週刊オブザーバー 6/14-6/18

I. 今週のニュース

新型コロナ

新型コロナ情報 (基本毎日更新):

1. 9都道府県で緊急事態宣言解除

  • 政府は木曜、10都道府県に出されている緊急事態宣言について、医療逼迫が依然として続く沖縄を除く9都道府県では20日をもって解除し、このうち7都道府県は、まん延防止等重点措置に移行させると発表した。

  • その結果、北海道、東京、愛知、大阪、兵庫、京都、福岡の7都道府県は7月11日までの期間、まん延防止等重点措置下に置かれる。沖縄については7月11日まで緊急事態宣言が延長されることになる。

  • また政府は、5県に適用されているまん延防止等重点措置について、埼玉、千葉、神奈川の3県で7月11日まで期間を延長し、残る岐阜県三重県は期限の6月20日で解除するとした。

  • 政府は引き続き飲食店には午後8時までの営業時間の短縮を求める一方、原則4人までのグループには7時まで酒類を提供することを認める。そのうえ、感染状況に応じて、知事の判断で酒の提供を停止できることになる。

  • また、大規模イベントの観客は5,000人以下に限定される。7月11日の措置解除後、約1か月間は1万人以下と規制が緩和される。

  • 政府はこうしたガイドラインを示したものの、最終的な判断は知事たちに任せている。例えば東京都大阪府では、原則1組2人までとし、酒類を午前11時から午後7時まで提供することを認める。東京都はさらに追加条件として、滞在時間を90分までとする制限を設けた。

  • 西村経済再生担当大臣火曜全国の感染状況は改善が見られる一方、東京など1都3県では新規感染者数の減少傾向が鈍くなっていると指摘した。東京都は金曜時点での7日間平均が389人となり、先月17日以来初めて前の週を上回った。

  • また大臣は、何人かの知事が解除を口にしていることについて、病床が厳しく、陽性率が高いにもかかわらず、解除ありきで話すのは非常に違和感を覚えると述べ、苦言を呈した。

  • 一部では政府がオリンピックのために緊急事態宣言・まん蔓延防止等重点措置解除を急いでいるという見方がある。他方では、自粛疲れが見え、不満が溜まりかねない国民に息継ぎが必要との判断があったとされている。

2. 専門家:7月中旬には「デルタ」変異株が主流になる

  • 厚生労働省によると、7日時点で確認されたデルタ型(インド型変異株)の感染者は12都府県の87人。

  • 同日までの1週間の新規感染者は34人で、前々週21人、前週24人と増加ペースが加速している。

  • アルファ型(イギリス型変異株)と比較すると、デルタ型の感染力はその1.5倍、従来型の1.8から2倍とされている一方、重症化リスクが高いかどうかは未だ定かではない。

  • デルタ型はワクチンの効果を弱めると指摘する専門家もいて、日本人の6割が持つ白血球の型「HLA(ヒト白血球抗原)―A24」がつくる免疫細胞から逃れるとの報告もある。

  • 厚労省の統計によると、現在の感染者の9割以上がアルファ型に感染している。同省のアドバイザリーボードの一員である京都大学の西浦博教授は、デルタ型が7月中旬に半数を超え、同月末には8割に達するとの試算を公表した。

  • 厚生労働省は金曜、国民が不安に思うであろう統計を発表した。同省によると、6月14日までの1週間は1日平均で約4,000人の入国者が、14日間の待機中に義務付けられている位置情報の報告を行っていなかった。同省は近く、入国者全員のビデオ通話を毎日実施する方針だ。

3. 7月末までに高齢者向けのワクチン接種が完了する見通しが立つ

  • 政府が水曜時点で行った最新の調査によると、全国1,741の市区町村のうち、すべてが7月末までに65歳以上の高齢者のワクチン接種を終えられる見通しだと回答した。

  • 政府は1日100万回接種を目標に掲げ、菅義偉総理大臣10月から11月にかけて希望する人の全員が接種を終えられるよう取り組む考えを示している。

  • ワクチン接種を担当する河野太郎大臣木曜1日100万回接種が週内にも達成できるとの見通しを示した。自治体によっては後日まとめて接種記録を入力するケースもあるため、火曜時点では計96万回の接種があったと想定できる。

  • 東京大学の研究チームが火曜にまとめたデータによると、全国で1日100万回接種に達すれば、現状の1日75万回のペースに比べ、東京の9月の新規感染者数を3割、大阪では2割、減らせる結果となった。

  • 緊急事態宣言が日曜の期限で全面解除され、デルタ型が8月末に主流になっていると仮定すると、100万回接種なら感染ピークが9月末にずれる上、感染者も約1,600人から約1,200人に減らすことができる。大阪でも、100万回なら9月前半に約1,500人と想定される新規感染者を、9月中旬に約1,200まで減らせる。

  • 政府は7月をめどに海外への渡航に必要なパスポートを持っている人用のワクチンパスポートを市区町村から紙の書面で発行する形式で導入する方向で調整を進めている。書面には氏名や国籍、旅券の番号のほか、ワクチンを接種した日付などを記載するとしている。

4. 一般向けのワクチン接種が始まる

  • 河野大臣は金曜来週21日から国家公務員と希望する閣僚を対象とする職域接種を開始すると発表した。国家公務員については、中央省庁で水際対策や危機管理などにあたる職員と、成田、羽田の両空港で勤務する職員から始めることを発表した。

  • 新型コロナワクチンの職場接種の対象者水曜、国への申請ベースで1,198万人に達した1日あたり最大30万回規模に相当し、国全体の接種ペースは大幅に速まる。

  • 萩生田光一文部科学大臣金曜全国174の大学からワクチン接種の実施の申請があったと明らかにした。そのうち16大学は21日にから接種を始めるめどが立っている。接種対象は今後近隣大学、小中校教職員、それに住民に拡大することを検討している。

  • 河野大臣は火曜ワクチンの無駄のないよう、隣近所や関連会社、社員の家族に積極的に声を掛けるなど柔軟な対応を取るよう求める考えを示した

  • すでに職域接種を開始している企業もあり、日本航空は月曜に接種を始めた。JALは21日以降は平均330人の接種を行い、早く接種が進んだ社員は7月中旬にも2回の接種が完了する見通しだとしている。

  • ソフトバンクグループの孫正義社長火曜、記者団に対し、社員・職域・その家族の15万人規模に加え、近隣の住民10万人の合計25万人規模の接種を行いたいと述べた。 

  • 政府が設置した自衛隊が運営する大規模接種センター対象を拡大し64歳以下の人が接種できるようになった。木曜からは自治体などが発行している接種券を持っている人なら誰でも予約し接種できるようになる。この方針は大規模接種センターの予約枠に空きがあったことから決まった。

外交・防衛(安全保障)

5. G7首脳会議

  • 日曜のG7サミット閉幕後に発表された共同宣言では、ワクチン支援や気候変動対策など様々な議題について明記された。

  • 新型コロナについては、来年にかけて10億回分のワクチンを供給するとし、全ての大陸におけるグローバルな生産能力を増加・調整し、安全で有効なワクチン、治療及び検査の開発サイクルを300日から100日へと短縮する目標の下で科学を支援するための枠組みを創設する。

  • 経済回復については、財務相・中央銀行総裁らが合意した必要な期間にわたる経済への支援継続や、課税権の配分に関する公平な解決策及び国別での15%以上の野心的なグローバル・ミニマム課税に関する今後の合意への期待を明記した。

  • 自由で公正な貿易については、WTO改革、国際的なサプライチェーンにおける強制労働をなくす取り組み知的財産窃取や国有企業による市場歪曲的な行動など不公正な慣行から保護するためのルール強化、そしてデジタル空間におけるルール作りを進めることを明記した。

  • 気候及び環境については、遅くとも2050年までの温室効果ガス排出ネット・ゼロ達成、石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の今年度末までの終了、そして開発途上及び新興国・地域における再生可能エネルギーの発展を支援するため、2025年までに100億ドルまで動員することにコミットしている。

  • 首脳らはジェンダー平等、民主主義の推進や、ルールに基づく国際システム及び国際法を堅持することにコミットしている。また、中国を名指しせずに、東シナ海及び南シナ海などでの一方的な現状変更の試みに強く反対した。

  • 中国に関してはさらに、世界経済の公正で透明性のある作用を損なう非市場主義政策及び慣行に共同で対応することや、香港と新疆などにおける人権及び基本的自由の尊重について言及した。また、首脳らは台湾海峡の平和と安定の重要性を初めて共同宣言に明記した。

  • 首脳らは中国の「一帯一路」に匹敵する途上国向けの新たなインフラ支援構想「Build Back Better for the World (B3W)」を導入することで合意した。

  • このイニシアチブは中国の提供するものに代わる、高水準で気候変動を考慮し、透明性があり、ルールに基づいた代替品になるとされている。構想では、気候変動、健康・医療保障、デジタル技術、ジェンダー平等の4分野に重点投資する。しかし、資金調達など具体的な詰め作業はされず、「B3W構想」という文言は共同宣言に盛り込まれなかった。

6. G7サミット後の反応

  • 茂木敏充外務大臣火曜、首脳会議について、日本として新型コロナ対策や台頭する中国への対応など国際社会が抱える課題の議論に積極的に貢献し、首脳宣言に反映させることができたと評価した。 

  • 国内報道多くは共同宣言に初めて台湾海峡が明記されたことやオリンピック・パラリンピック開催を改めて支持したことを取り上げた。

  • 他方で、G7の対中姿勢については意見が分かれた読売新聞の社説は、「国際秩序に挑戦する中国の行動に、民主主義諸国が結束して対抗していくという決意を示した意義は大きい」とした。

  • 朝日新聞毎日新聞過度な反中姿勢はかえって国際協調を乱し、分断を招きかねないと警鐘を鳴らした

  • 国内の多くの報道は会議を評価した一方、米・ポリティコ (Politico) は 日米の反対により共同宣言に石炭火力発電の廃止期限が明記されなかったと報じた。

  • 記事では、日本が石炭火力発電への政府による新規の国際的な直接支援の今年度末までの終了を履行するかわからないという見解も示した。政府は現在他の発電手段がないと判断した国には石炭火力発電のための支援を行なっている。

  • イギリスにある中国大使館月曜、G7は中国の評判を傷つけ、なおかつ内政干渉をしていると非難した。翌日には過去最多となる28機の中国軍の戦闘機などが台湾の防空識別圏 (ADIZ) に侵入した。共同宣言で「台湾海峡」に言及したことに強く反発したと見られている。

7. G7サミット中の二国間首脳会談

  • 日・カナダ菅総理とトルドー首相は先般合意された「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた両国の6つの優先協力分野において協力・連携を更に進め、ワクチンの公平なアクセス確保のために連携していくとし、中国や北朝鮮などに関する懸念を共有した。

  • 日・豪菅総理とモリソン首相「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、幅広い分野での日豪協力を更に深めていくことを確認し、日米豪印、ASEAN諸国・欧州諸国との協力を推進していくとし、脱炭素戦略を支える低排出及びゼロ排出技術を世界的に拡張可能かつ商業的に実現可能なものにするための「技術を通じた脱炭素化に関する日豪パートナーシップ」の発表を歓迎し、中国や北朝鮮など地域情勢に関する懸念を共有した。

  • 日・仏菅総理とマクロン大統領はグリーンを含む先端技術等の分野における協力の推進で一致し、太平洋地域における協力を強化し、北朝鮮を含む地域情勢について意見交換を行った。

  • 日・独:菅総理とメルケル首相は新型コロナや気候変動等の課題に立ち向かうための国際秩序の形成に当たり連携することを話し合った。また総理は、ドイツのインド太平洋へのコミットメントを歓迎し、メルケル首相は安全保障分野を含め、日独協力の強化に向けて連携したいと発言した。両首脳は中国を含む東アジア情勢、ロシア等について意見交換を行った。

  • 日・英菅総理とジョンソン首相新型コロナや気候変動等、今日の課題に立ち向かうための国際秩序の形成に当たり連携していくことや、日英及び多国間での共同訓練の実施等に向けた調整を加速することで一致し、英国のTPP11加入について話し合い、中国を含む東アジア情勢について意見交換を行い、拉致問題を含む北朝鮮への対応について引き続き協力していくことで一致した。

  • 日・米菅総理とバイデン大統領日米が協働して「自由で開かれたインド太平洋」の実現を推進することや、ASEANの役割の重要性について考えが一致した。

  • 加藤勝信官房長官月曜日本側が予定されていた日韓首脳会談を一方的に取り消したという韓国側の主張について、事実に反す一方的な発信とし、韓国に抗議したと明かした。文在寅大統領オーストラリアと南アフリカの首脳と共に特別招待されコーンウォールに滞在していた。

8. 外交関連ニュース

  • 韓国外務省の当局者は水曜アメリカで北朝鮮問題を担当するソン・キム特使が6月19日から23日まで韓国を訪問し、日本と韓国の高官との3か国による会合を開く方向で調整していると明らかにした。

  • 日本からは外務省の船越健裕アジア大洋州局長参加する予定だ。三者は対北朝鮮政策について話し合うと見られている。

  • 日本は水曜、インド型の変異株などが流行し、感染者数が増加傾向にあるベトナムに約100万回分のワクチンを供与した。ベトナムは台湾に続いて日本がアストラゼネカ製のワクチンを供与した2番目の国となった。

  • 加藤官房長官は火曜政府が3年に1度開かれる「太平洋・島サミット」をオンライン形式で来月2日に開催すると発表した。政府は太平洋島嶼国を「自由で開かれたインド太平洋」の実現の観点からも極めて重要な地域と位置づけている。首相は南太平洋の国や地域の首脳らと新型コロナ対策、持続可能な海洋、気候変動、持続可能な成長、人材育成といった分野において議論を行う予定だ。

  • 読売新聞は火曜、文在寅大統領が7月23日開幕のオリンピックに合わせて来日する方向で、日韓両政府が調整していると報じた。韓国側は首脳会談を開きたいとしている一方、政府は慰安婦問題や徴用工問題といった歴史問題で、韓国側が解決策を提示する見通しがない中で会談を行うことには慎重な姿勢を見せている。

9. 防衛関連ニュース

  • 岸信夫防衛大臣木曜日本の防衛大臣としては初めてEUの議会に出席し、安全保障・防衛小委員会に向けてオンラインスピーチを行った。

  • 岸大臣はインド太平洋地域で日本が直面している課題は、ヨーロッパ地域が直面している課題と同じだと指摘し、一方的な現状変更の試みなど緊張を高めるいかなる行為に強く反対するべきだと述べた。また大臣は、法の支配の徹底と「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、日・EUの協力が重要だという認識を強調した。

  • 岸大臣は水曜、オンラインで開かれた第8回拡大ASEAN国防相会議 (ADMM Plus) に参加した。ADMM Plusの参加者はASEAN10カ国と「プラス」国の日本、アメリカ、中国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、ロシアと韓国。

  • 岸大臣は会議にて、気候変動、サイバーセキュリティ、災害対策分野、そして感染症対策協力の具体化など、グローバルな課題解決に向けて果敢にリーダーシップを発揮していく決意を表明した。

  • また大臣は、「自由で開かれたインド太平洋」ビジョンのもと、志を同じくする国々と緊密に連携していく旨を述べ、ASEANの発表した「インド太平洋に関する ASEANアウトルック」を全面的に支持していることを強調し、ADMMプラスにおける実践的な防衛協力に、将来にわたって貢献する決意を表明した。

  • 岸大臣はさらに、法の支配を徹底する必要を強調し、東シナ海及び南シナ海において、力を背景とした現状変更の試みが継続していると指摘した。

  • 大臣は中国海警法についても、法律により関係国の正当な権益を損なうことがあってはならないと訴えた。また、大臣は台湾海峡の平和と安定は、地域のみならず、国際社会にとって重要であり、台湾をめぐる問題が、当事者間の直接な対話により、平和的に解決することを期待すると述べた。

  • 岸大臣は火曜竹島(韓国名・独島)周辺で韓国が実施した非公開の軍事訓練について、韓国側に抗議した。韓国軍は、竹島周辺での訓練を年に2回行っている。

  • NHKは月曜、防衛省が2035年ごろ配備予定の航空自衛隊の次期戦闘機開発に合わせ、AIを搭載した無人機の開発も進める方針だと報じた。無人機を使用することで、敵の戦闘機やミサイルなどを早い段階で探知できるようになり、同時にパイロットの安全確保が見込めるとしている。

国内政治

10. 2021年の骨太の方針が閣議決定される

  • 骨太の方針2001年に始まった政府がまとめる税財政や経済政策の基本運営方針のこと。今年の方針新型コロナからの回復のための経済政策が大きく取り上げられている。

  • 先週示された原案から大きく変わったのは希望者全員へのワクチン接種を10月から11月に完了すると明記したことだ。

  • 政府は今後の成長が見込まれるデジタル化、地方創生、子育て支援の4分野は予算を重点的に配分する方針を固めた。成長戦略もこれらの分野で投資拡大を目指すことにしている。

  • 財政健全化については、基礎的財政収支税収 – 政策経費を2025年度に黒字化するとした目標を堅持したが、今年度内に新型コロナの影響を検証し、目標を再確認することも明記した。内閣府が1月に示した試算では、新型コロナへの対応で歳出が膨らみ、税収が落ち込んだことで財政が急速に悪化し、黒字化の実現は目標より4年遅い2029年度にずれ込むとされている。

  • また骨太では、半導体等を念頭においた先端技術流出の防止を強化すること、「こども庁」を念頭に新たな行政組織を創設する検討に早急に着手することや、コロナ禍で深刻化する孤独・孤立対策に取り組む方針なども書き込んだ。

  • 方針実現に向けた具体策を盛り込む成長戦略は、2030年までに燃料電池車(FCV)用の水素ステーションを1,000基、電気自動車(EV)向けの急速充電器を30,000基整備すると明記した。また、デジタル関連のデータセンターについては、重要な情報は国内で管理する方が良いと指摘した。

  • 骨太と成長戦略とは別で同日に閣議決定された規制改革実施計画には、行政手続き大半を5年以内にオンライン化することや、初診からのオンライン診療を2022年度から恒久的に認めることが盛り込まれた。 

11. 第204回通常国会終了直前に不信任決議案が提出される

  • 野党4党は火曜、次の日の会期末を前に、菅内閣に対する不信任決議案を提出した。採決の結果、自民・公明両党と日本維新の会などの反対多数で否決された

  • 野党は新型コロナ対策や今年度の補正予算を組むために3ヶ月の会期延長を要求し、これが与党に拒否されたのを受け、不信任決議を提出した。

  • 最大野党立憲民主党の枝野幸男代表は不信任決議案の趣旨説明にて、政権を批判した上で、自らの政権構想を明らかにした

  • 枝野代表は、消費税率5%への時限的引下げ、年収1,000万円程度までの人に対する所得税の実質免除や、低所得者への現金給付などを打ち出した。

  • ただ、立憲の福山哲郎幹事長翌日消費税の引下げについて、実現不可能な可能性が高いのに、選挙公約にはできないと述べた。

  • この判断は、国民民主党や共産党など野党各党が選挙の旗印として打ち出したいとしている以上、共闘の障害になりかねない

12. 通常国会、会期を終える

  • 第204通常国会は水曜に会期末を迎えた。政府が提出した63法案のうち、新型コロナ対策の改正特別措置法や、デジタル庁を創設するための法律など97%が成立し、成立率は過去5年の通常国会で最も高くなった。

  • 国会では水曜安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案が成立した。同法案は、安全保障上重要な土地を悪意のある者の手に渡らないよう、土地取引を報告する際の盲点を埋めることが目的だ。

  • 2022年度に施行されるこの法案では、政府自衛隊施設や原子力発電所などの重要施設から約1キロ以内の地域を「注視区域」に指定し、土地の所有者、国籍や土地権利調査することができる。外国との関係が判明した所有者は土地の利用目的を報告する義務が生じる。

  • また政府は、自衛隊本部や領域の端に位置する無人島などの特に重要な地域を「特別注視区域」に指定することができる。指定された面積以上の土地を売買するには、土地所有者が名前と国籍を事前に開示する必要がある。

  • 政府はさらに、土地を安全保障上脅威とみなされる方法で使用している所有者に対し、罰金あるいは懲役を課すことができる。「特別注視区域」においては、虚偽の情報を提出したり報告を怠れば、最高懲役6ヶ月、あるいは100万円の罰金を課すことができる。

  • 国会では火曜自宅やホテルで療養中の新型コロナ患者や濃厚接触者、海外から帰国して施設などで待機している人が選挙の投票機会を確保できるよう郵便投票の対象を拡大する法案が成立した。6月25日に告示される東京都議会議員選挙では郵便投票の対象が拡大されることになる。

  • 参議院運営委員会木曜議員や職員などを対象とする職域接種を7月中にも始めることでおおむね一致した。衆議院の運営委員会も先週、同じ判断を下した。

13. 経済状況

  • 財務省水曜5月分の貿易統計を発表した。貿易収支は1,871億円の赤字で、4ヶ月ぶりに赤字となった。

  • 輸出額アメリカやヨーロッパ向けの自動車輸出などを受け、前年の同じ月と比べて49.6%増加した一方、原油や石油製品の輸入が増えた影響で、輸入額も27.9%の増加となった

  • 小泉進次郎環境大臣火曜G7の共同宣言で石炭火力発電について、政府による国際的な支援を年内に終えることが盛り込まれたことを受けて、一部にかぎって石炭火力発電の輸出を支援してきた日本の在り方を見直すべきだという考えを示した。

  • NHKは月曜、政府が新たに対策を講じ温室効果ガスの排出量を、2030年度までの累計で1億トン削減する目標を掲げる方針であると報じた。

  • 政府は温室効果ガスの排出を削減する日本の技術を各国に提供し、削減量を相手国と日本で分け合う二国間クレジット制度 (JCM) の活用を強化することにしている。

  • 政府はJCMの活用を強化する構想をまとめ再生可能エネルギー、物流、廃棄物などの分野を中心に、海外での導入を目指す方針だ。官民合わせた事業規模は、最大で1兆円程度と見込まれている。

  • JCMによる温室効果ガスの削減量は、去年末の時点で、2013年度から2030年度までの累計で、二酸化炭素に換算して1,700万トンと見込まれていた。政府は、この制度を一つの削減方法として、温室効果ガスの排出を2030年度までに、2013年度と比べて46%削減する目標を実現する考えだ。

14. オリンピック開幕まで残り35日 

  • オリンピック・パラリンピック開催まで1ヶ月ほどとなったが、問題はもはや開催の可否ではなく、観客数の上限がどれほどになるかだ

  • 政府はすでに何度も中止は難しいと言及している。また菅首相は、さきのG7首脳会議にて開催の支持を得られたと発言し、公明党山口那津男代表も中止は極めて非現実的で、国民の不安をあおりかねない主張だとしている。

  • 一方で、政府の新型コロナ感染症対策分科会会長を務める尾身茂氏は、先週に続き、感染状況などを鑑み、無観客開催が望ましいとし、検討するよう提言している

  • 尾身氏はさらに、観客を入れる場合には医療逼迫を避けるためにも現行の大規模イベントより厳しい基準に基づいて行うべきだとしている。尾身氏は金曜にこれらの考えをまとめた提言を組織委員会に提出した

  • 政府は観客の上限を1万人に設定する方針を示している。これはイベントの開催制限について、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を解除した場合でも、大規模なスポーツイベントなどでは1万人を上限とするとした方針に沿った判断である。

  • 観客の上限についての最終判断は来週月曜に開かれる政府、東京都、組織委員会、IOCとIPCによる5者会議で下される予定だ。

  • 西村経済再生担当大臣は金曜経団連、日本商工会議所、経済同友会に対し、大会期間中、人流を抑制する必要があるとしてテレワークの推進や休暇の分散取得に取り組むよう協力を要請した。

15. その他関連ニュース

  • 加藤官房長官は木曜ミャンマー代表として来日していたサッカー選手が日本に難民認定を申請する意向を示したことについて、本人の意向も踏まえて適切に対応していく考えを示した。

  • 選手は直近の試合にて、クーデターで権力を握った国軍への抵抗を表す3本指を立てたことにより、帰国後拘束されるなど「命の保証がない」と訴え、空港で帰国を拒んだ。

  • 政府は先月から日本での在留を希望するミャンマー人を対象に、最長で1年の滞在を認める緊急の対応策を講じている。金曜の報道によると、出入国在留管理庁は、選手から申請が出された場合、難民に認定する方向で調整を進めている。

  • 自民党の女性活躍推進特別委員会木曜候補者に占める女性の割合を2030年までに35%に引き上げることを求める提言をまとめた。

  • 特別委員会は数ヶ月前にも次の衆議院選挙での女性候補者の割合を15%とすることを検討していたが、党内から実現が難しいなどと慎重な意見も出たことから、数値目標は削除することになった。特別委員会は近く、下村博文政務調査会長に提言することにしている。

  • 下村政務調査会長は水曜新型コロナの経済への影響が長期化していることを受けて、追加の経済対策をまとめる必要があるとして、来週にも党内で具体的な検討を始める考えを示した。さきの国会会期中の成立を見送った補正予算の編成についても検討する可能性が高い。

  • NHKは火曜、官公庁や企業で幅広く使われている富士通の情報共有ソフトが不正アクセスを受け、情報が流出した問題で、総務省もこの情報共有ソフトを通じて情報が流出していたと報じた。

  • 富士通開発した「ProjectWEB」と呼ばれる情報共有するソフトは官公庁や企業などで幅広く使われている。その利用者である国土交通省は、省の職員や業務でやり取りのある関係者少なくとも7万6,000件のメールアドレスが流出したと報告している。

  • 台風などの自然災害が増える中、損害保険各社で作る団体は、被害を補償する火災保険の保険料の目安について、過去最大となる10.9%の引き上げを決めた。損害保険各社は来年度以降、保険料を値上げする見通しで、家計の負担の増加につながりそうだ。

  • 二階俊博幹事長が会長を務め、安倍晋三元総理が最高顧問を務める「自由で開かれたインド太平洋」を推進するための議員連盟火曜に初会合を開催した。

選挙

16. 今後の政局を左右する選挙に向けての準備が始まる

  • 首相は木曜の記者会見で、9月末までの自民党総裁任期中に、衆院解散に踏み切る考えを示した。

  • 報道によれば、首相が衆院選からの総裁選にこだわるのは、無派閥で党内基盤が盤石でないためだ。衆院選に勝利して総裁選に臨めば、波乱は起きないとの読みがある。

  • 首相は9月5日に終わるパラリンピック後の解散に踏み切る可能性が高い。読売新聞は、最有力シナリオとして、9月上旬の臨時国会の冒頭解散で、投開票日は10月10日か17日をあげている。

  • 複数報道によれば、首相は新型コロナの状況、ワクチン接種の進捗や内閣支持率などを参考に判断を下すことになる。

  • 立憲民主党の枝野代表は木曜日本労働組合総連合会の中央執行役員会で挨拶し、政権を獲得した場合には共産党とは連立を組まず、政策ごとの部分的な協力にとどめたいという意向を明らかにした。

  • この発言は、共産党との連携をめぐって、連合や国民民主党が「政策や理念が異なる」として否定的な姿勢を強めていることを受けてのもの。

17. 東京都議会議員選挙

  • 都議会最大会派の都民ファーストの会火曜7月4日投開票(6月25日告示)を前に重点政策(公約)を発表した。

  • 三つの柱にはワクチン接種の加速化、給付や健康診断を含む都民を守る「都民ファースト・ケア」、オリンピックの無観客開催を位置づけている。

  • 特にオリンピックの対応では、無観客での開催を明記し、開催の是非を公約に盛り込まなかった自民、公明両党とは一線を画した。自民・公明両党は会見などで感染対策を徹底した上での開催を求めている。

  • 選挙結果を左右するかもしれない重要な関心ごとの一つは、小池百合子都知事が都民ファーストを応援するかだ。現時点では2017年に先頭に立って最大会派へと引き上げた党への支持は明言していない。

  • 報道によると、小池知事は菅政権や自民党の動向を慎重に見極めているとみられる。また、コロナ対策で都財政が急激に悪化する中、国の補助は欠かせないことから、表立って自民党と対立することは避けるとの見方もある。

その他の注目すべきニュース

  • 河井元法相に懲役3年実刑判決: 東京地裁は金曜元自民党議員で安倍政権時に法務大臣を務めた河井克行氏の公判で、懲役3年、追徴金130万円の実刑判決を言い渡した。地裁は河井氏が、妻の河井杏里氏が立候補した2019年参議院議員選挙において支援を取り付けるために、広島県内の地方政治家40人や後援会のメンバーを含む100人に渡した現金について買収罪の成立を認め、総額が2,871万円に上ると認定した。地裁は弁護側の執行猶予の要求を受け入れなかったことに対して、民主主義の根幹である選挙の公正さを害し、極めて重い罪だと指摘した。河井氏はは当初、無罪を主張していたが、今年3月に主張を一転させ、起訴された内容の大半を認め執行猶予を求めた。この判決によって河井氏は、公職選挙法の規定によって、刑期が終わるまでの期間とそのあと5年間、公民権が停止され、立候補できなくなる。また、妻の杏里氏については、県議4人に買収目的で160万円を渡したとし、懲役1年4ヶ月、執行猶予5年の有罪判決が2月に確定した。

  • 経済産業省が東芝問題について言及する: 梶山弘志経済産業大臣火曜、東芝と経済産業省が連携し昨年7月の株主総会で海外の「物言う株主」の議決権行使に影響を与えたとされる問題について、独自に調査する必要はないとの見解を繰り返した。また大臣は、東芝が経営陣の交代や利益の還元といった物言う株主の要求を受け入れ続ければ経営の安定が脅かされかねないと懸念を示した。政府は、原子力など安全保障に関わる技術を持つ東芝を、外資の出資を規制する外為法の対象としている。先週発表された報告書によると、東芝は経産省に外為法の権限などを使い株主に影響を及ぼすよう求めた。東芝と経産省は、株式の9.9%を保有するエフィッシモが推薦した3人の候補者を取締役会に加えるという株主提案を行使できないようにする計画を考え実行していた。報告書は、東芝が株主総会を公正に運営したとはいえないと結論づけている。経済界からも説明を求められているにも関わらず、経産省は調査の必要性はないとしている。明快な理由を示さず説明を回避することにより、国内外投資家らが政府による経営介入の疑念を一段と強める恐れがある。国を挙げて進める企業統治(コーポレートガバナンス)向上との整合性も問われることになる。

II. 世論調査

  • 月曜に公表されたNHKの世論調査では、菅内閣の支持率は37%(5月から2%増)、不支持は45%(5月から2%増)だった。
    • 回答者の41%不支持の理由として実行力のなさを挙げた一方、34%政策に期待がもてないと答えた。
    • 回答者の71%自分や家族が新型コロナウイルスに感染する不安を「大いに」、あるいは「ある程度」感じるとした一方、16%「あまり」、あるいは「まったく」感じないと答えた。
    • 回答者の38%(5月から6%増)これまでの政府の新型コロナ対策を評価するとした一方、58%(5月から5%減)評価しないと答えた。
    • 回答者の24%接種が順調に進んでいると思うと答えた一方、65%進んでいると思わないとした。
    • 回答者の56%はワクチン接種を証明するワクチンパスポートについて、国内と海外両方で使えるものを導入すべきと答え、17%導入すべきでない16%海外のみで使えるものを導入すべきと答えた。
    • 回答者の32%観客数を制限してオリンピック・パラリンピックを開催すべきと答え、31%中止29%無観客開催3%これまでと同様に行うべきだと答えた。
    • 回答者の29%大会を開催する意義や感染対策について、政府や組織委員会などの説明に「大いに」、あるいは「ある程度」納得しているとした一方、68%「あまり」、あるいは「まったく」納得していないと答えた。
    • 回答者の80%中国が軍事力を増強していることや、東シナ海や南シナ海で海洋進出を強めていることについて、安全保障面の脅威を「大いに」、あるいは「ある程度」感じるとした一方、13%「あまり」、あるいは「まったく」感じないと答えた。
    • 回答者の69%は次の衆議院選挙で投票するとしたら、相次いでいる政治とカネの問題を「大いに」、あるいは「ある程度」考慮するとした一方、24%「あまり」、あるいは「まったく」考慮しないと答えた。
  • 世論調査は各政党の支持率に関するデータも集計している。
政党名支持率 (%)
自由民主党36 (+2)
公明党(自民と連立政権を組む)4 (+1)
立憲民主党6 (±0)
日本維新の会2 (±0)
国民民主党1 (±0)
日本共産党3 (±0)
社会民主党0 (±0)
れいわ新撰組0 (±0)
支持政党なし41 (-3)
カッコ内は5月の世論調査からの変化
  • 金曜に公表された時事通信の世論調査では、回答者の41%(4月から1%増)オリンピックは中止するべきだとし、30%(4月から1%増)開催するべき22%(4月から4%減)再延期するべきだと答えた。
    • 回答者の64%無観客開催を支持し27%制限を設けるべきだとし、4%制限は必要ないと答えた。
  • 火曜に公表された東京商工リサーチの企業調査では(回答企業 9,163)、36%の企業(2月の前回調査から8%減)オリンピック・パラリンピックの予定通りの開催を望むとし、35%(12%増)中止29%(4%減)延期を望むと答えた。
    • 「開催延期」「中止」と回答した理由[複数回答]では、5,859社のうち76%国内のワクチン接種率が低い、76%大会関係者の来日で感染拡大を懸念、64%大会に医療従事者が充当され一般の医療がひっ迫するからと答えた。
    • 中止や無観客となった場合の経営への影響を聞いた4,092社のうち59%悪い影響が多いとした一方、41%良い影響が多いと答えた。

Image: Captain76 (CC BY-SA 3.0)

完。

One thought on “週刊オブザーバー 6/14-6/18

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