I. 今週のニュース
新型コロナ
新型コロナ情報 (基本毎日更新):
- 緊急事態・蔓延防止等に関する情報: 内閣官房、「緊急事態宣言」、https://corona.go.jp/emergency/
- ワクチン接種等に関する情報: 首相官邸、「新型コロナワクチンについて」、https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html
- 世界の接種状況の比較: 「チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は」、日本経済新聞、https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
- 都道府県ごとの新規感染者数: 「特設サイト: 新型コロナウイルス」、NHK、https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data/
- 東京の新規感染者数・病床使用率: 東京都、「都内の最新感染動向」、https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
1. 緊急事態宣言延長から1週間
- 小池百合子東京都知事は金曜、平日の夜8時以降と土日の不要不急の外出自粛を強く呼びかけた。専門家は都内の人の流れの増加に懸念を示しており、特に夜間の増加が目立つと指摘している。
- 水曜の厚生労働省の専門家会合では、先月中旬以降感染者数の減少が続いているとした一方、各地で人出の増加が見られ、感染の再拡大の可能性も考えられると指摘された。
- 会合では、特に沖縄県で若い世代を中心に感染者数の急増が続き、感染状況は「過去に例のない非常に高い水準」になっているとした一方、東京では人出が増加していて、このまま続けばリバウンドのおそれがあると警戒を呼びかけた。
- 田村憲久厚生労働大臣は火曜、一定程度感染が収まりつつあるが、まだ十分ではないとし、緊急事態宣言を延長して「ステージ2」に近づく形で、さらに新規感染者の数を減らしていかなければならないと述べた。「ステージ2」は病床使用率20%以下や10万人あたりの療養者20人以下を指す。
- 延長期間において、各都道府県で規制緩和の動きが広がっている。東京都や大阪府は百貨店などの大型商業施設には平日は午後8時までの時短営業に切り替え、土日は休業を要請している。また、テーマパーク、美術館などの施設も時短営業に切り替えられる。(その他規制については先週号で確認可能)
- 加藤勝信官房長官は土曜、現在緊急事態宣言下にある都道府県が解除後、感染がより抑制されるよう、蔓延防止等重点措置へ移行する可能性は十分あると述べた。
2. 新たな「ベトナム型」の変異株が確認される
- 加藤官房長官は金曜、イギリスで、インド変異株による感染拡大への懸念が強まっていることを受けて、政府がイギリスからの入国者に対し、国が確保する宿泊施設にとどめる期間を3日間から6日間に延長する措置をとると発表した。
- 政府は火曜、ベトナムやマレーシアといった変異ウイルスの広がりが確認されている国々からの帰国者について、新型コロナの水際対策を強化すると発表した。
- ベトナムとマレーシアからの帰国者は6日間の待機を求められ、空港検疫での陽性率が特に高いアフガニスタンは10日間、そしてタイ、ドイツ、米国の一部は3日間の待機を求める。
- 加藤官房長官は月曜、現時点で国内においてイギリス型変異株とインド型変異株が組み合わさった「ベトナム型」の感染者は確認されていないと明らかにした。
- 全国知事会は土曜、インドで確認された変異ウイルスの検査体制の強化と水際対策の徹底を実施することなどを求める政府への提言をまとめた。
- 日本が水際対策を強化する中、ヨーロッパは規制緩和へと向かっている。EUは金曜、新型コロナ対策で原則として禁止している域外からの不要不急の渡航を認める国のリストに日本を加えたと発表した。フランス政府も、日本からの渡航者に関して、72時間以内に実施したPCR検査などの陰性証明があれば、 1週間の自主隔離が不要となると発表した。
3. ワクチンの一般接種開始が近づく
- 水曜時点で医療従事者の約67%が2回の接種を終えている。65歳以上の高齢者は17%、64歳以下の国民は27万人が1回目の接種を受けている。
- 東京都は7月にも5カ所のワクチン大規模接種会場を開設する方針だ。現在は2022年3月末を想定している都全体の接種完了時期を、今年末に繰り上げる方向で調整している。
- 政府の火曜時点での調査によると、高齢者向けのワクチン接種を、7月末までに終えられる見通しだと回答した自治体は、全体の99%だった。一方、北海道、東京、福島、秋田、埼玉の合わせて23の市区町村は間に合わないと回答した。
- 菅首相は火曜、高齢者への接種の見通しがついた自治体から、広く一般の人に今月、順次接種を始めると述べた。
- 読売新聞は64歳以下の住民へのワクチン接種券発送時期が、道府県庁所在市と東京23区の計69自治体の6割で決まっていないと報じた。政府は6月中旬からの発送を求めている。
- また首相は、6月21日から職場や大学でモデルナ製ワクチンの接種を開始したいとも述べた。企業は社内のスペースを活用し接種会場を設置し、会場になりうるスペースがない企業はレンタル会議室などを無償で貸し出しできることが想定される。
- 政府は企業や大学に高齢者が優先的に接種を受けられるよう求めているが、いずれは従業員、その家族、学生などを対象にしていくことも考えている。これらの動きの背景には6月末までに5,000万回分程度のワクチンの余裕が生じることがあるとされている。
- 河野太郎ワクチン担当相は火曜、6月21日からの2週間で配る約1827万回分について、接種率が高い和歌山、山口、鳥取、佐賀、高知の上位5県には、希望した量を配送すると発表した。配分を効率化し、接種率を上げていく狙いがあると見られている。
- ワクチン確保が遅れたことを踏まえ、政府は火曜、閣議でワクチン開発や生産体制の強化に向けた政策をまとめた長期戦略を決定した。
- 長期戦略には、平時から最先端の研究を継続的に行うことができる世界トップレベルの研究開発拠点を形成することや、薬事承認の迅速化、そして新たな感染症の発生時に企業が開発したワクチンを国が買い上げることを検討することなどが盛り込まれている。
- 厚生労働省の検討会は月曜、臨床検査技師と救急救命士がワクチンを接種することを条件付きで容認する方針を了承した。検討会は、自治体が接種に必要な医師や看護師を集めるのが難しい場合、必要な研修を受けるなどすれば、検査技師らがワクチン接種を担当しても良いと判断した。
- 厚労省は打ち手の確保のため、超法規的な措置をとって医師や看護師の他に接種を行うことができる医療関係者を担い手に加えている。また政府は、薬剤師や診療放射線技師に接種後の経過観察などを担ってもらうことにしている。
- また河野大臣は土曜、日本歯科医師会から歯科医師6,000人が接種のためのトレーニングを完了したとの連絡が菅首相のもとにあったと明らかにした。
外交・防衛(安全保障)
4. 菅総理、来週G7首脳会議出席へ
- 菅総理は10日、11日から13日にかけて英国南西部コーンウォールで開かれる自身初となるG7首脳会議のためにイギリスへ向かう。イギリスには5日間滞在する予定だ。
- 菅総理は気候変動問題やワクチンの公平な供給などで国際協調を呼びかけると見られている。また、G7首脳は菅首相のオリンピックを開催する決意を支持すると見られている。
- 首脳会議とは別に行われる個別会談の一環として、菅総理は今回招待されている文在寅大統領らと日米韓の首脳会談を行う方向で調整している。
- 菅総理は木曜、首脳会議の前に、安倍晋三前総理と会談し、安倍氏は菅総理に、積極的に発言し、自らの見解を示すようアドバイスしたという。
5. G7財務大臣会合
- G7の財務大臣会合は6月4日から5日にかけてロンドンで開かれる。
- コミュニケの草案では、各国の大臣が財政支援を早急に撤回しないこと、成長を促進し、質の高い雇用を生み、気候変動と格差に対応するために投資することを約束している。
- またコミュニケでは、財政の長期的な持続性を確保するため、財政出動の段階的な撤回について盛り込む。
- G7の財政大臣会合では、規模が大きい多国籍企業が公正な税金を支払うことを保証するために、国際的な最低法人税標準を設定する。経済協力開発機構(OECD)は今夏にも独自の課税ルールを設定する予定だ。アメリカは15%以上の最低法人税を提案している。
- 麻生太郎財務大臣は火曜、法人税の最低税率について、今回数字の突き詰めまでには行き着かない考えを示した。
- 麻生大臣と日銀の黒田春彦総裁は先週金曜、 G7財務相・中央銀行総裁のオンライン会議に参加し、グリーンかつ持続可能な世界経済の回復を達成するために必要な協力について議論した。
- 会議では、気候変動関連の財務情報開示や持続性関連の国際財務報告基準の策定の後押しなどについて議論した。5月20日時点で、世界2,134の企業や団体がこの提言に賛同しており、このうち、日本は最も多い396の企業・団体が賛同している。
6. 日米関係
- ジョン・アクイリノ米インド太平洋軍司令官は火曜、初めての外国訪問先となる日本で菅総理、岸信夫防衛大臣、茂木敏充外務大臣とそれぞれ話し合いをした。
- アクイリノ司令官はケヴィン・シュナイダー在日米軍司令官に同行され、菅総理と意見交換を行なった。両者はインド太平洋地域の平和と安定を維持するため、日米同盟を一層強化していくことを確認した。
- 菅総理大臣とアクイリノ司令官は、中国による東シナ海などでの一方的な現状変更の試みに強く反対していくことで一致した。また、両者は日米同盟の抑止力を維持しつつ、在日アメリカ軍の再編を着実に進める重要性を確認した。
- アクイリノ司令官と岸防衛大臣は、自衛隊とインド太平洋軍の連携が、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化のために重要であると再確認した。また、地域の安全保障環境が厳しさを増していることを踏まえ、同盟の抑止力・対処力の一層の強化のため、両国が引き続き緊密に連携していくことも確認した。
- 日経によると、アクイリノ司令官と岸防衛大臣は、台湾海峡の平和と安定の重要性についても確認した。
- 茂木外務大臣との話し合いでは、在日米軍再編を着実に進めることを再確認した。茂木大臣は在日米軍の安定的駐留のためには地元の理解と協力が不可欠であり、日本で活動する米軍の地元への影響に最大限配慮した安全な運用、事件・事故での円滑な対応等のために引き続き緊密に協力していきたいと述べた。
- 海上自衛隊は同日、山村浩海上幕僚長がアクイリーノ司令官から、これまでの日米関係における功績として米国勲章を手渡されたと発表した。
7. 自民党外交部会・台湾PTが日台関係についての提言を政府に提出
- 自民党外交部会の台湾プロジェクトチームは木曜、日台関係についての提言書を政府に提出した。
- 提言書には、「台湾周辺海域の平和は、わが国の安全保障に直結する」と書かれている。また、中国による台湾に対する力による一方的な現状変更の試みも日に日に強まっているとしている。
- 外交については、フォーラムや議員による対話などを通して、日米台による対話プラットフォームの構築を速やかに行うべきと提言している。
- 経済安全保障については、対中依存を是正する意味でも日台のより緊密な経済連携を図ることが必要としている。提言では半導体の共同開発を推進する政府の方針を評価している。
- 経済・インフラについては、台湾のCPTPP加盟を後押しすることや、日台FTA ・日台EPAの検討を提唱している。
- 安全保障については、中国による台湾本島への侵攻は、南西諸島を始めとしたわが国の安全保障に直結すると記した。有事への対策として、価値観を共有する同盟・同志国の連携を強化し、抑止力強化へつなげることや、同盟国とシミュレーションを行い、在台邦人の避難など、具体的なシナリオにおいての対応を検討する必要があるとしている。
8. 外交関連ニュース
- 政府は金曜、日本とオーストラリアの外務・防衛の閣僚協議が来週水曜にテレビ会議形式で開催されると発表した。
- 岸防衛大臣は、海洋進出を強める中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向け、両国の協力関係を新たな次元に引き上げたいと意欲を示した。
- 茂木外務大臣は、日本が台湾に対して、アストラゼネカのワクチンおよそ120万回分を無償で提供することを明らかにした。大臣は「台湾との友情も踏まえた提供だ」と述べた。
- ワクチンは金曜の午後に到着した。台湾は先週、海外の製薬会社からのワクチンの調達が中国の妨害でさらに難しくなっていると主張していた。中国は、台湾と蔡英文総統が、日本からのワクチンの支援に感謝の意を示したことについて、何度も中国製のワクチンを提供する意向を示してきたとし、非難した。
- 船越健裕アジア大洋州局長は木曜、第12回日中高級事務レベル海洋協議団長間協議に参加した。船越局長は、中国海警船舶による尖閣諸島周辺海域を含む東シナ海を始めとする海域での領海侵入に対する懸念を改めて申し入れ、中国側の行動を強く求めた。
- 菅首相は水曜、COVAXワクチンサミット後、すでに拠出している2億ドルに加え、政府が新たに8億ドルをCOVAXファシリティーに拠出すると発表した。サミットの参加国は全体で83億ドルを超える額を途上国へ拠出するべく確保した。
- CPTPPに参加する11か国は水曜、参加を申請した英国との交渉入りを決めた。イギリスの参加により、協定は世界のGDPの16%を占める事になる。日経は中国が非公式に、ニュージーランドやシンガポールと自らの参加について連絡をとったと報じている。
- 韓国外務省は火曜、茂木大臣の旧日本軍の慰安婦問題を巡る韓日の合意などを巡る文在寅(ムン・ジェイン)政権の対応について、「ゴールポストが動かされる」などと指摘したことについて、在韓日本大使館の相馬弘尚総括公使を呼んで抗議した。外務省はさらに、オリンピックの公式ホームページの日本地図に竹島(独島)が表示されている問題について抗議した。
9. 防衛関連ニュース
- 中国海警局の船4隻が木曜、沖縄県・尖閣諸島の大正島や南小島周辺の接続水域を航行しているのが確認され、接続水域での航行は過去最長を更新し、112日連続となった。
- 海警船の接続水域での航行は急増し、最近は接続水域で日本漁船を待ち構えるように航行し、漁船の動きに合わせて領海侵入する例が目立つ。
- 岸防衛大臣は木曜、ベトナムのファン・ヴァン・ザン・ベトナム国防大臣とオンライン会談を行い、二国間の防衛協力・交流を更に進めていくことで一致した。
- また両者は、最近の東シナ海・南シナ海での中国の海洋進出を含む地域情勢について意見交換を実施し、航行及び上空飛行の自由並びに国際法遵守の重要性を再確認した。
- 岸防衛大臣は水曜、フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ比国防大臣とオンライン会談を行い、国連海洋法条約(UNCLOS)を始めとする国際法を遵守し、FOIPを維持・強化していくことが重要であるという考えを再確認した。
- また両者は、中国の海洋進出、北朝鮮やミャンマーなど地域情勢について意見交換を行なった。両者は、防衛当局間協議の早期開催など、二国間の防衛協力・交流を更に進めていくことで一致した。
- 防衛省は沖縄県宮古島市の陸上自衛隊施設「保良訓練場」内に弾薬の搬入を始めた。今後、地対艦、地対空のミサイルなどを順次搬入する見通しだ。
- また防衛省は、太平洋の小笠原諸島周辺空域からの領空侵犯を監視するため、移動式レーダーを備えた航空自衛隊の移動警戒隊を同諸島に展開する方針を固めた。中国が太平洋進出を繰り返していることを受け、同省は「防空監視の空白域」とされてきた太平洋の島しょ部での監視態勢構築を急いでいる。
10. 経済安全保障
- 経済産業省は金曜、半導体・デジタルインフラ・デジタル産業の今後の政策の方向性をまとめた「半導体・デジタル産業戦略」を発表した。
- 戦略には、先端半導体製造技術の国内・海外企業による共同開発や、情報を一括に管理し発信できるデータセンターの国内立地などを明記している。
- 梶山弘志経産大臣は火曜、国内の半導体産業が活性化するという意味でも、将来的な半導体製造拠点の誘致に意義があると意欲を示した。
- 経産省は月曜、台湾積体電路製造(TSMC)が日本で実施する国内約20社と行う先端半導体の研究開発に5年間で190億円(1億7,000万ドル)を拠出し、支援すると発表した。
- 試験的な施設は早ければ夏に、茨城県つくば市の産業技術総合研究所にて建設できるとしている。研究開発は早ければ2022年に始まる。
- 自民党の新国際秩序創造戦略本部は先週、経済財政運営に関する中間とりまとめを発表した。レポートには国内技術の保護、外資に関する規制強化、経済に必要不可欠な産業を判別することなどが記されている。
- 国内最大手の半導体メーカーであるルネサスエレクトロニクスは今週、生産能力を今月中旬に火災前の水準に回復する方針を明らかにした。ルネサスは4月、茨城県の工場で発生した火災により生産を一時停止している。
国内政治
11. 国会
- 菅首相は水曜、公明党の山口那津男代表と会い、今国会の会期を延長せず、6月16日に閉会することを確認した。最大野党の立憲民主党の枝野幸男代表は先週、今年度補正予算の編成など、新型コロナ対策を迅速に進めるため、来月16日までの国会の会期を延長すべきだという認識を示していた。
- 国会は金曜、年収200万円以上(夫婦ともに75歳以上の場合は320万円以上)の収入がある75歳以上の後期高齢者の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる高齢者医療確保法改正案を成立させた。今回の制度改正で、年間で支援金720億円、公費980億円を削減できる。施行は2022年10月10月から2023年3月の間となる。
- 国会はさらに、国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法などの改正法を成立させた。この改正法は、国家公務員の定年を2023年から2年ごとに1歳ずつ引き上げるとともに、60歳になった職員を原則として管理職から外す「役職定年制」を導入し、60歳以上の給与はそれまでの水準の7割程度にするとしている。
- 国会では木曜、子どもが生まれて8週間以内に、男性が合わせて4週間の休みを2回に分けて取得できる、いわゆる男性の育児休業の取得を促す法律の改正案が成立した。さらに、現在は1か月前までに行うことになっている、勤務先への取得の申請は、原則、2週間前までに行うとしている。
- 自民党・公明党・日本維新の会は木曜、自宅などで療養中の新型コロナウイルスの患者に選挙の投票機会を確保するため、郵便投票の対象を拡大する法案を国会に共同提出した。衆議院の特別委員会が6月7日に審議を開始する。
- 衆議院は、建設現場でアスベストの健康被害を訴えた集団訴訟で、国の賠償責任を認める最高裁判所の判決を受けて、訴訟を起こしていない被害者などにも、最大1,300万円の給付金を支給するための法案を可決した。
- また、原告団とは別に、訴訟を起こしていない被害者にも和解金と同じ額の給付金を支給するための基金を創設するとしている。法案は会期末の16日までに参議院で可決され成立する見通しだ。
- 日本維新の会と国民民主党は水曜、自衛隊の警戒監視活動やそれに伴う武器使用の基準を定める自衛隊法改正案などを衆院に共同提出した。法案は中国の東シナ海進出への対応や次期衆院選に向け保守層の支持を得る狙いがあり提出された。
- 参議院憲法審査会の会議では、与党は国民投票法の改正案について、6月9日に採決したいと提案した。野党側は持ち帰って検討する考えを伝えた。
- 改正案は、憲法改正の最終段階である国民投票の実施方法を規定する。法案の中には、国民が指定された投票所ではなく、駅やショッピングセンターなどの場所で投票できる「共通投票所」の設置などの内容が含まれている。
- 衆議院は火曜、国家安全保障において重要な施設の近くの土地の売買と使用を制限する法案を可決した。会期末の6月16日までに参議院で可決するのは時間との勝負となる。
12. 経済状況
- 厚生労働省は金曜、1人の女性が産む子どもの数の指標となる出生率は去年、1.34となり、5年連続で前の年を下回ったと発表した。また、去年1年間に生まれた子どもの数が1899年に統計を取り始めて以降最も少なくなった。
- 日本維新の会は木曜、消費税の税率を時限的に5%に引き下げることや30兆円規模の今年度の補正予算案を編成するべきだという提言をまとめた。党は新型コロナの影響が長期化している家計や事業を下支えするために必要だとしている。
- 共同通信は木曜、政府が今後の経済成長に向けた政府の成長戦略案から、原子力発電を「引き続き最大限活用していく」との文言を消去したと報じた。今秋までに策定が想定される国の中長期的な政策指針「エネルギー基本計画」の議論にも影響を与える可能性がある。
- 厚労省は水曜、昨年度の生活保護の申請件数は22万8,000件余りと前の年度より2.3%増えて、リーマンショックの影響を受けた2009年度以来の増加となったと発表した。
- 政府は脱炭素を大きく取り上げた成長戦略をとりまとめた。戦略はグリーン分野では2兆円の基金を使用するとしている。具体的には2030年までにEV用の充電スタンドを今の5倍にあたる15万基に、燃料電池車用の水素ステーションを今のおよそ6倍に当たる1,000基程度に増やすとしている。
- 財務省は火曜、国内企業のことし1月から3月までの経常利益は、20兆746億円となり、去年の同じ時期より26%増えたと発表した。去年の同じ時期を上回るのは8期ぶりで、国内外の自動車販売が好調だったことなどが利益を押し上げた。
- OECDは月曜、世界の経済成長率が3月の計算から0.2%上方修正した5.8%増となるとするレポートを公表した。日本の経済成長率は、緊急事態宣言やワクチン接種のスピードが遅いことから、2.7%から2.6%に下方修正された。
- 月曜の報道によれば、日銀の5月ETF購入額はゼロで、2012年12月に黒田総裁が就任し金融緩和を開始して以来初となった。
- 東京都の財政調整基金(貯金)は21年度末時点で21億円になり、20年度末の残高見込みと比べると99%減となった。都は新型コロナ対策で基金を取り崩す形となっている。
- 日経は日曜、新興企業を育成するため、特別買収目的会社「SPAC」の解禁を検討している。政府はこれを6月に策定する経済成長戦略に加え、東京証券取引所との議論を夏に始めるとしている。未公開企業による上場は早ければ来年開始される。
13. 政府と専門家の間でオリンピック開催のリスクについて食い違いが生じる
- また赤羽一嘉国土交通大臣は、大会に向けて万全な感染対策をとる考えを強調した。赤羽大臣はさらに、陰性証明などに使えるデジタル証明書の導入を目指す考えを示した。
- 西村康稔経済再生担当大臣は木曜、緊急事態宣言中、サッカーや野球の試合が開催され、感染が広がった報告はないとし、競技場や観客席で感染が広がる可能性について「リスクは非常に低い」と強調した。
- 組織委員会の橋本聖子会長は英・BBCとのインタビューにて、大会は100%開催されると述べた。同時に、無観客開催も覚悟しているとした。
- 政府は金曜、首脳クラスの一行の人数について、必要に応じて最大40人まで認める方針を固めた。政府は当初、原則12人までとしていたが、警護態勢の強化を求める各国の要望を踏まえる形で変更した。政府はさらに出発する前にワクチン接種を済ませることや、滞在期間を4泊5日以内とするよう強く推奨するとしている。
- また政府は、観客についても厳しい規制をかけるとしている。読売新聞が入手した原案によると、観客全員に事前にPCR検査などを求め、入り口で観戦日の前1週間以内の陰性証明書を提示することを条件に入場を認める。ワクチンを接種した人は接種証明書があれば陰性証明書は求めない。
- 海外からの参加者は全員、出国前96時間以内に2度の検査で陰性証明を取得し、さらに日本の空港到着時とその後3日間は毎日検査を受けなければならない。選手はその後も原則として毎日、大会関係者も選手との接触頻度に応じて定期的に検査を受ける。
- IOCは選手らに、自己責任のリスクとして新型コロナ感染や猛暑による死亡の可能性も盛り込んだ参加同意書への署名を求める。
- 一方、政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長は水曜、オリンピックは「パンデミックの所でやるのは普通ではない」と述べた。尾身氏はさらに、開催するならば政府は覚悟を見せ、開催の理由を国民に伝える必要があるとしている。
- 国民の中で懸念が残ることも事実だ。NHKは木曜、大会ボランティアおよそ8万人のうち、辞退者がおよそ1万人に上っていることを報じた。他の報道でも、VMOと呼ばれる、各競技会場の医療責任者を務める医師(VMO)が辞退するケースが相次いだことがわかった。
- 東京都は火曜、大会期間中に代々木公園で実施予定のパブリックビューイング(PV)について、中止する方針を明らかにした。公園は代わりに大規模接種に使用される。会場設営のため、公園で一部の木が剪定されたことに批判が起きていた。
- 野党は月曜、選手村での酒の提供などを認めている政府の方針を見直すよう求めた。野党側は、選手だけ特別扱いする対応で、さまざまな自粛に応じてきている国民の理解は得られないとしている。
14. その他関連ニュース
- 外資規制違反問題をめぐり総務省の第三者委員会は金曜、担当課長らが衛星放送関連会社「東北新社」の外資規制違反の事実を認識していた可能性が高いと指摘した。
- この件は菅首相の息子が東北新社に勤務していることにより大きく取り上げられた。第三者委員会の報告には、外資規制違反を知った上、法律上行うべき認定の取り消しなどを行わず、子会社による事業承継の申請を追認した可能性が高いという点で「行政がゆがめられたとの指摘を免れない」としている。
- 総務省は、一連の会食に関して、倫理規定違反として32名を処分したと発表した。同省の調査によれば、規定違反の会食は計78件、東北新社、NTT、NTTドコモらとあった。
- 自民党内で子どもに関わる行政の在り方について検討していたグループは木曜、関連予算を大幅に拡充するとともに、強力な機能を持つ行政組織として「こども庁」を創設し、担当大臣を置くことを前提に検討を始めるよう求める緊急決議をまとめた。公明党は似たような提言を月曜にしていて、そちらでは首相直属の「子ども家庭庁」を創設することを提案している。
- Chief Cabinet Secretary Kato said Wednesday that it is constitutionally possible for a woman whose mother is of the emperor’s lineage to become emperor. At the same time, he explained that the Imperial Household Law limits heirs to males.
加藤官房長官は水曜、安定的な皇位継承策を巡り、母方が天皇の血筋を引く女系天皇も憲法上は認められるとの見解を示した。同時に、皇室典範は皇位継承者を男系男子に限定していると説明した。
- 政府は4月に安定的な皇位継承策を考える有識者会議を設置した。加藤官房長官は、父方が血筋を引く男系継承が「古来例外なく維持されてきた重みなどを踏まえながら、慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある」と重ねて強調した。
- 政府は月曜、12月ごろから孤独や孤立の問題の実態を把握するため、およそ2万人を対象にした全国調査を行うとした。政府は昨年、11年ぶりに全国の自殺者数が増加したことを受けて、2月に孤独担当大臣を任命した。
選挙
15. 解散総選挙に向けての準備が進む
- 自民党は木曜、次の衆議院選挙で、公明党が小選挙区に擁立する9人の推薦を内定したと発表した。
- 自民党の二階俊博幹事長は火曜、野党側が会期末までに内閣不信任決議案を提出すれば、いつでも解散に打って出ると改めて強調した。
- 立憲民主党の安住淳国会対策委員長は同日、内閣不信任決議案の扱いについて、枝野代表に一任したことを明らかにした。最終的な判断は来週9日の菅総理大臣と野党党首による党首討論の後になる見通しを示した。
- 党首討論の参加者は菅総理、枝野代表、日本維新のの片山虎之助共同代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、日本共産党の志位和夫委員長。枝野氏は菅総理と30分討論し、その他代表らはそれぞれ5分討論する。
その他の注目すべきニュース
- 菅原一秀元経産大臣が議員辞職する: 衆議院は木曜、選挙法違反で起訴される方針が確定したとの報道が出ている菅原一秀元経済産業大臣・自民党議員の辞職を承認した。菅原氏は、衆議院に辞職願を提出する前の火曜、自民党へ離党届を提出していた。検察は当初、菅原氏が選挙区の有権者27人に金銭と贈り物を贈った疑いで、昨年6月に起訴する方針を固めていたが、その後取り下げていた。しかし、2月にこれらの疑惑の再調査を行う際、菅原氏が地元のイベント主催者などに5万円の現金を贈っていたという新たな疑惑が浮上した。菅原氏は責任を取って辞職したが、問題はそこで終わらない。野党は、菅原氏が夏のボーナス授与の要件を満たした翌日に辞職したことで、310万円を受け取ったことを批判した。また野党は水曜、菅原氏が辞職前に衆院政治倫理審査会で事実を説明するよう求めた。菅首相はその夜、自民党を代表して菅原氏の行動について謝罪した。首相が2019年に菅原氏を経済産業大臣に推薦したことを考えると、菅原氏の辞職は首相にとって痛手となりそうだ。
- 自民党、LGBT法案の今国会提出を見送る方針: 自民党の下村博文政務調査会長は木曜、前日の会見にて、自民党と立憲民主党がLGBTやその他の性的マイノリティーの理解を促進する法案を棚上げにすることで合意したと誤った情報を発信したことについて謝罪した。佐藤勉総務会長は先週金曜、同法案について保守系議員から否定的な意見が続出し、党内手続きが難航していたことから、断念せざるを得ないと判断したと述べた。この決定に不満を持った超党派グループの与党議員は火曜、二階幹事長と面会し、今国会中に法案を提出するよう要請した。森山裕国会対策委員長は法案の重要性を認めたが、6月16日までに審議し、通過させるには時間が足りないと述べた。法案の提出を少なくとも一時的に見送った自民党の決定に対して不満を持つものは少なくない。LGBTの当事者団体は金曜、自民党本部を訪れ、今国会中に法案を提出するよう求める書面を提出した。先週の日曜には、党本部の前で、自民党に法案を提出し、性的指向や性的アイデンティティーに基づく差別のない社会を促進するよう求める抗議活動が行われた。性的マイノリティーの理解を促進することに関して、東京都の小池知事は水曜、都が法的に認められた結婚証明書ではないものの、公的に性的マイノリティーを認めるパートナーシップ制度の導入を検討していると述べた。
II. 世論調査
- 菅内閣の支持率は各社(読売・共同・日経・NHK・朝日)の5月世論調査で大幅に下がっているが、その理由として挙げられているのがワクチン接種のスピードの遅さだ。これからのワクチン接種のペース次第で政局が大きく変わる可能性があり、選挙結果に影響が出ることもないとは言いきれない。
- 月曜に公表された日本経済新聞・テレビ東京の世論調査では、菅内閣の支持率は40%(4月から7%減)、不支持は50%(1月以来の最低水準)だった。
- 回答者の55%は不支持の理由としてリーダーシップのなさを挙げた一方、37%は政策が良くないと答えた。
- 回答者の31%はこれまでの政府の新型コロナ対策を評価するとした一方、64%(4月から1%減)は評価しないと答えた。
- 回答者の77%は9県での緊急事態宣言延長を妥当とした一方、 17%は妥当ではないと答えた。
- 回答者の62%はオリンピック・パラリンピックを再延期あるいは中止すべきと答え、33%は観客を制限、あるいは無観客、1%は当初の予定通り開催すべきと答えた。
- 回答者の22%は感染状況が改善されなければ再延期すべきとした一方、40%は中止にせざるを得ないと答えた。
- 回答者の77%(2019年以来最高)は新型コロナ対応の失敗などを踏まえて憲法改正の議論を国会で進める必要があるとした一方、14%は必要ないと回答した。
- 回答者の42%は菅総理の自民党を支持しているとし、8%は最大野党の立憲民主党、33%は支持政党がないと回答した。
- 回答者の23%は次の政権の首相にふさわしいと思うのは河野太郎氏と答え、14%は石破茂氏、11%は小泉進次郎氏と回答した。
- 月曜に公表された読売新聞の世論調査では、東京都民の30%(2017年から5%増)が7月4日投開票の都議会選挙で自民党に票を投じるとした一方、11%(同年から11%減)が都議会第1党の都民ファーストの会に投票すると回答した。
- また、回答者の8%は立憲民主党、7%は公明党、6%は共産党にそれぞれ投票すると回答した。
- 回答者の45%はこれまでの東京都の新型コロナ対策を評価するとした一方、48%は評価しないと答えた。
- 回答者の48%はオリンピック・パラリンピックを中止すべきと答え、25%は観客を制限、24%は無観客で開催すべきと答えた。
Image: Captain76 (CC BY-SA 3.0)
完。
2 thoughts on “週刊オブザーバー 5/31-6/4”