能エネルギーを36~38%とする方向で調整していると報じた。当初の計画では再生可能エネルギーが占める割合は22-24%とされていた。政府はエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画を今夏に改定する予定だ。
15. 政府がオリンピック中止は「ない」とする
- 丸川珠代オリンピック担当大臣は金曜、大会が中止になった場合の損失について、組織委員会が資金不足に陥った場合は東京都が補塡するとした。
- 組織委は現在、チケット収入900億円を含め、7,210億円の収支均衡の予算を組んでいる。大会が中止、あるいは無観客になれば、資金不足に陥る可能性が高い。
- 小池東京都知事は資金不足になった場合、都は改めて政府、IOC、大会組織委員会などと協議すると述べ、丸川大臣とは食い違う発言をした。
- 組織委員会は金曜、大会運営に必要な医療体制について、当初の1万人程度から3割程度を削減し7,000人程度を目指すとした。橋本聖子会長は医師と看護師について、1日最大で医師が230人程度、看護師が310人程度となる想定を明らかにした。
- 大阪府医師会の会長は木曜、オリンピックの開催について「厳しい」とし、医療逼迫をさらに悪化させる懸念があると述べた。
- 読売新聞は来日する関係者について、選手が約1万5,000人、監督・コーチなどが約1万人、IOCやメディアなどの大会関係者約4万3,000人で、パラリンピックは選手と監督・コーチらを合わせて約1万人、関係者約1万5000人が想定されると報じた。
- 外務省は水曜、来日する外国要人に関する新型コロナの水際対策を示した。選手との面会・接触の禁止や随行員の絞り込みなど必要な防疫措置を取ることを条件に、14日間の待機措置は免除される。
- 加藤官房長官は月曜の記者会見において、取材で来日する報道関係者に対し、行動制限の順守などを記載した誓約書の提出を求める方針を示した。
- 自民党の下村博文政務調査会長は日曜のテレビ番組で、バッハ会長が来日する予定の来月の早い段階で大会のあり方を明示する必要があるとした。
- 楽天の三木谷浩史会長兼社長は先週の金曜、オリンピック開催は「まるで自殺行為」と述べた。
選挙
16. 党本部と都道府県連による公認を巡る内紛勃発
- 来たる解散総選挙で自民党は党内紛争が起きる。徳島県連は月曜、徳島1区で現職の後藤田正純氏を公認しないよう党本部に申し入れた。
- 県連が現職の公認を求めないのは異例。県連が公認をしない理由として、2019年の徳島県知事選おいて、後藤田氏が県連公認の候補者を支援しなかったことが挙げられる。
- 自民党は他の選挙区でも統一候補を擁立することに苦労しそうだ。高知2区では県連が元知事を擁立する一方、前回選で比例復活した山本有二元農相が立候補する動きを見せている。
- 福岡5区では、原田義昭前環境相が出馬予定だが、自民党の栗原渉県議も出馬に意欲を示している。
17. 解散総選挙に向けての準備が進む
- 立憲の枝野代表は水曜、緊急事態宣言が解除された段階での内閣不信任決議提出に含みを持たせた。枝野氏は今月上旬時点では、新型コロナの感染が拡大している中で、衆議院の解散につながる対応は避けるべきで、現状では提出できないとしていた。
- 日本維新の会は月曜、「日本大改革プラン」と題した重点政策を発表した。
- 目玉政策は全国民に月額6万円から10万円を無条件で支給する「ベーシックインカム」。これにより可処分所得の増加で経済成長と格差是正の両立が図れるとしている。消費税や所得税、法人税などの減税による需要喚起も打ち出している。
- 共産党の小池晃書記局長は月曜、菅政権を継続させることこそが政治空白になりかねない状況になり、内閣不信任決議提出を検討すべきだという認識を示した。
- 立憲の枝野代表は、党の地方組織の会合で、新型コロナの危機を乗り切るため、野党共闘による政権交代を目指す考えを強調した。枝野氏はまた、今国会の会期末となる来月、菅総理が解散総選挙に踏み切る可能性もあるとして、野党の結束を呼びかけた。
その他の注目すべきニュース
- 自民幹部、河井氏の買収事件への関与を否定: 2019年の参議院選挙においての買収事件をめぐって、自民党内で非難の応酬が始まった。 河井案里氏は、2019年の参議院選挙の際、当選するために地元広島の議員を買収したとして、起訴された。 河井氏は2月上旬に議員辞職した。 党は選挙資金としては異例の1億5000万円を河井陣営に提供していた。 この資金が地元議員買収のために使われたという疑問が拭えず、これが事実なら党は責任を問われる可能性がある。 これを受け今週、二階幹事長が当時の選挙対策委員長だった甘利明氏が広島の選挙を担当していたと指摘した。甘利氏は資金提供への関与を否定し、この発言に反論した。 一部の報道によると、両者の関与否定が二階派と麻生派(甘利氏が所属する)による派閥間の争いの始まりであり、二階氏は自らの責任を問う方向に向かっていることについて、幹事長から引きずり下ろすための策略であると恐れているという。
- 愛知県知事のリコール署名偽造容疑で4人逮捕: 警察は水曜、愛知県の大村秀章知事のリコール・解職請求に向けた不正署名運動事件に関与した疑いで4人を逮捕した。田中孝博氏ら4人は署名を偽造したとして、地方自治法違反の疑いで逮捕された。報道によると、提出された435,000の署名のうち、83%が偽造されていた。法律上、親族であっても一時的に不在の家族の代わりに署名をすることは禁じられている。リコール署名のきっかけはホロコーストや南京大虐殺を否定したことで有名な美容整形外科の高須克弥氏らが2020年8月に国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」において慰安婦をモチーフにした少女像などの展示を実行委員会会長を務めた大村知事が許可したことに反論したことだ。高須氏は偽造への関与を否定している。大村知事は水曜、公に運動を支持していた河村たかし名古屋市長が裏でリコール活動を主導していたと疑いをかけたが、後者は関与を否定している。この疑いに問題点があるとすれば、それは大村知事と河村市長の関係が良好ではないと周知されていることだろう。
- 政府、アスベスト訴訟で原告に和解金: 政府は火曜、建設現場で建材のアスベストを吸い込んで肺がんなどの病気になったとして、元作業員らが健康被害を訴えた集団訴訟で最高裁判所の判決が出たことを受け、原告に和解金を支払うことを決めた。政府は症状などに応じて最大1,300万円の和解金や、長期間にわたる訴訟の負担を考慮した解決金を支払うとしている。 菅首相は火曜、原告団と面会し政府を代表してお詫びを申し上げた。また、原告団とは別に、訴訟を起こしていない被害者にも和解金と同じ額の給付金を支給するための基金を創設するとしている。
II. 世論調査
- 月曜に公表された朝日新聞の世論調査では、菅内閣の支持率は33%(4月から7%減)、不支持は47%(4月から8%増)だった。
- 回答者の60%は不支持の理由とし、政策を挙げ、18%は自民党中心の内閣と答え、9%は首相が菅さんだからと答えた。
- 回答者の35%は来たる衆議院選挙の比例区で自民党に投票したいと答え、17%は立憲民主党、9%は日本維新の会、公明党と共産党はそれぞれ5%が投票すると答えた。
- 回答者の23%(4月から6%減)はこれまでの政府の新型コロナ対応を評価するとした一方、67%(4月から6%増)は評価しないと答えた。
- 回答者の27%は菅首相の新型コロナに取り組む姿勢を信頼できるとした一方、 61%は信頼できないと答えた。
- 回答者の41%は緊急事態宣言の効果について「大いに」、あるいは「ある程度」あるとした一方、59%は「あまり」、あるいは「全く」効果がないと答えた。
- 回答者の54%は緊急事態において、お酒を出す飲食店に休業要請を出したことについて評価するとした一方、36%は評価しないと答えた。
- 回答者の47%は政府のワクチン接種に関する取り組みを「大いに」、あるいは「ある程度」評価するとした一方、52%は「あまり」、あるいは「全く」評価しないと答えた。
- 回答者の47%はすぐにワクチン接種は受けたいと答え、40%はしばらく様子を見たい、6%は受けたくない、5%はすぐに受けたと答えた。
- 回答者の66%はワクチン接種の遅れについて、政府の責任は大きいとした一方、28%はそれほどでもないと答えた。
- 回答者の43%はオリンピック・パラリンピックを中止するべきと答え、40%は再び延期、14%は今年の夏に開催すべきと答えた。
- 回答者の59%はオリンピック・パラリンピックを無観客で開催すべきとし、33%は観客数を制限、3%は通常通りの観客数で行うのが良いと答えた。
- 回答者の44%は政府が福島第一原子力発電所の処理水を、放射性物質の濃度を薄めた上で、海に放出する方針を決めたことを評価したが、43%は評価しなかった。
- 世論調査は各政党の支持率に関するデータも集計している。
政党名 | 支持率 (%) |
自由民主党 | 30 (-5) |
公明党(自民と連立政権を組む) | 3 (+1) |
立憲民主党 | 7 (+1) |
日本維新の会 | 2 (±0) |
国民民主党 | 1 (±0) |
日本共産党 | 2 (-1) |
社会民主党 | 0 (±0) |
N党 | 0 (±0) |
れいわ新撰組 | 0 (±0) |
支持政党なし | 47 (+4) |
- 日曜に公表された共同通信の世論調査では、菅内閣の支持率は41%(4月から3%減)、不支持は47%(4月から11%増)だった。
- 回答者の25%(4月から11%減)はこれまでの政府の新型コロナ対応を評価するとした一方、72%(4月から11%増)は評価しないと答えた。
- 回答者の85%は政府主導のワクチン接種スピードが遅いとした一方、13%は予定どおりだとした。
- 回答者の90%は変異株の感染拡大について「大いに」、あるいは「ある程度」恐れを抱いていると答えた一方、10%は恐れはないとした。
- 回答者の50%は9県で発令されている緊急事態宣言は感染拡大を抑える効果があると答えた一方、47%はないとした。
- 回答者の60%はオリンピック・パラリンピックを中止するべきと答え、25%は無観客、13%は観客数を制限して開催するのが良いと答えた。
Image: Captain76 (CC BY-SA 3.0)
完。
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