I. 今週のニュース
新型コロナ
新型コロナ情報 (基本毎日更新):
- 緊急事態・蔓延防止等に関する情報: 内閣官房、「緊急事態宣言」、 https://corona.go.jp/emergency/
- ワクチン接種等に関する情報: 首相官邸、「新型コロナワクチンについて」、 https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
- 世界の接種状況の比較: 「チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は」、日本経済新聞、 https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
- 都道府県ごとの新規感染者数: 「特設サイト: 新型コロナウイルス」、NHK、https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/
- 東京の新規感染者数・病床使用率: 東京都、「都内の最新感染動向」、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
1. 全国の新規感染者数が過去最多を記録
- 日本全国では金曜、過去最多の2万365人の新規感染者が確認された。そのうち17都府県では過去最多の感染者が確認されていて、沖縄県に至っては、直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数が256.09人と、イギリスの275.9人に迫る世界でも最悪レベルに達している。
- 東京都では過去最多となる5,773人の新規感染者が確認された。また、重症者数も、4日連続で過去最多を更新し、227人となった。
- 水曜時点の7日間平均は3,934人と、2週間で倍増している。東京都のモニタリング会議で、専門家は「かつてないほどの速度で感染拡大が進み、制御不能な状況で、災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態だ」と指摘し、「医療提供体制が深刻な機能不全に陥っている」として、極めて強い危機感を示した。
- 第5波では、入院患者の割合は、高齢者が減った一方で、基礎疾患がなく大きな病気にかかったこともない40代や50代といった世代が重症化し、症状の進行も速いケースが相次いでいる。
- 東京都の小池百合子知事は水曜、新型コロナに感染し、自宅療養中だった1人暮らしの30代男性が死亡したことを明らかにした。第5波が本格化した7月下旬以降の自宅療養中の急変による死者は3人目となる。
- 男性の死亡は、政府が先週、入院は重症者、中等症のうち酸素投与が必要な人や、重症化の恐れが強い人などに限定する新たな療養方針を示した直後のことになった。
2. 緊急事態宣言の9月延長、現実味を帯びる
- 菅義偉首相は金曜、関係閣僚に対し、自宅療養者が必要とする場合、酸素投与を可能にする酸素ステーションの態勢を整備するよう指示したと明らかにした。
- また、首相は、重症化防止に効果があるとされる、中和抗体薬を投与する態勢を整備する方針も示した。
- 全国知事会が同日、検討するよう要請したロックダウンについては、世界で外出禁止に罰金かけても守ることができなかったと述べた。
- 政府の新型コロナ感染症対策分科会は木曜、お盆を含む今後2週間を集中的な対策強化期間とし、東京都の人出を緊急事態宣言が発令される直前の7月前半に比べ、約5割にすることを要請した緊急提言をとりまとめた。
- 具体的には、百貨店地下の食料品売り場やショッピングモールなど、混雑が予想される場所への人出を強力に抑制することを提言した。また、医療提供体制の危機回避に向け、これまで新型コロナに関わってこなかった医療従事者や医療機関の協力を要請することを提言している。
- 具体的には、現在まん延防止等重点措置下に置かれている13道府県を、緊急事態宣言下へと切り替えるかを検討する。
- 政府の分科会の尾身茂会長は火曜、感染力の強い「デルタ株」が主流になり、感染がこれまで広がっていなかった場所でも報告されているとして、基本的な対策を徹底する必要があるという認識を示した。
- 菅首相は月曜、若い世代で重症化のリスクが高まっているとして、不要不急の外出や帰省、旅行を極力避けるなど、感染拡大防止への協力を呼びかけた。
- 西村康稔経済再生担当大臣も月曜、地方で帰省に伴うクラスターが発生しているとして、お盆の時期(8/13-16)の帰省などを控えるよう、呼びかけを徹底する考えを示した。
3. 国内の接種回数が1億回を突破
- 内閣府によると、金曜時点で、全国の総接種回数は1億820万回ほどとなった。また、全人口の49%は一回目、37%は二回目の接種を終えている。
- 菅首相は月曜の記者会見で、国内のワクチン接種回数が1億回を超えたことを明らかにした。
- 8月6日時点で、2回の接種を終えた人は約4,160万人に上る。政府は、今月末までに、全国民の4割(約5,000万人)が2回接種を終える目標を掲げている。
- 東京都世田谷区など6自治体の首長が木曜、新型コロナの感染者急増を受け、東京など感染拡大地域にワクチン供給を集中させることを求める緊急提言を発表した。
- 提言では、これに加え、急増する自宅療養者へのオンライン診療や抗体カクテル療法を可能とする制度整備、入院待ちの患者が酸素吸入できる施設の増設なども求めた。
- 提言は自民党と立憲民主党に送付され、与野党が「政治休戦」して危機回避にあたるべきだとしている。
外交・防衛(安全保障)
4. 日米関係
- 菅総理大臣は火曜、アメリカのジョー・バイデン大統領と電話会談を行い、オリンピック・パラリンピックについて話し、引き続き日米同盟の強化及び「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、緊密に連携していくことを再確認した。
- 秋葉剛男国家安全保障局長は、8月7日から11日の日程で、就任後初めて渡米した。
- 秋葉氏は火曜、ロイド・オースティン国防長官と会談を行った。両氏は、インド太平洋地域の地域情勢について意見交換し、日米同盟が地域の平和と安定の礎であることを再確認した。
- 秋葉氏はアメリカ時間の月曜、アントニー・ブリンケン国務長官と会談を行った。両氏は、日米同盟が、自由で開かれたインド太平洋の維持のために重要だと強調した。加えて、両氏は、中国や北朝鮮情勢、台湾海峡の平和と安定の重要性について話し合った。
- 秋葉氏は同日、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談を行い、中国、北朝鮮、東・南シナ海情勢について意見交換した。また、両氏は、サイバー防衛や経済安全保障分野でも日米、日米豪印の協力を進めることで一致した。
- 加藤勝信官房長官は日曜、アメリカのリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使と会談を行った。両氏は、日米同盟が地域の平和と安定の礎であり、気候変動、新型コロナ、民主主義の強化など国際的な課題においても不可欠であると再確認した。
- また、加藤官房長官は、北朝鮮による拉致問題について「菅政権にとっても最重要課題だ」と述べ、アメリカ側の理解と支持に謝意を伝え、問題の解決に向けて、引き続き、協力を求めた。
- 茂木敏充外務大臣は先週金曜、ブリンケン国務長官と電話会談を行い、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、日米同盟を一層強化し連携していくことを改めて確認した。
- この電話会談は、4日に行われた東アジアサミットの外相会議で、日本が中国の新疆ウイグル自治区の人権問題と香港情勢に深い懸念を表明したのに対し、中国が内政干渉だなどと強く反論したことを踏まえた行われた。
5. 外交関連ニュース
- 岸信夫防衛大臣と西村康稔経済再生担当大臣は金曜、15日の「終戦の日」を前に、靖国神社に参拝した。現職の防衛大臣が参拝に訪れるのは2016年12月以来となった。
- 茂木外務大臣は木曜、ミャンマー軍と民主派勢力の対話を仲介するASEANの特使に任命された、ブルネイのエルワン・ユソフ第二外相と電話会談を行った。
- 外相は、軍だけでなく民主派勢力とも対話を行うことや、並行して国際社会と意思疎通を継続することの重要性を指摘した。その上で、「日本として特使の活動を最大限支援していく」と述べ、今後の活動に期待を示した。
- 茂木外相は同日、中国で国家機密を海外に提供したなどとして、カナダ人のマイケル・スパバ氏が懲役11年の判決を言い渡されたことを受け、カナダのマルク・ガルノー外相と電話会談を行った。
- 両外相は、基本的人権の尊重や法の支配が、中国においても保障されることが重要だという認識で一致した。
- 茂木外相は水曜、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相と電話会談を行った。両外相は、日本側が要請した会談で、日露関係を今後とも着実に進展させていくべく、引き続き様々なレベルで意思疎通を図り、率直に議論を重ねていくことで一致した。
- 両外相は、平和条約交渉、北方四島における共同経済活動、四島交流等事業、経済、人的交流、安全保障等の二国間関係について議論を行った。
- UNICEFの8月1日時点のデータによると、直接他国へワクチンを無償提供する順位の中で、日本はアメリカと中国に次ぐ世界3位だ。日本が無償提供した1,162万回分のワクチンのうち、最多の334万回分が台湾に送られた。
6. 防衛関連ニュース
- 菅首相は、水曜に掲載された米誌ニューズウィークのインタビューで、日本の防衛費について、「GDP(国内総生産)の1%以内に抑えるというアプローチを取っていない」と述べ、日本を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、必要な予算を確保する考えを示した。
- また、首相は、台湾有事に関して、「沖縄を確実に守ることが、日本政府の非常に重要な目標だ」と語った。
- 岸信夫防衛大臣は、木曜に掲載された豪誌シドニー・モーニング・ヘラルドのインタビューで、米中間で変化する力の均衡が「非常に明確になった」と指摘し、台湾をめぐる軍事的な争いも「中国に有利な方向に大きく傾いた」と厳しい認識を示した。
- また、岸防衛相は、日本が提唱する自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、そして中国の影響力への対応として、オーストラリアのリーダーシップに期待を示した。
- 加えて岸氏は、「日本の防衛政策は特定の国を標的にしてはいない。だが、日本を取り巻く安全保障の環境が一段と厳しくなりつつあることを踏まえ、われわれは自身を守ることができるような構造を構築しなければならない」と強調した。
- 具体的な言明は避けたが、安全保障上の変化に対応するため、憲法改正が必要かどうかは国会次第だとした。
- 麻生太郎財務大臣は火曜、2022年度以降の予算編成での防衛費の増額について、「防衛費は絶対的なものでなくて相対的なものだ。相手の軍事費が伸びればそれに合わせて対応するのが当然だ」と述べ、理解を示した。
- また、麻生財務相は、「東・南シナ海、台湾海峡などの状況を考えた場合、対応しなければいけない。抑止力として当たり前の話だ」と語った。中国の2021年度の国防費は、1兆3553億元(23兆円程度)と日本の4倍ほどある。
- 防衛省は水曜、航空自衛隊F-2戦闘機の後継となる次期戦闘機を支援する無人機を開発する方針を固めた。
- 支援のための運用方法としては、次期戦闘機と離れた空域を飛行しながら、敵戦闘機・ミサイルの早期探知、ミサイル発射、電子攻撃を行うことや、敵ミサイルの「おとり」となることなどが想定される。
- 同省は、2020年度予算概算要求に関連経費を盛り込み、人工知能 (AI) による無人機の自律飛行技術の実現に向けた検討を加速させる方針だ。次世代戦闘機同様、2035年ごろの運用開始を目指している。
国内政治
7. 首相が長崎の平和祈念式典であいさつを読み上げる
- 菅首相は、長崎に原爆が投下されてから76年目となる月曜、平和記念式典に出席し、あいさつを読み上げた。
- 首相はあいさつの中で、「唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向けた国際社会の努力を一歩ずつ、着実に前に進めていくことは、我が国の変わらぬ使命です」と述べた。
- また、「被爆者の高齢化が進む中、被爆の実相を世代と国境を越えて広めていく重要性はますます高まっております。我が国は、被爆者の方々とも協力しながら、核兵器使用の惨禍に関する記憶を受け継いでいく取組を継続していく決意であります」とも述べた。
- 田上富久長崎市長は、先週の広島市長同様、平和宣言で、一日も早く、1月22日に発効された核兵器禁止条約に署名し、批准することを求めた。また、「核の傘」ではなく「非核の傘」となる北東アジア非核兵器地帯構想について検討をするよう求めた。
- 記念式典のあと、首相は長崎の被爆者5団体の代表と面会した。代表らは、広島原爆の投下後に降った「黒い雨」を巡る集団訴訟で、原告全員を被爆者と認める広島高裁判決が確定したことを踏まえ、国が定めた被爆地域外で原爆に遭った「被爆体験者」の救済を要望した。
- 首相は面会後の会見で、長崎地裁で被爆者健康手帳の交付に関する訴訟が係争中だとして、「行方を注視していきたい」と再度語った。原告側は、「被爆者」として認定され、医療給付が受けられる被爆者健康手帳を交付されることを望んでいる。
8. 経済状況
- 厚生労働省は金曜、2021年度の最低賃金が、全国平均で28円増の時給930円となったと発表した。また、7県では、国が示した引き上げ目安額28円を上回った。実際の引き上げは10月から適用される。
- 内閣府が火曜に公表した景気ウォッチャー調査によると、7月の景気の現状を示す指数は、6月を0.8ポイント上回り、2か月連続の上昇となった。同調査は、およそ2000人の小売店の従業員やタクシー運転手など、働く人たちに、3か月前と比べた景気の実感を聞いて指数にしている。
- 内閣府は、景気の基調判断を「新型コロナウイルスの影響による厳しさは残るものの、持ち直している」として据え置いた。
- 財務省は火曜、国債などの残高を合計した「国の借金」が6月末で、3月末比4.2兆円増、過去最大の1,220兆6,368億円に達したと発表した。新型コロナ対策用の歳出と増え続ける社会保障の支出により、借金依存が続いている。
9. 首相、オリンピックの成功をアピール
- 菅首相は月曜の記者会見で、日本は招致国としての責任を果たすことができたと評価した。
- 今週発表された複数の世論調査によると、日本人の過半数以上はオリンピックを開催して「よかった」と思っている:読売新聞 (64%)、朝日新聞 (56%)、TBS/JNN (よかった・どちらかと言えばよかったで61%)。
- 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、東京五輪・パラリンピックの経済効果について、仮設施設の整備費やグッズ売り上げなどで1兆6,771億円に上ると試算する。
- 大半の競技会場が無観客となり、チケット収入や観客の宿泊費など1,337億円の経済効果が失われた。
- 他方で、IOCのトーマス・バッハ会長が水曜、ニュースを賑わせた。中国新聞によると、広島県と市は、バッハ会長の広島訪問の警備費の全額379万円を折半する。IOCや東京五輪・パラリンピック組織委員会側に負担を求めたが受け入れられなかったという。
- バッハ氏は、広島県の平和記念公園と原爆資料館を訪問した。
選挙
10. 自民党総裁選、複数人が立候補か
- 自民党の下村博文政務調査会長は水曜夜に放送されたテレビ番組で、来月、党の総裁選挙を実施したうえで、衆議院選挙に臨むべきだという認識を示した。
- 同氏は、総裁選を実施し、自民党や『ウィズコロナ』の先の日本をどうしていくか、衆議院選挙の前に議論することについては同意すると述べた。
- 自民党の新潟県連は水曜、党の規程どおり、来月、総裁選挙を実施するよう党本部に申し入れた。
- 党の規定では、投開票は来月20日から29日までに行うことになっているが、党内には、あらかじめ総裁任期を短期間延長して、衆議院選挙のあとに総裁選挙を行うべきだという意見もある。
- 読売新聞は水曜、衆院選が迫る中、内閣支持率が低迷していることへの強い危機感により、自民党内で、複数候補による本格的な論戦を求める声が広がっていると指摘した。
- 平将明衆院議員(当選5回)は8月5日、ツイッターに「中堅・若手からも候補者を出したい」と投稿した。ただ、出馬には推薦人20人というハードルが立ちはだかる。派閥間争いや調整が行われる中、どうしても名の知れたベテランが推薦される傾向がある。
- 高市早苗前総務大臣は月曜、雑誌に論文を寄せ、立候補に意欲を示した。高市氏は、「『美しく、強く、成長する国』を創るため国家経営のトップを目指し、『日本経済強靱(きょうじん)化計画』を実行したい」と訴えている。同氏は、無派閥であるが、安倍晋三前総理とは近しい間柄だ。
- 高市氏以外では、岸田文雄元政務調査会長、下村政調会長、野田聖子幹事長代行、河野太郎規制改革担当大臣、茂木外務大臣、石破茂幹事長が立候補する可能性がある。
- 河野氏に至っては、先週水曜、自身が著者である発売予定の本についてツイートしている。過去には、選挙前に本を発売し、それをマニフェスト代わりにした候補者もいる。直近では、岸田氏が前回総裁選のわずか3日前に本を発売している。
- 朝日新聞は金曜、常に世論調査の次期総理に相応しい政治家で上位に食い込む石破氏が立候補するかは不透明だと報じた。同氏は、8月4日のラジオ放送で、「菅さんのもとで一生懸命やって、国民の審判を仰ぐのも一つの考え方だ」と述べている。
- 自民党の最大派閥・細田派会長の細田博之元幹事長は月曜、総裁選挙で菅総理大臣の再選を支持する意向を示した。
11. 衆院選関連ニュース
- 今回の衆院選で注目は、若い世代がどう投票するかだ。
- 過去の日経新聞の世論調査によると、安倍元総理や菅総理は30代以下では高い支持率を得ている。
- 菅首相は、30代以下の58%から支持されていて、最も支持率が低い60代以上では46%から支持を得ている。
- 野党側では、最近、共産党が選挙協力に向け動きを見せない立憲民主党にしびれを切らしていると報じられた。
- 共産党は、7月の東京都議選後に協議を始めると想定していたが、立憲は一度も協議を行おうとしてこなかった。
- 立憲の枝野幸男代表は、保守層の離反や、共産党との共闘に否定的な連合の意向を汲み、呼びかけをできていない側面がある。
- 結果、共産は腰の重い立民を刺激するかのように、都議選以降、新たに4人の候補を、立憲の現職にぶつける形を含めて擁立した。
その他の注目すべきニュース
- 横浜市長選挙は8月22日に実施: 8月22日投開票の横浜市長選挙は、日曜に告示された。この選挙は、菅首相のお膝元である神奈川県(秋田出身・神奈川県から当選)で実施されることもあり、例年以上に注目されている。首相は先月、候補者の1人である自民党の小此木八郎元国家公安委員長を全力で応援すると表明した。最近公表された朝日新聞の世論調査によると、小此木氏が、4選を目指す現職の林文子氏を含む候補者8名の中では、わずかに先行している。ただ、同調査で示された通り、横浜市での内閣支持率は29%と(不支持は53%)、首相の支持が小此木氏にとって必ずしも追い風になるとは限らない。また、自民党は先月、小此木氏が選挙で自民推進のIR計画に反対する方針であることを受け、自主投票を決めた。それでも、現時点で、自民党市議会議員36人中30人が小此木氏を支援すると決めている。小此木氏のIR誘致に関する立場は、IRの経済効果を期待する現職の林市長とは真逆だ。このIR誘致は、同・朝日新聞調査によれば、4割の回答者が投票する際、最も重視することだ。この点を考えれば、IR誘致に関する考え方が大きな分かれ目になると思われる。誘致自体、68%が反対していることもあり、全体的に不人気であることがわかる。小此木氏と林氏以外では、立民・共産・社民が擁立・支援し、IR誘致に反対する元大学教授の山中竹春氏が有力候補とされている。その山中氏だが、朝日新聞の世論調査が小此木氏をやや優勢とする一方、自民党のある調査では、同氏が先行しているとされている。理由としては、選挙の争点が、地方の限定的な話題であったIR誘致から、全国的な話題である菅内閣の新型コロナ対応に変わったからとみられている。そのため、すでに国政選挙で3連敗、地方選でも敗北が目立っている菅首相としては、この市長選での勝利は衆院選・総裁選を前の弾みとなりうる。ただ、「地元」での敗戦は、党総裁としての終わりの始まりになる可能性さえある。
- 出入国在留管理庁、スリランカ人女性の死亡時の不備を認める: 出入国在留管理庁は火曜、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人の女性が死亡した件について、対応に問題がなかったか調査を行った際にまとめた最終報告を公開し、その中で、適切な治療を行う体制が不十分だったと認めた。最終報告の結果、名古屋出入国在留管理局の局長をはじめとする4名の幹部が訓告や厳重注意の処分となった。調査は同管理局の収容所で3月、スリランカ人の女性、ウィシュマ・サンダマリさんが死亡したことで行われた。ウィシュマさんが体調不良を訴え、医療機関での診察や点滴を求めたものの、職員が笑いながら対応をしなかったことなどが明らかになった。また報告では、体調不良を知っていながらも、局長に報告せず、現場の職員だけで治療が必要ないと判断するなど、内規に違反した運用を行っていたと指摘された。これに加え、施設内にある診療室の医師や看護師は非常勤のため、死亡した当日は不在で、ウィシュマさんの容体が悪化しても職員だけで対応するなど、医療体制が整っていなかったとしている。さらに、職員が、一時的に施設の外で滞在することを求める申請を速やかに認めなかったことも指摘されている。出入国在留管理庁は今後、体調不良を訴えた人には、積極的に認めることや、医療体制の改善を行うとしている。さらに、再発防止に向けて常勤の医師の配置や外部の医療機関との連携を通じて、医療体制の充実に取り組む方針だ。また、最終報告が公表された後、上川陽子法務大臣は火曜、遺族と面会し謝罪した。遺族は同日、部分的に開示された、収容中の様子を記録した監視カメラ映像を確認した。ウィシュマさんの母と妹は、「動物のように扱っていた」とし、その上で、施設職員の対応に外国人に対する差別を感じたと訴えた。遺族は、幹部らの処分の甘さを批判しており、全ての映像・データを開示するよう求めている。ウィシュマさんの死は、与党が成立を目指している、逃亡のおそれが低い場合などには施設に収容せず、親族などのもとで生活することを認める出入国管理法などの改正案の行方に影響を及ぼしている。政権・与党は、不法滞在などにより国外退去を命じられた外国人が帰国を拒否して施設での収容が長期化している問題を是正するためにも、改正案の成立を急いできた。ことし1月のデータによれば、日本に不法に滞在している外国人は8万2,868人と、この5年間で2万人以上増えている。野党側は、ウィシュマさんの死の真相が解明されるまで、出入国管理法改正案は成立させない構えだ。実際、5月には、与党側が映像の開示を拒否したのに対し徹底抗戦し、改正案を棚上げさせることに成功した。今回も野党側は、5月同様、出入国管理制度の改善には、ウィシュマさんの死の真相に辿り着く必要があるとして、施設内での様子などを写した映像の開示と、国会での閉会中審査を速やかに行うことを要求した。
II. 世論調査
- 今週は各社世論調査が出揃った:
支持 (%) | 不支持 (%) | |
NHK | 29 (-4) | 52 (+6) |
TBS/JNN | 33 (-10) | 64 (+9) |
朝日新聞 | 28 (-3) | 53 (+4) |
読売新聞 | 35 (-2) | 54 (+1) |
時事通信 | 29 (±0) | 48 (-2) |
- 月曜に公表された読売新聞の世論調査では、菅内閣の支持率は35%(7月から2%減)、不支持は54%(1%増)だった。
- 回答者の38%は内閣を支持しない理由として、首相に指導力がないことを挙げ、24%は政策に期待できない、18%は首相が信頼できないと答えた。
- 回答者の48%は菅首相に今年9月の自民党の総裁任期まで首相を続けてほしいとし、21%は1・2年くらい、18%はすぐに交代してほしい、8%はできるだけ長く続けてほしいと答えた。
- 自民党議員の中で次の首相に最も相応しいのは:
- 石破茂 (19%)、河野太郎 (18%)、小泉進次郎 (17%)、いない (15%)、安倍晋三 (10%)、岸田文雄 (4%)、菅義偉 (3%)、野田聖子 (2%)、加藤勝信 (1%)、高市早苗 (1%)、茂木敏充 (1%)、下村博文 (0%)
- 回答者の31%は政府のこれまでの対応を評価するとした一方、63%は評価しないと答えた。
- 回答者の38%は政府のワクチン接種の対応を評価するとした一方、58%は評価しないと答えた。
- 回答者の84%はこの夏、旅行は控えるとし、9%は近場へ旅行する、6%は都道府県をまたいで旅行すると答えた。
- 回答者の64%は東京オリンピックが開催されてよかったと思うとした一方、28%はよかったと思わないと答えた。
- 回答者の61%は無観客でよかった、25%は中止した方がよかった、12%はもっと観客を入れた方がよかったと答えた。
- 回答者の55%は東京オリンピックが、菅首相が掲げた「安心安全」な形で開催できなかったと思うとした一方、38%はできたと思うと答えた。
- 回答者の57%はオリンピックを今後も日本で開催してほしいと思うとした一方、38%は開催してほしくないと思うと答えた。
- 次の衆議院選挙の比例代表選挙では、どの政党に投票するかという質問に対しては:
- 自民党 (37%)、決めていない (24%)、立憲民主党 (12%)、公明党 (6%)、日本維新の会 (6%)、共産党 (5%)、国民民主党 (1%)、社会民主党 (1%)、れいわ新撰組 (1%)
- 世論調査は各政党の支持率に関するデータも集計している。
政党名 | 支持率 (%) |
自民党 | 32 (-4) |
公明党 | 3 (-1) |
立憲民主党 | 5 (±0) |
日本維新の会 | 2 (±0) |
国民民主党 | 0 (-1) |
日本共産党 | 3 (±0) |
社会民主党 | 0 (±0) |
れいわ新撰組 | 0 (±0) |
支持政党なし | 49 (+6) |
Image: Captain76 (CC BY-SA 3.0)
完。