I. 今週のニュース
新型コロナ
新型コロナ情報 (基本毎日更新):
- 緊急事態・蔓延防止等に関する情報: 内閣官房、「緊急事態宣言」、https://corona.go.jp/emergency/
- ワクチン接種等に関する情報: 首相官邸、「新型コロナワクチンについて」、https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
- 世界の接種状況の比較: 「チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は」、日本経済新聞、https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
- 都道府県ごとの新規感染者数: 「特設サイト: 新型コロナウイルス」、NHK、https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/
- 東京の新規感染者数・病床使用率: 東京都、「都内の最新感染動向」、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
1. 9県で緊急事態宣言の延長
- 菅首相は金曜、現在9県で発令中の緊急事態宣言を6月20日まで延長すると発表した。
- また首相は、埼玉、千葉、神奈川、岐阜、そして三重で発令中の蔓延防止等重点措置も6月20日まで延長し、群馬、石川、熊本を6月13日をもって措置下から外すと述べた。
- 首相は全国的に新規感染者数が減少に転じているとした一方、依然として高い水準で医療逼迫を起こしている地域もあるとした。水曜には全国の重症者数が過去最多の1,294人だった。首相はワクチン接種によってさらなる減少が期待できるとしている。
- 現在の1日あたりの接種回数は、菅総理が高齢者の接種を7月末までに完了するために設けた目標の100万回を大いに下回る40万回から50万回だ。総理は来月中に高齢者の接種を終えた自治体で一般接種が開始されると述べた。
- 東京都では、今回の延長期間中、飲食店に向けた規制をそのまま続ける一方、大規模商業施設(デパートなど)や映画館については休業から時短営業へと一部緩和するとしている。
- 政府は新型コロナにより生活が困窮した世帯の、上限額に達するなどして新たに特例貸し付けが受けられなくなった人に向けた新たな支援金をつくることを検討している。
2. 変異株感染が広まる
- 厚生労働省は水曜、インド変異株が月曜までに7都道府県で29人確認されたと発表した。5月21日に公表した11人から18人増加したことになる。
- 火曜の報道によれば、連絡手段の問題により、厚生労働省はインドなどからの帰国者と、隔離期間中に連絡が取れなくなるケースが相次いでいる。帰国者は隔離期間中、所在地や健康状態の申告や、当局から要請された場合はビデオ通話に応じることが求められている。
- 問題の原因は複数のアプリの使用だと見られている。ワッツアップを使用している人の中には申告を行っているにも関わらず警告されるケースが複数報告されている。当局はワッツアップ以外の手段で連絡を行い、返事がこない場合、指示に従っていないと判断することもあるという。
- 政府によると、報告もせず、連絡が取れない人が1日あたりおよそ100人いる。連絡が取れないケースが相次いでいることから、何日間も連絡が取れないなど悪質と判断された事例のみ氏名を公表する方針だ。
- 政府は変異ウイルスの対策として、インドなどからの入国者について、入国後14日間の隔離期間のうち10日間は国が指定した施設で待機するよう求める。当初6日間だったこの措置だが、今後は3日目と6日目、それに10日目に行う検査で全て陰性の場合、施設での待機が解除される。
- さらに政府は、新たにカザフスタンとチュニジアについて、入国後3日間国が管理する施設で待機を求める対象国に追加した。これらの措置は金曜から適用される。
3. ワクチン接種の進捗
- 田村憲久厚生労働大臣は金曜、ファイザー製ワクチンの接種の対象年齢について、早ければ今月末にも12歳以上への引き下げが認められるとの見解を示した。
- 茂木敏充外務大臣は木曜、ワクチンへの公平なアクセスを鑑み、台湾への提供も検討する考えを示した。台湾は同日、海外の製薬会社からのワクチンの調達が中国の妨害でさらに難しくなっていると主張していた。
- 文部科学省は木曜、全国の大学にワクチン接種のため、キャンパスを提供できるかどうか意向を調査したところ、およそ300の大学が協力すると回答したと発表した。政府は大学のキャンパスを65歳以上の高齢者、そしていずれ大学生・大学関係者用の接種会場にすることを検討している。
- 厚生労働省は火曜、モデルナ製のワクチンを使用して、職場での従業員向けの接種を開始する方針を明らかにした。具体的な開始日時は未定だが、産業医や外部の医療機関などを活用しワクチン接種を拡大する狙いがある。
- 政府は火曜、ワクチンの打ち手として約6万4,000人の救急救命士と約20万人の臨床検査技師を活用する方針を示した。これに加えて政府は、薬剤師や放射線技師に接種後の経過観察をしてもらいたいとしている。
- 政府は医療機関や診療所での接種を進めるため、新たな財政支援も発表した。現在すでに支払われている接種費用に加え、7月末までに1週間に100回以上の接種を4週間以上行った場合は2,000円、150回以上の場合は3,000円を支払うことにしている。
- また、接種を行う医療機関を増やすため、1日に50回以上のまとまった接種を行った場合、1日当たり10万円を交付し、これを7月末までに一定の日数以上行えば、医師には1時間当たり7,550円、看護師などには2,760円を医療機関に交付するとしている。
- 政府関係者は月曜、政府がアストラゼネカ製のワクチンを国際枠組みCOVAXを通じて途上国に提供する検討に入っているとした。ただ、政府の中には稀に血栓が生じるこのワクチンを海外へ提供することに対して慎重な意見もある。厚生労働省は先週アストラゼネカ製を承認したが、使用は当面見合わせている。
- 自民党の下村博文政務調査会長は月曜、加藤勝信官房長官と面会し、ワクチン接種の加速に向けた提言書を手渡した。提言書では、余ったワクチンを無駄なく使うため、誰に接種してもいいというルールを改めて周知するべきだとしている。また、提言は首長の先行接種を容認することも盛り込んでいる。
- 読売新聞は土曜、政府が国産ワクチン開発を後押しするための基金を創設すると報じた。基金は、医学や医療の研究費の配分を担う日本医療研究開発機構に設置される予定だ。日本の感染症分野の研究開発予算は年間約70億円で、アメリカの100分の1程度にしか届かない。
4. 大規模接種センターでの接種開始から1週間
- 河野ワクチン接種担当相は先週、全国30の自治体が大規模接種センター設置に前向きな姿勢を示していると述べた。群馬県知事は木曜、菅総理に県で7月接種開始を目標にした2つ目の大規模センターを設置すると報告した。
- 東京都23区の高齢者は5月17日に予約が始まり、5月24日から30日まで接種でき、東京都全体は5月24日に予約、5月31日に接種が始まり、東京圏(神奈川、千葉、埼玉)は5月31日に予約、6月7日に接種が始まる。
- NHKは水曜、都の中で人口密度が高い部類に入る世田谷区において、高齢者のおよそ20%が区の接種会場と大規模接種センターで「二重予約」をしたままであると報じた。政府は二重予約によって貴重なワクチンが無駄になるとしている。
- 防衛省は火曜、東京の大規模接種センターの5月31日から6月6日分の予約について、7万回分のうち約3万7000回分の申し込みがあったと発表した。大阪では、3万5000回分の枠がすでに埋まっている。
- 岸信夫防衛大臣は火曜、東京と大阪会場で月曜、計38人の自衛官と民間スタッフが余ったワクチンを接種したと明らかにした。設置初日の月曜には両会場で合わせて7,348人がワクチン接種を受けた。
- 菅総理は週末、プロ野球・巨人の山口寿一オーナーと面会し、山口氏は、東京ドームをワクチンの接種会場として文京区と新宿区に無償で提供することを検討していると説明した。
外交・防衛(安全保障)
5. 日・EU首脳協議
- 菅総理は木曜、EUとの定例首脳協議を行い、気候変動、ワクチン、自由で開かれたインド太平洋を達成するための協力などについて話し合った。
- 協議後の共同声明では、新型コロナパンデミックからの回復、気候変動に関する取り組み、貿易やインフラに関するパートナーシップ、自由で開かれたインド太平洋に向けた取り組み、中国や北朝鮮などの地域情勢について触れている。さらに、台湾海峡の平和と安定の重要性についても初めて明記した。
- 協議の大きな成果は「日EUグリーン・アライアンス」の立ち上げだ。双方は、エネルギー移行、イノベーション、途上国の脱炭素移行支援など多様な分野で協力を進め、日EUで気候変動対策、環境対策の取組を加速し、国際社会をリードしていくことで一致した。
- ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は協議後、ワクチンについて、EUが日本向けに人口の40%相当が接種できる1億回分以上の輸出を許可したと明らかにした。
- フォン・デア・ライエン欧州委員長は6月2日に日本政府とGaviが共催するCOVAXワクチン・サミットに出席する予定だ。
6. 日米関係
- 加藤官房長官は木曜、日本がバイデン米大統領が指示した新型コロナの起源解明に向けた追加調査に関して必要な対応を取りたいとし、協力する意向を明らかにした。バイデン大統領は水曜、政府情報機関に新型コロナの起源に関するレポートをまとめるよう指示した。
- 米インド太平洋調整官カート・キャンベル氏は水曜、中国の台頭を考慮し、インフラに焦点を当てた対面の日米豪印(クアッド)首脳会談を秋に開催することを検討していると明らかにした。バイデン大統領も3月、民主主義国家を集め、中国の一帯一路に対抗する枠組みをつくるべきだとイギリスのジョンソン首相に提案している。
- 船越健裕アジア大洋州局長は月曜、ソン・キム米国北朝鮮担当特別代表と電話で協議した。船越局長から北朝鮮担当特別代表の就任について祝意が伝えられた後、今後対北朝鮮政策を進めるにあたって日米、日米韓で引き続き緊密に連携していくことで一致した。
- 疾病予防管理センター(CDC)はワクチン接種を完了している人でも一部の変異株に感染、あるいは感染を拡大させるリスクがあると警告している。
- ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は火曜、政府は渡航勧告を出したが、オリンピック・パラリンピック開催への支持は変わらないとした。報道官は政府が2ヶ月後に開幕する大会を支持すると表明した。
7. 外交関連ニュース
- 菅総理は金曜、イギリスのジョンソン首相と電話で会談し、世界の脱炭素化、ワクチンの公平なアクセス、自由で開かれたインド太平洋の達成などに向けて連携して取り組むことで一致した。
- 茂木外相は金曜、クリスティン・バーグナーミャンマー担当国連事務総長特使と会談し、ミャンマー情勢について意見を交わした後、ASEANの事態打開のための努力を引き続き共に支援していくことと、今後もミャンマー情勢をめぐって緊密に連携していくことで一致した。
- また茂木外相は同日、政府がイスラエルとパレスチナの武装勢力との間で続いた激しい攻撃の応酬で深刻な被害が出ているガザ地区の住民に医療物資や食料などを送るため、最大1,000万ドルの無償支援を行うと発表した。
- また茂木大臣は、政府がインドに対し、先に表明した55億円の無償支援の一環として、人工呼吸器1,000台、酸素濃縮器2,000台を供与すると発表した。
- 茂木大臣と梶山弘志経済産業大臣は5月27日と28日の2日間、オンラインで開催された第2回G7貿易大臣会合に出席した。
- 共同声明では、WTO改革、貿易と保健、デジタル貿易、公平かつ確保可能なワクチン供給や貿易と気候変動について明記がある。声明は中国を名指ししなかったが、一部の国による産業補助金などによる不公正な競争に懸念を表明した。
- 森健良外務審議官は水曜、自らが共同議長を務める第36回日ASEAN(東南アジア諸国連合)フォーラムに参加した。この次官級会合では、自由で開かれたインド太平洋の実現やASEAN感染症対策センターの設立等に向けた協力について意見交換を行ったほか、東シナ海・南シナ海、北朝鮮、ミャンマー情勢を含む地域情勢についても議論が行われた。
- 茂木大臣は木曜、パレスチナの外相と電話会談した。同氏は水曜、ヨルダン、イスラエル、ブルネイそれぞれの外務大臣とも電話会談した。パレスチナ、ヨルダン、そしてイスラエルの外相とはイスラエル・パレスチナをめぐる情勢について意見交換をした。ブルネイの外相とはミャンマー情勢について意見交換をし、ワクチンのコールドチェーン構築のため、80万ドルの支援を行うと伝えた。
- 茂木大臣は火曜にもエリザベス・トラス英国国際貿易大臣と電話会談を行った。両者は近く予定されているG7貿易大臣会合について話し合い、英国のTPP11への加入申請を含む二国間経済関係等についても意見交換をした。
- アメリカ、オーストラリアと日本の対台湾窓口機関は火曜、台湾の世界保健総会へのオブザーバー参加を訴える共同声明を公表した。
- 共同声明で、米国在台協会、豪州弁事処及び日本台湾交流協会は台湾がWHOのフォーラムや技術会合に有意義な形で参加を果たすことは、台湾に住む人々や世界にとっても有益となるとしている。今回のパンデミックが台湾のコロナ対応能力の高さを浮き彫りにしたとも主張している。
- この共同声明は台湾が5年連続で定例の世界保健総会への参加を見送られたわずか1日後に公表された。
- 菅首相は火曜、シンガポールのリー・シェンロン首相と電話で協議し、ワクチンへの公平なアクセスの確保に全力で取り組むと述べた。リー首相は、東日本大震災以来続いてきた日本産食品に対する輸入規制を完全撤廃すると表明した。
8. 防衛関連ニュース
- 水曜、福島県いわき市の塩屋埼灯台沖約120キロの海域を航行していた海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」から、乗組員1人が行方不明になっていると通報があった。乗組員は海中に転落した可能性があり、海上保安庁の巡視船や「ひゅうが」が捜索している。
- 岸防衛大臣は火曜、プラユット・チャンオチャタイ王国首相(兼)国防大臣とテレビ会談を行った。両者は、最近の東シナ海・南シナ海や航行及び上空飛行の自由の重要性を含む地域情勢について意見交換をした。両者は防衛協力・交流を引き続き強力に推進していくことで一致した。
- 英海軍の空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群は土曜、地中海、インド洋やフィリピン海などを航行する記念すべき初航海に向けて出航した。クイーン・エリザベスは日本など複数の国へ寄港する予定。
- イギリスは今回の航海で日米豪などのパートナーと連携し、中国を牽制する狙いがある。また、この航海はインド太平洋地域への関与を強化する一環であり、自由で開かれたインド太平洋など、共通の価値観を共有するパートナーたちと共に行動することが意味を持つ。
- 陸上自衛隊は土曜、63回目の「富士総合火力演習」を静岡県の東富士演習場で行った。国内最大級の実弾射撃訓練では自衛隊員2,300人がおよそ2時間で弾薬約43トン(7億8,000万円相当)を使用した。無人偵察機UAVなどの最新技術も初めて登場した。
国内政治
9. 国会
- 立憲民主党の枝野幸男代表は金曜、今年度補正予算の編成など、新型コロナ対策を迅速に進めるため、来月16日までの国会の会期を延長すべきだという認識を示した。
- 与党と一部野党は金曜、衆院内閣委員会で安全保障上重要な土地の利用を規制する法案を強行採決に持ち込み、可決した。
- また自民党は、体が不自由な人などに限定している郵便投票の対象を、海外から帰国して施設などで待機している人に拡大することも検討している。
- 菅政権が掲げる2050年までの脱炭素社会の実現を明記した改正地球温暖化対策推進法が水曜、参院本会議で可決、成立した。来月4月に施行予定。
- 脱炭素目標を法律に位置付けて官民が長期的に取り組むことを示し、投資を促す狙いもある。法案には、自治体が再生可能エネルギーの積極導入を後押しする「促進区域」を設ける制度や企業が計画書の提出と地域レベルの排出量の報告を義務的に行うことなどが明記されている。
- 衆議院は火曜、教員による児童や生徒へのわいせつ行為をなくすための法案を可決した。法案は、今月中にも可決・成立する見通し。
- この法案は、わいせつ行為で懲戒免職となり教員免許を失効した人に、再び免許を与えるかどうかを各都道府県の教育委員会で判断できるようにすることや、教員免許を失効した人のデータベースを国が整備することな度を盛り込んでいる。
- 立憲民主党の福山哲郎幹事長は月曜、放送関連会社の東北新社が総務省幹部接待問題で54件の会食を確認したとする報告書を公表したことについて、どの程度、菅首相の長男が関わっていたのか確認したいと述べ、今後の国会審議で追及する考えを示した。
- 立憲民主党は海上保安庁の体制を強化するための法案を、今国会に提出する方針だ。これらの法案は尖閣諸島周辺で、中国海警局の船の領海侵入があとをたたないことや、海警局に武器の使用を認めた「海警法」が施行されたことを踏まえて提出される。
- 法案は、船舶をはじめとする装備を着実に拡充させるため、5年ごとの装備計画を策定するよう国に求めている。これとは別に、海上警備行動の発令に備えて、自衛隊があらかじめ海上保安庁の船舶周辺などで待機できる「警備準備行動」を設ける法案も検討している。
- 今週国会では、3年前に成立した改正公職選挙法の条文の誤りを正した改正案が成立した。先月、参議院法制局が2年以上、電子メールによる投票の依頼などに関する罰則の記載の誤りを放置していたことがわかった。
- また、国会では放送番組をインターネットで同時に配信する際に必要な、権利処理の手続きを簡略化することなどを盛り込んだ改正著作権法が成立した。
10. 経済状況
- 帝国データバンクが金曜に更新したデータによると、新型コロナ関連倒産は全国で1513件判明している。業種別上位は飲食店、建設・工業、ホテル・旅館となった。
- 総務省が金曜に公表したデータによると、先月の全国の完全失業率は2.8%で、前の月と比べて0.2ポイント高く、4か月連続で2%台となった。
- 政府は火曜の経済財政諮問会議で、6月に策定する経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の骨子案を示した。骨子案は、グリーン社会実現、デジタル化加速、地方創生と子育て支援の四つを経済成長の原動力と位置付けた。
- 野村総研が火曜に公表したデータによると、緊急事態宣言による経済損失はオリンピック中止の損失をはるかに上回る。今まで3回の緊急事態宣言による経済損失は約2兆円から6兆円とされている一方、オリンピック中止による損失は1兆8,108億円と計算されている。
11. エネルギー政策
- 公明党は木曜、水素や太陽光発電などを主力電源と位置づけ、将来的に原子力発電に依存しない社会を目指すべきだとする提言をまとめた。
- 週の前半には、自民党の総合エネルギー戦略調査会が原発のリプレース(建て替え)や新増設の推進を今夏にも改定されるエネルギー基本計画に盛り込むよう求める提言案をまとめた。これとは別で、党エネルギー推進本部が原発の早期再稼働や新増設を求める緊急決議をまとめている。
- 経済産業省は火曜、原子力発電所で一度使った核燃料から取り出したプルトニウムで作るMOX燃料を再処理する技術を2030年代後半をめどに確立することを目指すとし、電力各社に研究開発への協力を求めた。
- 経産省は火曜、この夏の電力需給が首都圏や関西圏など多くのエリアで、老朽化した火力発電所の休止や廃止による供給力の減少を要因に、ここ数年で最も厳しくなる見込みだと発表した。電力供給の余力を示す呼び率は、安定供給に最低限必要とされる3%をかろうじて上回るとされている。
- 政府は、輸出先の国が脱炭素化への取り組みを進める中でコストが安い石炭火力発電を当面は利用せざるを得ない場合や、導入する設備が日本の最先端技術を活用した環境性能がトップクラスのものに限定しているなど、日本が輸出を支援する際の条件を説明した。
12. 大会開催に懸念が残る中、政府は準備を粛々と進める
- 菅首相は金曜、緊急事態宣言下でも野球やサッカーは試合を行なっているとし、オリンピックも国内観客を入れて開催することに意欲を示した。
- 組織委員会の橋本会長は金曜、緊急事態宣言の再延長を受け、大会時の観客制限の判断を先送りする意向を明らかにした。これまでは、6月の早い時期には観客上限の方針を判断するとしていた。
- パウンド氏は火曜、菅首相が中止を求めても、大会は開催されると述べた。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は同日、最優先事項は、全員にとって安心で安全な大会を運営することだと発言した。IOCのジョン・コーツ調整委員長も先週、バッハ会長同様、緊急事態宣言下でも大会は開催すると述べた。
- 立憲民主党の枝野代表は日曜、医療体制が確保できなければ中止にせざるを得ないと発言した。枝野氏はさらに、大会は命を犠牲にしてでも開催すべきものではないとした。この発言は、バッハ会長が大会実現のために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけないと述べたことを受けたもの。
- 共産党の志位和夫委員長も今週、IOC幹部が大会中止に否定的な発言を繰り返しているとして、「日本をIOC帝国の植民地扱いする発言だ」と強く反発した。
- 政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長は水曜、パブリックビューイングなど大会関連のイベント開催によって人の流れが増えることが懸念されると発言した。
- 東京大学の研究チームによると、大会期間中に、人流が6%増えると、10月の第2週には1日の感染者数は1,601人となり、五輪が行われなかった場合と比べて、781人増えるという結果になった。
- 尾身会長は金曜にも、変異ウイルスが国内に流入するリスクもあるとして、大会関係者を含め、海外からの訪れる人をできるだけ少なくする必要があるという考えを示した。現時点で組織委員会は、選手団などでは削減に成功したものの、IOC・IPC 関係者や各地域の委員会関係者は削減できていない。
- 他方で、オリンピックの選手団第一号はオーストラリアから6月1日に来日する予定だ。日本オリンピック委員会は同日、日本代表選手へのワクチン接種を開始する方針を明らかにしており、最終的には7月23日までに計1600人の選手、コーチや職員の接種を完了する見込みだ。
- ワクチンについて丸川大臣は火曜、ファイザーから日本選手団と大会関係者を含め、およそ2万人分のワクチンを無償で提供されると明らかにし、審判などへの接種も調整する考えを示した。また岸防衛大臣は、大規模接種センターの人員を減らさないことを前提に、大会に自衛隊の医官・看護官の派遣を調整していることを明らかにした。
13. その他関連ニュース
- 自民党の佐藤総務会長は金曜、LGBTなど性的少数者をめぐる理解増進法案の今国会への提出を断念する意向を示した。党内では、同法案について保守系議員から否定的な意見が続出し、党内手続きが難航していた。
- 武田総務大臣は金曜、富士通の情報共有ソフトに不正アクセスがあった問題を受け、同社に対してセキュリティー対策の徹底を求めたことを明らかにした。
- 国土交通省は水曜、省の職員や業務でやり取りのある関係者少なくとも7万6000件のメールアドレスが流出したと報告した。富士通が開発した「ProjectWEB」と呼ばれる情報共有するソフトは官公庁や企業などで幅広く使われている。
- 厚生労働省は火曜、過労死を防ぐ国の施策をまとめた「過労死防止大綱」の最終案を提示した。案では、仕事を終えてから次に働き始めるまでに一定の休息時間を確保する勤務間インターバルの導入企業の割合を2025年までに15%以上に引き上げる目標をあげた。2020年1月の時点で導入している企業は4%にとどまった。
- 総務省は火曜、携帯電話の利用料金の安さを世界6都市で比べると、東京は3月時点でロンドンに次ぎ2番目に安い2,973円になったと発表した。昨年3月時点の8,175円に比べると、大きな減少だ。
- 自民党の林幹雄幹事長代理は月曜、参院選広島選挙区をめぐる公職選挙法違反事件で買収原資になったと指摘されている党本部からの1億5,000万円について、特定の人物ではなく党が決定したと述べた。
- この発言は同氏所属の派閥トップでもある二階俊博幹事長が同日、決定の責任は自分と当時総裁であった安倍晋三氏にあると述べたことを受けて発せられた。河井氏はこの事件後に起訴された。今でも党本部からの資金が買収に使用されたという噂は後を絶たない。
- 高橋洋一内閣官房参与は月曜、ツイッターに新型コロナの国内の感染者数を「さざ波」、緊急事態宣言を「屁みたいなもの」などと投稿し、批判されたことを受け、辞職した。
- 読売新聞は土曜、東京地検特捜部が選挙区内の行事で主催者側に現金を提供していた疑いが浮上した前経済産業相の菅原一秀議員について、公職選挙法違反で略式起訴する方針を決めたと報じた。違法な現金配布は約50万円に上るといい、特捜部は一度は不起訴とした香典提供分も略式起訴の対象に含める見通しだ。罰金以上の刑が確定すれば失職する。
選挙
14. 解散総選挙に向けての準備が進む
- 自民党と立憲民主党は水曜、菅総理と野党党首による党首討論を6月9日に開催することで合意した。党首討論の開催はおよそ2年ぶりで、菅内閣の発足後、初めてとなる。党首討論では、新型コロナ対策やオリンピックの開催の是非などについて、論戦が交わされる見通しだ。
- 安倍晋三前首相は水曜に発売された月刊誌のインタビューにおいて、菅総理の後任候補として茂木敏充外務大臣、加藤勝信官房長官、下村博文政務調査会長、岸田文雄前政務調査会長の名前を挙げた。
- 最近、安倍前首相の表舞台復帰が取り沙汰されており、その存在感が増していることは疑いようがない。自民党の保守派からは再々登板が期待される中、前首相はキングメーカーとして影響力を行使する狙いがあるという見方もある。
- 自民党の有志議員は火曜、全国の公立小学校へのスクールバス導入を目指す勉強会の会合を開いた。選挙を前に、世論の関心が高い子ども政策で党の積極姿勢をアピールするのが狙いのようだ。
- 時事通信は月曜、党で新たに設立された半導体に関する議員連盟が麻生派と二階派の対立の火種になる可能性があると報じた。議連は麻生派の甘利明氏が会長を務め、安倍前首相と麻生太郎副総理兼財務大臣は最高顧問に就任した。
- 議連には二階派の幹部が名を連ねていない。麻生氏などが安倍氏側との結束をアピールし、菅首相の後ろ盾として存在感を増す二階幹事長をけん制する狙いがあるという見方がある。さらに、今後二階氏の交代を求める声が党内でくすぶることも念頭にあるという見方もある。
- 立憲民主党の枝野代表は日曜に放送されたテレビ番組で、来たる衆議院選挙においてできるだけ野党候補を一本化していく考えを示した。また枝野氏は、共産党との連立政権には参加しないとしている国民民主党との連立政権を目指すことを考えていると述べた。
15. 各地方選挙に向けての準備が進む
- 7月4日投開票の東京都議会選挙まで残り1ヶ月程となった。衆議院選挙を見据えたこの選挙では小池都知事を支える都民ファーストと自民・公明両党が対峙する。選挙戦では新型コロナ対策やオリンピック・パラリンピックの開催などをめぐって論戦が交わされる見通しだ。
- 都民ファーストの会が第1党の立ち位置を維持できるかや、自民党と公明党で過半数を獲得できるかなどが焦点となる。公明党は前回選挙で都民ファーストと選挙協力を行なったが、今回は自民党と協力することにした。
- 現職の川勝平太静岡県知事は月曜、7月20日投開票の県知事選挙を前にマニフェストを発表した。リニア問題が注目されるこの選挙は川勝氏と自民党が推薦する岩井茂樹氏の一騎打ちとなる。
- JR東海はリニア中央新幹線を2027年に開業させたいと考えていた。しかし、川勝知事はこれに反対し、自然環境の問題が解決されるまでは建設を許可できないとした。
- 南アルプスを貫くトンネルができれば、大井川沿いの水量に変化が生じ、地元の民家や茶畑への影響が出かねないとの懸念もある。
- リニア中央新幹線は2011年に国土交通省がJR東海に建設を指示した。2年後には安倍政権からJR東海に総工費9兆円とされる事業のために3兆円の財政投融資がされた。
その他の注目すべきニュース
- 愛媛県沖合で衝突事故ー船員3名行方不明: 木曜、愛媛県今治市の沖合でおよそ1万1,000トンの貨物船「白虎」とおよそ2,700トンのケミカル船「ULSAN PIONEER」が衝突したと通報があった。海上保安部によると貨物船は転覆し、乗組員12人のうち9人が救出された一方、3人の行方がまだわかっていない。ULSAN PIONEERに同乗した韓国籍とミャンマー籍の計13人に怪我はない。海上保安庁は引き続き行方が分かっていない3人の捜索にあたっている。
- 愛知県知事のリコール署名偽造事件に進展: 愛知県の大村秀章知事の解職請求(リコール)運動をめぐる不正署名事件で、4人が地方自治法違反(署名偽造)容疑で逮捕されてから1週間がたった。時間が経つにつれ、偽造の手口や経緯が次第に明らかになってきた。関係者によると、田中容疑者は昨年10月、名古屋市の広告関連会社に中国か韓国でアルバイトを集められないか持ちかけた。同社は断ったが、人を集めて作業できる会場が確保できた佐賀市でアルバイトを募ることにした。名古屋市の印刷会社に白紙の署名簿を追加発注したのは、会場が決まったのとほぼ同時期だった。警察はアルバイトに直接指示を出していたのは雅人容疑者だとみみている。報道によると、提出された435,000の署名のうち、83%が偽造されていた。一部ではこれらの署名は選挙人名簿を書き写したものとの指摘も出ている。また県警は、リコール運動を始めたとされる美容整形外科の高須克弥氏の関係会社を地方自治法違反(署名偽造)の疑いで家宅捜索している。
II. 世論調査
- 土曜に公表された毎日新聞・社会調査研究センターの世論調査では、菅内閣の支持率は31%(4月から9%減)、不支持は59%(4月から8%増)だった。
- 回答者の47%は菅さんに自民党総裁の任期満了となる9月末まで首相を続けてもらいたいと答え、40%は早く辞めてもらいたい、13%はできるだけ長く続けてもらいたいと答えた。
- 回答者の13%(4月から6%減)はこれまでの政府の新型コロナ対策を評価するとした一方、69%(4月から6%増)は評価しないと答えた。
- 回答者の31%は住まいの自治体の新型コロナ対策を評価するとした一方、 36%は評価しないと答えた。
- 回答者の45%は住まいの地域で医療崩壊の恐れがあると思うとした一方、32%は医療崩壊の恐れはないと答えた。
- 回答者の20%は緊急事態宣言について妥当だとした一方、59%は全国に発令して感染を抑え込むべきとし、12%は早く解除して経済を回すべきだと答えた。
- 回答者の63%はすぐにワクチン接種は受けたいと答え、28%はしばらく様子を見たい、6%は受けたくない、3%はすぐに受けたと答えた。
- 回答者の51%はワクチン接種のの予約が取りづらいなどの混乱について国の責任が大きいとした一方、13%は自治体の責任が大きいと答えた。
- 回答者の40%(4月から11%増)はオリンピック・パラリンピックを中止するべきと答え、23%(4月から4%増)は再び延期、20%(4月から14%減)は海外の観客を入れずに開催、13%(4月から1%減)は無観客で開催すべきと答えた。
- 回答者の21%はオリンピック・パラリンピックの開催と新型コロナ対策を両立できるとした一方、71%はできないので新型コロナ対策を優先すべきだと答えた。
- 世論調査は各政党の支持率に関するデータも集計している。
政党名 | 支持率 (%) |
自由民主党 | 29 (-2) |
公明党(自民と連立政権を組む) | 4 (±0) |
立憲民主党 | 10 (-1) |
日本維新の会 | 6 (-2) |
国民民主党 | 1 (±0) |
日本共産党 | 5 (+1) |
社会民主党 | 0 (±0) |
古い政党から 国民を守る党 (前・NHK党) | 0 (-1) |
れいわ新撰組 | 2 (±0) |
支持政党なし | 41 (+5) |
Image: Captain76 (CC BY-SA 3.0)
完。
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